異界の植物研究医 ~知識とスキルで救います~
夜桜くらは
第1話 緑溢れる異世界へ
「ふぅ……今日も良い一日だったな~!」
学校からの帰り道。溜まった疲れをとるように、私は大きく伸びをする。
私の名前は『
植物医師って何かって?それは、その名前の通り、植物の病気とかを治したり、元気にしたりするお仕事だよ!
私のお父さんは植物医師をしていて、私も小さい頃から色々と手伝わされたから、自然と興味を持つようになったんだよね。
私は幼い頃にお母さんを亡くしてるから、お父さんが一人で私を育ててくれたんだけど、その分、色々なことを一緒にやってきた。それで、いつの間にか、私自身も植物のことが好きになっていたのかもしれない。
そして私の夢は、いつかお父さんのように立派な植物医師になることなんだ! でも、今はまだまだ未熟だから、勉強しなくちゃいけないことがたくさんあるけどね。
そんなこんなで、毎日頑張って勉強しているよ。
「さてと、家に帰ろう!」
今日の実習、楽しかったな~!あぁでも、お腹空いたなぁ……。夕飯は何にしようかな~。
そんなことを考えながら歩いていると、私はいつの間にか森の中にいた。
「あれっ!?ここはどこだろう?」
私は慌てて周りを見渡すが、全く見覚えがない場所だ。
おかしいなぁ……。ちゃんと道に沿って歩いていたはずなのに……。
こんな森なんて近くにはなかったはずだし……。一体どうなっているんだろうか?
「う~ん……。まあ、いっか!せっかく知らない森に来れたんだし、探検してみようっと!!」
そう言って、私は森の中へと入っていった。
それからしばらく森の中を歩いていると、目の前に巨大な樹がそびえ立っていた。
何これ!?凄い大きい!!それに、こんな種類の木見たことないよ!!
「この木だけ、他の木よりもずば抜けているような気がするけど……」
私がその木に触れようとした時だった───。
突然、木の幹に光輝く穴のようなものが出現したのだ。そして、私の身体は吸い込まれるようにその中に入ってしまったのである。
「きゃあああっ!!!」
叫び声を上げながら落ちていく私だったが、途中で意識を失ってしまった。
◆◆◆
(ここは……?)
私はゆっくりと目を開ける。すると、そこには信じられないものが広がっていた。
なんと、そこは先ほどまでいたはずの森ではなく、全く別の森だったからだ。そこに生えている植物たちは、私が見たこともないものばかりだった。
「どういうこと!?」
慌てて自分の身体を確認するが、特に変わったところはないようだ。
良かった……。あの謎の現象に巻き込まれても無事みたいね……。
(でも、それより……)
私は近くの植物の元へ駆け寄る。
「うわぁ~!すごい、すごい!どれも初めて見る種類ばかりだよ~!!」
私は、興奮しながら色々な植物を見て回った。
だって、こんな機会滅多にないし、楽しまないと損でしょ! 大学に通う友達からは『双葉は本当に、植物のことになると目の色が変わるよね』ってよく言われるけど、仕方ないことだと思うんだよ! だって、植物って見ているだけで心が落ち着くっていうか癒されるというか……。とにかく良いものだよね!
この森の花も、木も、草も、実っている果物までも全てが、私にとって新鮮で素晴らしいものだった。
私は時間を忘れて夢中になり、気が付いたら日が落ちかけていた。
「いけない!早く帰らないと!」
私は急いで帰ることにしたのだが、帰り道が全くわからない。……というより、自分がどこにいるのかもわからない。
「参ったなぁ……。これじゃあ帰れないや……」
途方に暮れていたその時だった。どこからともなく誰かの声が聞こえてきた。
──《お困りですか?》
「誰!?」
キョロキョロと辺りを見回すが誰もいない。
空耳だったのかな?と思っているとまた声がした。
《おや、私の声が聞こえるのですね……。ここですよ。あなたの右側です》
言われた通りに右を見る。だが、そこにはブナのような木しか立っていない。
「え……もしかして、この木がしゃべってるとか?そんなことあるわけ……」
《はい、その通りです》
「……へっ?」
思わず変な声が出てしまった。……今、間違いなく返事をしたよね?まさか本当に……。
私が呆然としていると、木が続けて話しかけてくる。枝葉をこちらに向けて、動かしているようにも見えた。
《初めまして。私は『ビネの木』です。あなたは?》
「あ、はい……。はじめまして。私は双葉と言います」
戸惑いながらも挨拶を交わす。すると、今度は向こうから質問してきた。
《それで、フタバさんはどうしてこんなところに?》
「それが、よくわからなくて……。気づいた時にはここにいて……」
私は今までの経緯を話した。
《なるほど……。こことは別の世界からやってきたということですか……。それは大変でしたね》
「そうなんですよ……。あの……どうやったら元の世界に帰れるか、わかりますか……?」
私は一番聞きたかったことを尋ねた。
すると、木は困ったような声で答えてくれた。
《帰る方法、ですか……。私にもわからないですね……。ずっとここで生きていましたが、こんなことは初めてで……。すみません……。力になれずに……》
「いえ、気にしないでください!こうして話を聞いてくれただけでもありがたいので!」
私は笑顔で答える。すると、木はとても優しい口調でこう言った。
《あの……もしよろしければ、しばらくの間ここに滞在されてみてはいかがでしょう?》
「いいんですか!?」
《もちろんです。それに、ここから出る方法を探すにしても、まずはこの世界のことを知っておかないといけませんしね。……どうでしょうか?》
「ありがとうございます!是非お願いします!!」
私は深々と頭を下げてお礼を言う。
こうして、この不思議な世界での生活が始まったのだった───。
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