犯罪者のボクと被害者のキミ
桐沢 緋慈理
プロローグ ??月??日
ある日の夜のことだった。
私の視線の先で爛々と輝く赤い月がそこにはあった。
赤い月が現れた日は不吉なことが起こるとされているが、実際のところコレは単なる迷信でしかなく、赤い月が出るたび災害などの厄災が起きているわけではなく、窃盗や強盗などのただちょっとした世間にとっては当たり前のようなことが少し多く起きているだけで、それは珍しい現象を撮影しようと多くの人が家から出てしまい、その隙に空き巣を狙われているのが実態である。
それに、赤い月が出るのは大気中の分子や太陽光の色の波長が関わっていると解っているようにすでに科学的に証明されているため特に危険性はないようだ。
なので、私も多くの人間と同じようにこの珍しい光景を誰もいないような小さな公園の芝生の上で寝転がりながら眺めていた。
──そろそろ月が真っ赤に染まりそうだな
そんな事を心中で呟き、携帯を取り出し月に向かってシャッターを切った瞬間、黒い影が写り込んだ。
「……ん?」
ここは人が居ないはずなんだが?心霊写真でも撮ったか?
だが画面内には黒い影がハッキリと写り続けていた。ずっとカメラに写っている幽霊なんて聞いたことがない。
つまり……人間か。急すぎて思考が追いつかなかったが人間なら言うことはただ一つ。
「そこ邪魔」
「だから?」
「どけ」
「無理」
──なんだ、コイツ?即答してきたぞ。しかも退かないし
「だから退け」
「無理」
──ちょっとイラついてきた
「なんで?」
「キミを視てるから」
「は?」
──何言ってんだ?コイツ、頭大丈夫か?
「言ってる意味が解んないんだが?」
「キミ、変わってるね。……違う、混じってる?よく分かんないな」
「話を聞けっ、それにお前も充分変だぞ」
「どこら辺が?」
「それが判らない時点でお前はおかしい」
「失礼だね。この姿を見てどこがおかしいっていうんだい?」
「少なくとも外見的にはフードを深く被ってて顔がよく見えないし薄っすら見える瞳は無表情だし……なにより覆いかぶさりながらずっとしゃべってる時点で相当おかしいな」
「おっと、それは失礼した。それを聞くと確かに変だ」
そんな事を言いながらソイツは私の上から退き、私に手を差し伸べきたのでその手を掴み立ち上がった。
「誰もいない公園で出会ったのも何かの縁だ」
「一方的な縁だけどな」
「まずは互いに自己紹介をしようじゃないか」
──嫌味すら聞かないのか
「ん?どうしたんだい?」
「……なんでもない、続けてくれ」
「では改めてボクの名前は│
「私の名前は
「よろしくね、茲芦」
「ああ」
そうして私たちは握手を交わした。
この時私は笑ってしたのかもしれない、だが次の彼女の発言で思考が停止した。
「茲芦、ボクと一緒に死んでくれない?」
「は?」
この日から私の中で赤い月は不吉の前兆であるという事実に書き変わるのだった。
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