エラ・ハムウッドと魔法学校
黒飴細工
第1話 魔法使いの弟子は苦労性【1】
「じゃあな」
私が何をしたのだというのだろう。
背中に、十五歳になったばかりの女の子が持つには、明らかに大きくて重すぎる荷物を背負わされ。
あろうことか、地上から遥か高い雲の上に放り出された。
重い荷物を持った身一つで。
あ、嘘。
唯一の親友であるペガサスのウィリアムが今、私が放り出された鏡からでてきたわ。
そしてウィリアムが放り出された事で、役目を終えた鏡が消えようとしている。
そうよ。
鏡が消える前にこれだけは言っておかないといけないわ。
「こんの、血も涙もない冷血腹黒暗黒俺様何様クソ師匠ぉおおおおおおおおおお!!!!
死んだら化けてでてやるんだからぁあああああああああああああ!!!!!!」
「ヒヒィイイイイイイイイインンン!!!!!」
なんか鏡が消える間際に、あの師匠の死ぬほどムカツク美形な顔が笑いで歪んでるのが見えた気がする!!
ていうか絶対嘲笑った! あのクソ師匠!! 人でなし!!!
今度こそ弟子なんて辞めてやるぅううううううう!!!!!
「ていうか助けてぇええええええええ!!!!」
「ヒヒィイイイイイン!!!」
その一時間前。
「師匠ー! 朝ご飯の支度できましたよー!」
私の名前はエラ。今年で15歳になるのよ。
実を言うと私は、捨て子だったらしく、師匠の家がある森に捨てられていたところを師匠に拾われて、育ててもらうと共に弟子としていろんなことを教えてもらっていた。
いったい何を教えてもらったかというと、それは魔法に関するあれやこれやを教えてもらっているの。
私達が暮らすのは、四大国の中でも二番目に大きいとされる国で。
私の師匠はなんと、この国の中でも二人しかいないとされる超スペシャルな特級魔術師なのだ。
正確には難があるし、たまにフラッと出掛けては数日返ってこないとか、家事ができないとか凄くずぼらでだらしがない人だけど……。
そんなだらしがない師匠が、じゃあどうやって私を育てたかというと。
ぶっちゃけさっき育ててもらったっていったけど、正確には師匠の友達のイーグルさんに小さい頃はほとんど育ててもらったんだよね。
どういうきっかけでイーグルさんが私を育ててくれたのかは知らないけど、どうせ、何もできない師匠を見てられなくて私の事を育ててくれたんだと思う。
見た目切れ長の目がカッコいいお兄さんで、普段は冒険者してるから武術が凄くて、不器用そうな見た目してるのにものすごい器用なの!
イーグルさんが、私に家事を教えてくれたおかげで、今では私が師匠の分も含めてこの家の家事を全部やってるんだ。
魔法とかはその合間に師匠が気が向いたら教えてくれるってかんじ。
おっとと、そんなことより、いい加減起きて来ない師匠起こしてご飯食べてもらわなきゃ。ご飯が冷めちゃう。
私は二階の部屋の一番奥にある師匠の部屋へと向かって、一応扉をノックして声をかける。
「師匠ー! 起きてますかー!? 朝ごはんできましたよー!」
数秒返事を待ってみるけど、返事はおろか物音すらしない。
これは完全に寝ているな。
「師匠、入りますからねー」
あとから文句を言われないように、念のため一言告げてから師匠の部屋へと入る。
しかし、師匠の寝室を覗くと、そこには師匠の姿が無かった。
寝ているのではなく、その場にすらいなかったのだから返事もないわけだ。
「あぁ、また研究室に籠ったのかしら」
師匠は普段、いろんな魔法や、魔道具、魔法薬とかの研究をたくさんしていて、時間を忘れて研究室に籠る事がよくある。
一応、昨日の夜に晩御飯を食べたりお風呂をすませたりした後は寝室へ入っていくのを見たのに。
いつのまに研究室に行ったのかしら。
もしくは、また突発的にどこかへフラっと行ってしまったのだろうか。
考えても結果は分からないので、とりあえず家の二階から、今度は地下の研究室へと足を向けて行く。
朝から毎回こうやって師匠を探すのも少なくないのである。
せめて置手紙とか、何か伝言的な物をしておいてほしいものだけれど。
師匠がそんな事始めたら天変地異の前触れだわ。
まったくもう。と文句を言いつつも研究室の前へたどり着き、先程と同じようにノックと声掛けもしたけれど、返事は無し。
これまた先程と同じように一言いれて扉を開けよう。と、したのだけれど、ちょっとしか開かない…………。
どういう事よ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます