第6話 予想外の事態
「アディー大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ」
「昨日は無理したもんな、我慢したもんな」
ソファーの上で二人は抱きしめ合った。
「Safe word言えて偉かったぞ、本当に偉かった」
「ああ……」
「もし可能ならもっと早く言っていいんだぞ?」
「いい、のか?」
「当然だ。あとして欲しい事とか、ないか?」
「……キスをして欲しい」
「へ?」
予想外の言葉に、時雨は間抜けな声を上げる。
「い、いい。忘れて──」
慌てふためく、アディーに、時雨はキスをした。
「じゃあ、Playといこうか?」
ふれあうキスをやめてから時雨はにっと笑って言った。
「唇に『Kiss』」
アディーはうっとりした表情で、時雨の唇にキスをした。
舌を絡め合うようなキスをする。
口づけが終わると、時雨はアディーの頭を撫でて褒めた。
「よくできました、上手かどうかは俺キスしたことこれが初めてだから判定できないけど、すごいってのは分かったよ」
「そうか、初めてなのか……良かった」
安心したように笑うアディーが愛おしくて、時雨はアディーを抱きしめた。
「順調そうで何よりです」
「アディーも少しずつ良くなってるし、俺は欲求満たされてるし──」
「アディー殿下が異世界人にのめり込んでるんだと」
「はぁ? どんな輩も受け付けなかったあの潔癖症の殿下が?」
「どうせ、変人に決まってる異世界人など」
「ちょっとあの方々を絞めてきます」
「いいよ、俺の事だけだか──」
「実の兄達の露骨なPlayを見て吐いた上、兄君達から強要された殿下にはお似合いさ」
ブツンと時雨の中で何かがキレる音がした。
「テメェ等」
男達に近寄り、言い放つ。
「俺のSubの何がテメェ等に分かる!!」
男達は尻餅をつき、圧倒され、逃げていった。
「待ちやがれ!!」
「シグレ様、後はお任せを、そして落ち着いてください。今の貴方は『Glare』状態です」
「……」
不服そうな時雨にミハイルは言った。
「ご安心を、我らが殿下を侮辱した罪は償っていただきますので」
そこで、時雨は何とか溜飲を下げた。
「はぁ……」
時雨はため息をついた。
予想しない方向で、アディーのダイナミクスの性への恐怖心を理解したのだ。
実の兄達にされた事がトラウマで、セーフワードも言えない。
実の兄達の所為で、他のDomがダメになってしまった。
可哀想で仕方なかったが、これを本人に伝える訳にはいかない。
今まで通り接しようと、心に決めることにした。
翌日、何とか普通通りにアディーを体を触れあい、Playをする。
それで、終わろうとした時アディーが言ってきた。
「あの、シグレ」
「何だ、アディー」
「……私がダメになった話を聞いてくれるか?」
「……いいのか?」
「お前なら、軽蔑しないと思ったから……」
「軽蔑なんてするかよ」
シグレはそう言ってアディーを抱きしめた。
アディーはそのぬくもりに目を閉じて、軽く深呼吸を繰り返した。
「聞いてくれ、私の忌まわしい過去を──」
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