第4話 少しずつ深める




「じゃあ、今日もアディーと会えるのか」

「はい、殿下がシグレ様を気に入られた様子で」

「マジか」

「ええ、本当に奇跡のように私は感じています」

 屋敷に行く途中ミハイルと話しながら、時雨はアディーへ思いをはせる。


「よく来たな」

 アディーが出迎え、ミハイルを見る。

「ミハイル、今日は悪いが屋敷の外で待機してくれ」

「かしこまりました」

「何かあったらすぐ呼ぶ」

「はい」

 時雨はミハイルを外に残して、アディーに部屋へと案内される。

「広い部屋だな」

「Play しやすいように作られてるからな」

「そっかじゃあ、Play前に少しゆっくりするか?」

 時雨の発言にアディーは驚いたようだったが、頷き、二人でソファーに座り、アディーは時雨の肩に寄りかかり、時雨はアディーの頭を優しく撫でた。


 しばらくそうしてから、Playを開始することになった。

「えっと、本当はこれが最初にやるのがほとんどなんだけど、何かやる気になれなかったから……でもやっていいか?」

「ああ」

「じゃあ『Kneel』」

 アディーはその場に座り込んだが、呼吸が荒くなり、顔色が一気に悪くなった。

 時雨はすぐ座り込み、アディーを抱きしめて、髪を撫でた。

「よく頑張ったな、偉いぞ、すごいなアディー、いい子だ」

 アディーは抱きしめ、褒められると、落ち着きを取り戻した。

「今のCommandはあまり使わないようにしようか」

「いや、大丈夫だ」

「無理するなよ、Safe wordを使うのをためらったりするなよ?」

「……分かってる」

 ためらいがちに言うアディーに、時雨は先ほどのCommandを使われた時に、何かあったのではないかと感じた。

 もしくは、何かあったのを見たのではないかと感じた。


「じゃあ、『Stay』」

 アディーから離れた時雨はそう言ってからソファーに座った。

「よしよし、上出来、いい子だ次は『Stand Up』」

 アディーは立ち上がる。

「アディー、偉い子だな、いい子だよ。今度は『Come』」

 アディーは時雨の所までくると、時雨はソファーの隣をぽんぽんと叩いたのでアディーは座った。

 座ったアディーを抱き寄せて、時雨は髪を撫でる。

「いい子だ、アディー。ちゃんと指示を聞いてくれて、顔色も悪くなさそうだし、良かったよ」

 時雨に抱きしめられ、アディーは落ち着いた様に目を閉じた。

「じゃあ、今日のPlayはここまでだ、後はゆっくりしよう」

「ああ……シグレ」

「何だ、アディー」

「有り難う」

「どういたしまして、アディーこそ有り難う、俺の事きにしてくれて、本当優しい、いい子だな」

 時雨のその言葉に、アディーは少しだけ顔を赤らめ、時雨に抱きついた。



「取りあえず、今日もSafe word言わないで終わったよ、顔色も大体良かったし」

 屋敷を後にし、部屋に戻ってきた時雨はミハイルにそう伝えた。

「それは良かった……本当に、良かった……」

「一つだけ聞いていい?」

「何でしょうか?」

「アディーが初日の倒れたアレ、欲求関係ないよね。欲求が満たされないだけであって、あそこまで倒れるのは別の要因があるはずだ、違うか?」

「……その通りです」

「よし分かった、何がその要因なのかは分からないが気をつける」

「聞かないのですか?」

「俺にはまだ早い話だろう? それに話すのならアディーから聞いた方がいい、本人の事だからな、知らないで欲しいなら死ぬまで俺はソレで行くし」

「……あの方々が貴方の様なDomであったなら……」

「ん?」

「いえ、何でもありません」

 ミハイルの呟きを聞き取れなかった時雨は首をかしげたが、深く問いかけることはしなかった。



「え、この国第四王子が継ぐの?」

「はい、アディー殿下はあのようになってしまい、残ったのは嫁がれた第一王女と第四王子と第二王女、この方々のみなのです」

「第一王子と第二王子は?」

「……廃嫡となりました」

「……それ、アディーが関係してるんだな?」

 ミハイルは静かに頷いた。

「……よし、取りあえず俺はアディーの事に集中するわ、国の事なんて分からない──」

「──失礼致します」

 アディーに似た少年が入ってきた。

「ロイ殿下?!」

「兄様のDomがどのような方か、見に来たかったのです──」





 予想外の来訪者に、時雨は頭を悩ませた。






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