第26話「緊急任務:隊長の奪還」
譲れない30分
平日の早朝、「湖畔隊」は、隊長以外が1つの部屋に集まっていた。
「──『湖畔隊』隊員に、隊長の代理で俺から命じる」
そしてその隊長の直属の部下が告げる。
偉そうに、そして、揺るぎない強さを持った、そんな瞳で。
「『湖畔隊』隊長を、30分以内に探し出せ」
──
「……」
「……」
「……」
「……えっ、えっ」
その命令内容に、私たちは黙る。いや、
「何だ。別に、おかしな命令をしたつもりはないぞ」
私たちの反応に、不満げに忍野さんが反応した。腕を組み、こちらを睨みつけている。
「……いや、えっと、事前情報が『
私たちの思っていたことを、代表して
だが、葛藤の末に絞り出した言葉ちゃんの質問にも、忍野さんは訝しげに眉をひそめるだけだった。
「は? そこを自分で探すところからだろうが。これだから温室育ち共は……」
「いや、それは分かるけど!! にしても、30分は短すぎる!!」
「短いだ? むしろ時間を与え過ぎたと思うくらいなんだがな。俺だったら、5分もあれば見つけるぞ」
「それはテメーの異能があるからだろうがっ!!」
「なくても見つける」
どんどん語気が荒くなっていく言葉ちゃんとは対照的に、忍野さんは冷ややかだ。ただ淡々と、事実を返して行く。
「別に構わねぇよ、1時間でも2時間でもくれてやっても。でもお前だって分かるだろ。誘拐は、時間が経てば経つほど、生存率が下がる。お前らがこの任務を達成できなかったとして、俺1人で救出すると鑑みると……やっぱり、30分だ。それ以上は譲れねぇ。……それとも、あの馬鹿が死んでもいいならいいけどな。時間設定なんてどうでも」
「……ッ」
忍野さんの発言に、言葉ちゃんは押し黙った。噛み締めた奥歯から、微かに悔しそうに声が漏れる。それは、忍野さんの言うことが至極真っ当だったからだろう。
……この人は、やはり……冷静だ。突然起こったトラブルに対しても、冷静に頭を回している。
泉さんの救出、そして私たちが成長するチャンスを、同時に与えているのだ。
「……仕方ねぇな。追加情報をやる」
いつまでも忍野さんを睨みつける言葉ちゃんに対し、彼はため息交じりにそう告げた。彼女の対応が面倒になったのか、追加情報なしに私たちが任務を達成することは不可能だと判断されたのか……。
……まあ、どっちにせよ、貰えるものは貰っておこう。
「あの馬鹿が連れ去られたのは、日課のランニングに出かけた時。大体10分前だ。ホシは確実に複数人。そして全員異能力者。大方、車にでも乗せて連れて行ったんだろ。それ以外だと、どうしても目立つからな。
お前らが使えるのは、ここにある警察データベース、そしてお前らの持つ異能力。
……以上だ」
……思ったより多くの情報を得られたような気がするのだが。いいのかそれで……。まあ、いいのか……。
呆然としたまま動き出さない私たちに痺れを切らしたのか、忍野さんは再び大きなため息を吐く。そしてパンパン、と手を叩くと。
「ほら、無能なお前らには安楽椅子探偵なんて向いてねぇんだから、ボサッとしてる暇があれば、とっとと動け。その花畑の中に
忍野さんのその声で私たちはハッとなり、慌てて動き始めるのだった。
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