【完結】絶対に股間が爆発しないラブコメ ~ぽんこつ天使のせいで女の子に触った瞬間股間が爆発(物理)する体質になった上に死に戻りまでするようになったんだけど、この地獄からなんとか抜け出したい~
第9話 三峰先生のイケない補習授業(始まらない)
第9話 三峰先生のイケない補習授業(始まらない)
教室に入る。
クラスメイトの三分の一が久々に集まったけれども、夏休み中に乱れた生活リズムのせいか、それとも暑さに負けてか、気だるい雰囲気だ。
ちなみにレリエルはいない。
「ほら、私転入生ですし! テストも受けてないのに補習だけうけるのもちょっとおかしな話ですし! 優斗さんが補習終わるまで待ってますよ! 別に数学が分からないとか苦手とかじゃなくてですね、ええ、少数精鋭で授業を受けた方が理解度が深まると思うんですよ!」
勉強から逃げたのか、それとも鹿間から逃げたのかは微妙なところだけど、すごい速度で消えていった。
……何か問題を起こさないかすごく心配だ。
まぁでも転校生として学校に潜入できるような不思議パワーがあるなら大丈夫だろう。
「
引き戸をガラッと開けて入ってきたのは我らが担任の三峰先生だ。シニヨンにまとめた黒髪にパンツスーツ姿と非常にビシッとした姿だが、実際はただの残念教師である。
「お前ら異性不純交友はしてないだろうなー。夏だからってハメ外してると――どうやったらハメ外せるのか、コツを聞きに家まで行くからな。男子ならそのまま
いや止めろよ教師。
補習で使うプリントを配ろうとしたところで、隣の席に座った鹿間から声があがる。
「センセー! 転校生の話してよー!」
「……転校生?」
「ほら、白神の家にホームステイに来てる、めっっっちゃ私好みのレリエルちゃんって美少女!」
「……白神? どういうことだ?」
おい鹿間。余計なこと言うんじゃねぇ。
三峰先生からどす黒いオーラが
ゆら、と夢遊病のように身体を揺らしながら俺に近づいてきた三峰先生。その目は視線だけで人を殺せそうな気迫をまとっている。
「ホームステイ? 美少女? 詳しく聞かせろ。あと海外にツテがあるならディオナルド・レカプリドみたいなイケメンを紹介してくれ」
言いながら、暴力としか思えない勢いで肩を掴まれる。
――そして、股間が大輪の華を咲かせた。
……。
…………。
………………。
「――嫁取りと婿入り、どっちが良いか考えとけよ」
シンと静まり返った教室に戻った。
即座に鹿間に視線を向ければ、ニヤっと笑いながら口を開こうとするところだった。
「鹿間、余計なこと言うなよ」
「ん? 余計なことって……やっぱりレリエルちゃん相手に異性不純交友を……!?」
「ほう、異性不純交友とは聞き捨てならないな。詳しく聞かせてもら――」
耳聡く会話を聞きつけた三峰先生に肩を掴まれ、俺の股間はお星さまになった。
その後も俺の股間は破裂しつづけた。
花火大会と見紛うばかりの破裂っぷりである。
分かったことは二つ。
一つは、鹿間が結構ガチでレリエルを狙っているということ。どうあってもレリエルの話を振ろうとするのだ。
死に戻りする覚悟で訊ねたら、
「いや、可愛い子がいれば出身とか宗教とか少しでも情報を得ようとするのが普通だろ。今日からウチに泊まりに来るわけだし」
いつからお泊りが確定事項になったの!?
雑談を注意しにきた三峰先生のせいで股間の花火が教室を彩ったけども、完全にマジの目をしていた。
そしてもう一つは、三峰先生だ。
こちらは今までとは毛色の違う問題だ。
三峰先生は異性不純交友の話題が出ると必ず俺を捕まえに来る。
もちろん必ずしも物理的な接触を
……もしかして、俺のこと心配してくれてるんだろうか。
「生徒同士では何かあった時に責任が取れない」
「白神自身の将来のことを考えても慎重になるべき」
「相手を本気で好きだからこそ、成人してからにすべき」
口では色々言っておきながら実はいい先生じゃん、とか思っていたんだけども、問題は生徒指導室でのやり取りを終えた直後だ。
「白神……そうは言ってもお前も思春期だ。ここに『成人していて』『白神の将来の負担にならず』『責任が取れる』立派な大人がいるぞ? どうだ、試しに付き合ってみないか? 子供は何人が良い?」
血走った目で俺を見つめる三峰先生は明らかに正気ではなかった。
そのままブラウスのボタンに手を掛けようとしたので、俺は三峰先生を止めるために手首を掴んだ。
――そして、股間が
緊急避難的な
どっちにしろ捕食される未来しか見えないんだもん……。
ちなみに三峰先生が脱ぎだすのは決まって進路指導室に入ってからである。
つまるところ、「鹿間に余計なことを言わせない」ことと「三峰先生に進路指導室に呼び出されない」。この二つをクリアする必要があった。
……。
…………。
………………。
「――嫁取りと婿入り、どっちが良いか考えとけよ」
ははは、と笑い声をあげながらも急いでペンを走らせる。
都合32回のループで分かったのは、鹿間に対しての口止めは口頭よりも文字の方が効果が高いということだ。
ルーズリーフに書き殴った「あとで話したいことがある」に対し、鹿間は表情を変えずに頷いてくれた。これもブラッシュアップが進み、最初はかなり丁寧に内容を記していたのが、このくらいまで短縮することに成功していた。
とりあえずこれで鹿間は一度黙る。
いや、
レリエルがここに転入してくるものだと信じて疑ってないからしょうがないんだけども。
「さて、プリントは行き渡ったな? とりあえず今日はお前らの大好きな空間ベクトルに関してだ」
ぶーぶーとクレームが飛ぶ中、三峰先生は黒板に図形と式を書き始める。
「白神、白神」
「?」
「話って、レリエルちゃんの事? それとも私の事?」
私……?
今までとはちょっとだけ違う展開。
鹿間が興味を持っていたのはレリエルであり、話題も全てレリエルに関係のあることだった。それがどうして「私のこと」などという選択肢が生まれるのだろうか。
思わず鹿間に視線を向けると、頬を赤らめた鹿間がさっと視線を逸らす。
今まで見たこともない恥じらった姿は、まるで乙女のようだった。
「は、話があるなんて男子に直接言われたの……初めてなんだよ」
……これ、俺が告白する流れになってない!?
「いや、別に私も何とも思ってなかったよ。そのはずだったんだけど……なんか、今朝から白神と一緒にいるだけで段々落ち着かなくなってきてさ……」
もじもじと恥じらう鹿間はいつになく可愛い。
いや元々顔は良いんだし、普段の男勝りな性格とのギャップがむしろエモい……!
まるで別人かのようなしおらしい態度。
何て答えれば良いか分からず口ごもったところで。
「補習授業中にイチャコラするたぁ良い度胸だなコラ。来年にはパパとママになって私にマウント取るつもりかあ”あ”ん”?」
三峰先生に見付かってメチャクチャな難癖をつけられた。
……詳細は省くけれど、股間はいつも通りに爆発しました。まる。
「どーなってんだよコレ!?」
白い空間。
俺はそこで頭を掻きむしっていた。
どう考えても意味が分からない。
不覚にも鹿間の不意打ちにときめいてしまった自分が情けないし、鹿間・三峰先生ペアによる連携股間デストロイを乗り越える術が見つからない。
このままだと破裂しすぎたトラウマで俺の股間が何をしても反応を示さなくなるんじゃないだろうか。
そんな危機感とともに大きな溜息を吐けば、一瞬遅れてレリエルが現れた。
「あ、レリエル!」
「ゆ、優斗さん!」
視線が交差した瞬間、俺たちは同時に口を開いた。
「「助けてッ!」」
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