第六話
美蘭がルスリドに来てから一週間が経った。美蘭はケンヤと共に居間にいた。
「もう一週間になりますか。こちらの生活には慣れましたか?」
「はい。私のいたところとほとんど同じなので、だいぶ慣れたと思います」
「それなら良かったです。窮屈な思いをしながら過ごすのは辛いですからね」
実際に美蘭はこの世界の生活に慣れ楽しんでいた。
「マザンの話だと、最短で一週間で帰れると言ってましたね。きっともうすぐで帰れますよ」
「はい……」
(………)
実は美蘭には迷いが生じていた。
(いい場所だし、いい人も多いし、このままずっとここにいてもいいかな……でも……お母さんもお父さんも心配してると思うし……)
優しくしてくれるケンヤたちに親しみを感じて、生活が始まった時よりも早く帰りたいとは思わなくなっていた。
(帰れるなら早く帰りたいな……もっと長く一緒にいると、きっと帰りたくないって思うようになる……)
そう思ったその時、玄関の方から音がした。
「帰ってきましたね」
外出していたマザンが帰宅した。ドタドタと激しく足音を立てながら居間に向かってくる。
「美蘭!」
かなり焦ってきたのか息を切らしている。
「どうしたんですか?あなたがそんなに焦るなんて珍しいですね」
「空間の乱れが治った。これでゲートが開けて異世界に行けるようになった」
「それって……」
「秘境界に帰れるよ」
「!」
「良かったですね!美蘭さん!」
いきなりのことで呆気に取られて言葉を失う。ケンヤの祝福の言葉も届いていない様子だ。
「………」
「あれ?反応薄いな。結構喜ぶと思ったんだけど」
「美蘭さん……?」
その時、二階から階段を下りてきたキザミが入ってきた。
「どうした?大きな音立てて」
「空間の乱れが治って秘境界に行けるようになったんだよ」
「本当か!?良かったじゃん美蘭!」
「ただ当人はあまり嬉しくない様子」
「あれ?そうなの?」
全員の視線が美蘭に集中する。
「どうしたんですか?嬉しくないのですか……?」
「いえ、嬉しいですよ。でも、いきなりだったので、あまり実感がわかなくて」
「まあ実際に帰ればそのうちわいてくるでしょ」
マザンが微笑を浮かべた。
「すぐ帰る方がいいでしょ。すぐ準備して行こうか」
「わかりました」
「………」
ケンヤが物寂しそうな表情をする。
「これで……お別れなんですね……」
「!」
「短い間でしたけど、美蘭さんと出会えて良かったですし、一緒にいて楽しかったですよ」
「俺も、飲みに行けて楽しかったよ。また連れて行きたかったよ」
別れの挨拶をされて胸が締め付けられる思いをする。
「気が早すぎだよ。僕たちも秘境界に行くんだよ」
全員の視線が今度はマザンの方へ向けられる。
「私たちも行くんですか?」
「そりゃそうでしょ。このまま美蘭帰して親になんて説明するんだよ。秘境界の人間に異世界行ってたで納得するわけないでしょ。説明するのに一番困るのは美蘭なんだから、僕たちが行って説明するんだよ。ちゃんと美蘭が帰った後のことも考えないと」
「………」
ケンヤが眉を寄せている。
「あなたが女性を配慮するなんてなにがあったんですか……?」
「仕事だからだよ」
間髪を容れず返した。
「でも俺たちが行って説明しても信じてもらえないだろ」
「だから設定を演じるんだよ」
それからマザンが両親に説明するための設定を全員に共有した。
「それで本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。まあ念には念を入れてこんなものまであるから」
そういうとマザンはあるものを取り出した。
「ヘルメット……?」
その見た目は工事現場でよく見かけるヘルメットに似たものだった。
「人の脳内を都合のいいように書き換えるアイテム。これを頭にかぶせれば違和感なく僕たちを認めてくれるはず」
「そんなものがあるんですか……」
ファンタジー世界でしかみられない夢のような道具に美蘭は若干疑っている。
「じゃあこれはキザミに渡しておこう」
「なんで俺なんだよ」
「一番有効活用してくれるのはキザミだからね」
そう言ってマザンはヘルメットをキザミに渡した。
「すぐに出たいから全員準備を始めて」
「はい」「ああ」「わかりました」
居間から全員がちりじりに出ていって、それぞれが準備を始めた。
・・・・・。
一時間後、四人は一度訪れた町外れの路地に着いた。美蘭がこの世界に始めて降り立った場所だ。美蘭は帰るために来た時と同じく制服に着替えていた。
「じゃあゲートを開くよ。上手く美蘭のいた場所に合えばいいんだけど」
マザンが以前印を付けたところに手を突き出す。
「!?」
すると手のひらの先に、美蘭が吸い込まれたのと同じ黒い穴が開いた。現実離れした出来事に美蘭は唖然としているが、ケンヤとキザミは何の反応も示さない。
「よし、やっぱり治ってるね」
「マザンさん……どうやってやったんですか……?」
「気にしちゃだめだよ」
マザンにはぐらかされてしまった。
「この中に入れば帰れるんですよね」
「そうだよ」
「………」
黒い穴に吸い込まれてよくわからない世界に来てしまった。美蘭は穴の中に入ることを少しためらっている。
「大丈夫ですよ。マザンはどうしようもない人ですけど、こうゆう時は頼りになりますから」
「どうゆう意味だよ」
「そのまんまの意味ですよ」
二人の言葉のやり取りに美蘭が薄く笑う。少し安心したようだ。
「まあいいや。じゃあ行くよ」
「はい」
一番最初にマザンが黒い穴の中に飛び込んで行った。続けてケンヤとキザミが迷いなく穴の中に飛び込んだ。最後に美蘭が思い切って穴の中に飛び込んだ。
黒い穴はしばらくその場に残り、段々と縮小し消滅した。
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人気の少ない道路に黒い穴が現れる。その穴から勢いよくマザンが飛び出してきた。続けてケンヤとキザミも穴から飛び出す。三人はうまく着地することに成功した。
「きゃあ!」
最後に出てきた美蘭は着地できずに地面に叩きつけられそうになる。その前にキザミが美蘭の腕を掴み転倒を防ぐ。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます」
「わーキザミかっこいいー」
「感情込めて言えよ」
体を引き上げられて地面をしっかり踏む。
「ここが……秘境界……」
ケンヤが辺りを見回す。降り立った場所は十字路の真ん中だった。美蘭たちを除いて他には誰もいない。
「ここです。ここで黒い穴に吸い込まれて、あの世界に行ったんです」
「それじゃあ成功したんですね」
「ここからは美蘭に任せるよ。家まで行けるな?」
「はい」
美蘭が三人を先導しながら町中を歩く。一週間空けていただけなので町の様子はなにも変わっていなかった。美蘭がよく知る近所なので、迷いなく家にたどり着くことができた。
(私……帰ってこれたんだ……)
自宅を目の前にやっと帰ってきた実感がわく。美蘭の後ろにいる三人の方に振り向く。
「ケンヤさん、キザミさん、マザンさん。本当にありがとうございました」
異世界で助けられて、ここまで付いてきてくれた三人に深く頭を下げて感謝を述べる。それから家に入るために玄関に近づく。
(お母さんは仕事かな……)
持っていた鍵を使って閉じていた鍵を開ける。ゆっくりとドアを開けて家の中に入る。
すると家の中から足音が響く。一つの部屋から女性が顔を覗かせた。
「お母さん……」
「美蘭……!」
美蘭の母親が駆け寄り、すぐさま美蘭を抱きしめる。
「どこ行ってたの……!心配したのよ……!」
「ごめんなさい……色々あって……」
「でも……無事で良かった……おかえり……美蘭……」
「ただいま……お母さん……」
娘との再会に母親が涙を流す。美蘭もようやく実感が湧き、家族と再会に涙をこぼす。
「良かったですね……美蘭さん……」
「なんでお前まで泣いてんだよ」
つられてケンヤも泣いてしまった。
「?」
マザンの声を聞いて母親がケンヤたちに気づく。マザンとキザミが軽く頭を下げる。
「美蘭……あの人たちは……?」
「私のことを助けてくれたんだよ」
マザンが話すために少し前に出る。
「はじめまして。今回の娘さんの件について色々とお話があります。少しお時間いただいてもよろしいでしょうか」
「はい……どうぞ……」
母親は困惑気味だったが、三人を家の中に入れてくれた。
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リビングのダイニングテーブルに母親と美蘭とマザンが座った。そしてマザンが話しを始めた。
美蘭は帰宅途中に拉致されて、山奥の小屋に監禁されてしまった。そこを近くの村に住んでいるケンヤたちが救出した。美蘭は酷く怯えていたので村で保護をして、落ち着いた今歩いて帰ってきた。
という設定を母親に伝えた。
「………」
話を聞いた母親は渋い顔をしていた。
「美蘭、本当なの?」
「本当だよ。ケンヤさんたちが助けてくれたんだよ」
母親はまだ納得いっていない。
「信じられませんか?」
「山奥に村があるなんて聞いたことないけど……」
「社会から離れて生活してますからね。知らなくてもおかしくないですよ」
「その村はなんて名前なの?場所はどこにあるの?」
「外部の人間は犬鳴村と呼んでいますね。場所は福岡県、だったかな」
「………」
しばらくの間沈黙が生まれる。
「やっぱり信じられないわ。美蘭脅されてない?」
「本当だよお母さん。脅されてなんかないよ」
「聞いたことない名前の村だし、福岡から歩いて来るなんて無理じゃない?」
言われて美蘭も同感してしまう。福岡県から東京都までは直接距離で約八八七キロメートル。徒歩で移動するのは現実的ではない。
「信じられませんか~。キザミ」
マザンがキザミの名前を呼んだ次の瞬間、なんと母親の背後にキザミが立っていた。そして素早く、異世界で受け取ったヘルメットを母親にかぶせた。
「え!?なに!?」
「ちょっと!?」「お母さん!」
母親はヘルメットを外そうとするが、キザミが押さえつけているので外すことはできない。
「ちょっと大人しくしてください。すぐ終わりますから」
抵抗する母親だったが、少しすると力が抜けたように大人しくなった。キザミがヘルメットを外す。
「お母さん大丈夫?」
謎のヘルメットをかぶせられた母親は一瞬ボーっとしていたがすぐに我に返る。
「大丈夫よ」
「どうですか?信じてもらえますか?」
「ええ、美蘭が無事に帰ってきて本当に良かったわ」
(え……?)
「娘を助けてくださりありがとうございました」
母親は疑わしい表情を一切していない。完全に信じきっている様子だ。
(すごい……秘密道具みたい……)
フィクションのような光景に美蘭は呆気にとられていた。
「じゃあやることは済んだので僕たちはこれで失礼します」
「!?」
マザンが席を立つ。
「もう帰ってしまうの?」
「
「そう、そちらにも事情があるのね。美蘭を助けていただいて、本当にありがとうございました」
母親が深々と頭を下げた。
「私たちは特別なことはしていません。困っていた美蘭さんを助けただけですよ」
ケンヤの言葉に母親が嬉しそうに笑みを見せた。
「それでは失礼します」
「美蘭さん、お元気で」
「じゃあな、美蘭」
一言ずつ挨拶をしてから三人は帰ろうとする。
「ま……待ってください!」
その前に美蘭が呼び止めた。三人も足を止める。
「私を助けてくれて、ここまで連れてきてくれてありがとうございました。ケンヤさんたちには、ものすごく感謝しています。なのでお礼をさせてください!」
「お礼……?」
「しばらく私の家に泊まりませんか?私たちと一緒に暮らしてみませんか?」
「美蘭、なにを言って……」
「お母さんもいいよね?ケンヤさんたちは私を助けてくれたんだよ。このままお礼もしないで帰らすの?」
「でも、この家はそんなに大きくないし、泊められる部屋なんてないでしょ」
「部屋は私の部屋を使っていいでしょ。ご飯も私が作るから。食費も私が出すから!」
美蘭は簡単に引き下がらない。なんとか母親を説得する。
「美蘭はこう言ってるけど、あなたたちはどうなの……?」
ケンヤたちも突然の提案に戸惑っている。そんなケンヤたちに美蘭はグイッと詰め寄る。
「ケンヤさん、キザミさん、マザンさん。私のお礼を、気持ちを受け取ってください!お願いします!」
ケンヤたちに向かって勢いよく頭を下げた。
「頭をあげてください。美蘭さん」
ケンヤに言われて頭をあげる。
「それでどうする?」
「まあ外界なんて珍しいし、数日くらいなら大丈夫かな」
「ではお言葉に甘えて、しばらく住まわせていただいてよろしいでしょうか」
「はい!」
美蘭が母親の方へ振り返る。
「いいよね。お母さん」
「確かにお礼はしないとね。いいわよ」
「やった!ありがとうお母さん!」
嬉しさのあまり母親に抱きついた。母親の前で無邪気な笑顔を見せる。
「それでは、しばらくお世話になります」
「こちらこそ」
ケンヤが代表して挨拶をした。
「それじゃあ早速部屋に案内します」
美蘭たちは二階に上がり、美蘭の部屋に入室した。六畳の部屋にはベッドや机が配置されている。床に物が置かれていなくて、とても綺麗に使っている印象を受ける。
「狭い部屋ですけど、自由に使ってくださいね」
「綺麗に片付けてるね。さすが女性の部屋だな」
「初めて入るので少し緊張しますね……」
ケンヤがソワソワとしている一方、キザミとマザンは平然としている。
「自由に使っていいと言われても、ここは女性の部屋ですから、節度は守ってくださいね」
「わかってるよ」「あ~い」
二人が返事をしてからその場に腰を下ろした。
「にしてもさ、お礼ってどうゆう事だよ。お礼なら料理作ってくれたじゃんか」
マザンが美蘭に疑問を問う。
「あれはあの世界で助けてもらったお礼ですよ。今回は私を日本に帰してくれたお礼です」
美蘭が少し目をそらす。
「それに、もう少しだけケンヤさんたちと一緒にいたいな……なんて思って……」
「なんだそりゃ」
「でも嬉しいですよ。私も美蘭さんと別れるのは惜しかったので」
「そうだな。俺も嬉しいよ」
「ありがとうございます」
自分の考えに賛同してくれて安堵の息を漏らす。
「まあ秘境界でやりたいこともあったし、ちょうどいいかな。しばらく拠点に使わせてもらうよ」
「はい。自分の家のように使ってくださいね」
早速三人がくつろぎ始める。ふとケンヤが部屋に飾られている賞状に目が止まる。
「美蘭さん、あれはなんですか?」
「あれは全国高校生料理コンクールで最優秀賞を取ったものです」
「こんくーる?」
「大会で優勝したってことですよ」
「たくさんいる参加者の中で一番になったってことだろ」
「一番!すごいですね。料理の大会で一番を取るなんて、本当に美蘭さんは料理が好きなんですね」
「そうですね。とても嬉しかったです」
賞を褒められて美蘭が笑顔を見せる。
「美蘭、あれはなんだ?」
キザミが机に置かれてある地球儀を指差す。
「あれは地球儀です。私のいる世界を表した地図ですよ」
「秘境界の地図だね」
「これが、秘境界」
気になったケンヤとキザミが地球儀を手に持つ。
「私たちがいる場所はどこですか?」
「にほんだったっけ」
「えっと……」
美蘭が地球儀から日本を探す。
「ここです」
「面白い形してるな」
「小さいんですね」
「他の国が大きいんだよ」
地球儀を覗く二人の所にマザンも入ってくる。
「しかしいつ見ても広いな。ルスリドより広いからな」
「そうなんですか?」
「わーるど最大級って言われてるからな」
「こう広いと知らないことがたくさんありそうですね。もっと教えてくれますか?」
「もちろんいいですよ」
・・・・・。
美蘭は自身の知識を活かして、世界にある遺産や有名な場所などを披露した。
「!」
その時、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「誰か来たみたいですね」
「誰だろう」
美蘭が一階に下りる。気になったケンヤたちも一緒に向かう。玄関に向かうと、走ってきたようで息を切らしていた男性がいた。
「お父さん!?」
「美蘭!」
慌てた様子で靴を脱ぎ捨て、走ってくるとすぐさま美蘭を抱きしめる。
「お父さん、仕事はどうしたの?」
「そんなの早退してきたよ。お母さんから美蘭が無事に帰ってきたって連絡が来たから」
感激のあまり美蘭を強く抱きしめてしまう。
「おかえり、美蘭」
「ただいま、お父さん」
女子高生となると父親に抱きつかれることが嫌と思う人もいるだろうが、美蘭は一切嫌な顔をしていなかった。
「お父さん、ちょっと苦しい……」
「ああ、ごめんよ」
一度美蘭から離れる。
「おかえりなさい」
リビングから母親が出てきた。
「ただいま。お母さん」
「美蘭が無事に帰ってきて良かったわ」
「本当だよ」
「心配かけてごめんね」
父親が美蘭と母親を抱きしめる。
「怖かっただろう。でももう安心だよ。今度からは僕たちがしっかり守ってあげるからね」
「そうね。もう怖い思いは私たちがさせないわ」
「ありがとう、お母さん、お父さん」
誰も気にせず美しい家族愛を見せた。ケンヤたちは邪魔をしないように一歩下がって家族愛を眺めていた。
「お父さん、紹介したい人たちがいるから」
その言葉に父親が離れる。父親がようやくケンヤたちの存在に気づいた。代表してケンヤが頭を下げる。
「彼らが、お母さんが言っていた?」
「うん、美蘭を助けてくれた人たちよ」
母親の時と同じように、説明するためマザンが一歩前に出る。
「はじめまして。今回の娘さんの件について色々とお話があります」
「君たちのことはお母さんからだいたい聞いているよ。誘拐された美蘭を助けてくれて、山奥の村で美蘭を保護してくれたんだよね」
「はい」
「………」
父親はマザンに厳しい眼差しを向ける。一方のマザンもしっかりと父親の目を見る。
「君たちの話には気になる箇所がある。山奥にある聞いてことのない村。調べてみたが、存在しない村のようだね」
「外部の情報は遮断していますから、調べても正しい情報は出ませんよ」
父親とマザンの間でピリピリした雰囲気が広がる。
「君たちが美蘭を騙して僕たちに嘘をついているなら、父親として家族を守るために容赦はしない。ここで警察を呼んで・・・」
「キザミ」
父親の言葉に被せてマザンがキザミの名前を呼んだ。その次の瞬間には母親の時と同じようにキザミが父親の背後に立っていた。そしてヘルメットを父親の頭にかぶせた。
「わ!?なんだ!?」
「「お父さん!」」
抵抗する父親をキザミが押さえつける。
「大丈夫です。すぐ終わりますから」
抵抗する父親が大人しくなってからキザミがヘルメットを外す。
「お父さん大丈夫?」
「……ああ、大丈夫」
母親の心配に父親は頭を押さえながら答えた。
「僕たちが村から来たことを信用してくれますか?」
「ああ、美蘭が無事で本当に良かったよ。君たち本当にありがとう」
父親は晴れやかな笑顔でお礼を言った。警戒している感じはまったくなくけろっとしている。
「いいの?お父さん」
「いいんだよ。無事に帰ってきたことは事実だからね」
美蘭もその言葉を聞いて安心した。
「お父さん、お礼にケンヤさんたちを家に泊めて料理を振舞ってあげたいの。いいかな?」
「そうだね。お礼はちゃんとしないとね。歓迎するよ」
「ありがとうお父さん!」
美蘭が嬉しそうに微笑んだ。
「さあ今夜は美蘭の無事と出会いを祝ってパーティとしようか!」
「私も張り切ってご馳走作るわ!」
「二人とも張り切りすぎよ」
パーティの準備のために美蘭一家はリビングへ入っていった。
「これで良かったのですか?記憶改変なんてして」
「あんな話を簡単に信じる両親じゃなくて逆に良かったよ」
マザンはハハハと笑いながらリビングへ入っていった。
「いいじゃんか。賑やかになりそうだし」
「そうですね」
ケンヤとキザミも協力するために後を追った。
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