ヤンデレ系ヒロイン症候群
氷雨ユータ
恋の矢文の回文書
紅い青春
人を好きになった事はある。
告白した事もある。
『んー硝次君ってそういう目では見られないかな。ごめーん』
「嫌いじゃないけど……好きでもないし。ごめんなさい』
けれども上手く行かない。何故なら俺には取り柄がないから。勉強がどうとかではなく、先天的な才能みたいな物。とにかく俺は目立たない。目立てない。本気にもなれない。クラスで何かしら一位を取る、表彰される、褒められる。一度としてない。あったとしても、それはクラス全員が受ける共通の評価。奇跡的に、もしくは普通的に俺は問題も起こさなかったし、出る杭でもなかった。だから嫌いでも好きでもない。どんな話題にもある程度合わせられるが、個人が強く拘る部分までは付き合えない。それは男子でも女子でも変わらないが、ただ一人だけそこに例外が居た。
「おう。硝次。飯行くぞ飯」
誰から見ても好きでも嫌いでもない。
取り柄と呼べない様な取り柄が、お陰様でかけがえのない友人を作ってくれた。隼人も俺を積極的に親友と呼んで、色んな場所へ連れて行ってくれる。いつも他人を気遣ってばかりの奴が、俺には我儘な側面も見せる。
確かに俺の人生には山も谷もなかったが、大事な友達が生まれた今は、間違いなく山。楽しかった。色恋沙汰には無縁でも、これは紛れもない青春であると。
そして。
「なあ、俺を連れてこなくちゃ駄目かねこれは」
これは紛れもないトラブルであると。親友が原因の。
「駄目。だって隼人君に縁がある物持ってるの君しか居ないでしょ」
「秘密だよ? 隼人君にバレたら台無しなんだから」
「…………うーん。斬新な頼られ方だな」
何やらおまじないをすると呼ばれて
縁がまず良く分からないが、関係があればいいという事ならと適当に制服の糸くずを貰ってきた。どう考えてもゴミだが、制服なら関係あるし、女子もそれならと納得してくれたので良いと思う……良いの、か? おまじないだの占いだのは俺の専門外なので口出しはしない。素人だし。全部的外れになるだろう。
「中は見ちゃ駄目。いいね」
「あっはい……じゃあ目瞑って手を出すから。袋を下にやっといてくれ」
糸くずを袋に入れる。ただゴミをゴミ箱に捨てた様なものだ。俺は本当に何をしているのだろう。
「もういいか?」
「はいはい。さっさと帰って。ここからは私達でやるから」
「先生に出会ったらてきとーに誤魔化しておいてねー」
頼られているのかパシられているのか、警戒されていないのか安心されているのか。物は言いようだが、役に立ったという気はしない。クラスの女子は女子同士で話す分には男子について評価し合う程なのに、相手が隼人だと途端に奥手になってしまって困る。これだから女子は。
さっさと帰って寝てしまおう。なんか今日は、疲れた。
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