主人公が読者を選ぶ作品

読む人によっては嫌悪を抱くかもしれない、読み進めるのが辛くなりストレスすら感じるかもしれない。ダークな、壊れた、と一言では言い表せない主人公の闇。死を望む故に壊れたのか、壊れたから死を望むのか。だが話までが壊れ支離滅裂かと言えばそうではない。一本の細く糸のような筋が、希死念慮の筋だけが通っているから話は強固なまでに壊れない。死を恐れぬゆえに強者と成る。だがこの主人公への共感は非常に危険だ。

そんな壊れた主人公が置かれる、活き活きとした世界と人模様が対比として鮮やかに描かれる。音が鳴り血や土の臭いが漂う様な戦闘描写が生々しく、相対する敵の独白に心理描写が混じる戦い模様は独特でもある。死にたいモノと死にたくない者との鬩ぎ会い。出会った事、引き寄せられた運命を呪うしかない戦い。絶望に値する敵は主人公にとっての希望、そんな歪な物語。