提供された子供たち

朝香るか

第1話 親たちの事情

私は子供が欲しい。でも旦那はいらない。


稼ぎはあるわ。養子でもなく自分の子供が欲しいの。


どうしてもほしい。男なんて大きな子供。


料理や洗濯なんてしない生き物。甘えてくるのウザいし、

成人した人間のしたことをいちいち大げさにほめないといけないし、

デメリットなんて数えればきりがない。


産んでみたら女の子。可愛いわ。名前は恵美と名付けたわ。

なんたって私の遺伝子が入っているんですもの。


実母のサポートだってある。シングルなんて世の中いっぱいいるし。


私の母の名は橘美津子、その子供の私の名が橘美恵子、そしてその子供は恵美。関連性があっていいでしょう。私の生き写しのようにかわいくなってね。


☆☆☆

私たちは不妊治療をしていたわ。

でも旦那様の遺伝子ではできなくて。


どうしても子供が欲しいの。

だからSNSで日本人の男性を募った。


精子提供バンクはほとんどの人が外国人。

私と彼はハーフでも何でもない。

純日本人。そんなことをすれば周りから白い目で見られてしまう。


場合によってはいじめにあうかもしれない。

不倫した。

日本の大学1位出身の男性。今は起業して妻子持ちだという。


私の状態をかわいそうだといい、3回まで不倫してもいいといった。


旦那にばれるわけにはいかない。


1度あった男性は大学の卒業証明書、日本の赤色パスポートを持ってきた。


下の名前は黒く塗りつぶされていた。


どうやら身バレは嫌らしい。


彼の鼻筋と目元が夫に似ていた。

彼と肉体関係を結び、一回で妊娠した。


たった一回の過ち。夫に罪悪感もあるけれど

10月10日大切にはぐくんだわ。かわいい子。

旦那様には申し訳ない。

でも遺伝子情報は途絶えても家系はとだえさせられないわ。

ばれたら義母になんて言われるかわからない。


女の子だったけどいいわ。婿を取ればいいんだもの。


元気に育ってね、私の子。名を由美子としたわ。


☆☆☆


彼と夜を共にした。避妊できなくて子供ができた。


彼は不倫していた。私は彼の子供を産みたかったけれど彼は反対し、

認知もしないといった。


子供ができれば奥さんと別れるといったにもかかわらず

何も父親としての義務を果たさなかった。


初めは頑張ろうとお思えたけれどだんだんメンタルを病んでしまった。


朝起きることも、食事を作ることもできなくなって。


泣き声がしても対応できなくなっていった。

ミルクかおむつか。


それすらも交換できなくなっていく自分が嫌で

このままではだめだと思った。


子供の頬を叩きたくなってハッとした。


施設に電話をかけまくった。

金銭的にはまだ少しだけ余裕があるけれど、3か月以上赤字だった。


メンタルクリニックにかよえばもっと赤字だ。

結局、育てられなくて孤児院に預けた。


今でも月1であっている。

そばで見守るわ。たくましくなってね。元気な男の子。達也。




こうして3組の親子が誕生した。それぞれの事情とともに。


自分のことしか考えなく、周りに流される彼ら。

果たして子供の未来を考えての選択だったのだろうか?


10年後、彼らのエゴは牙をむく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る