第55話 王都警備隊のジェニー  

とんだ寄り道をしたけど、まあ、収穫もあったしね。

街道を「俊足」で進むが、流石に王都が近づいてきたのか人通りも多くなってきたので、「俊足」でも人目をひくので、普通にゆっくり歩きだ。

これは退屈だけど、すれ違う人々を横目で眺めては、気にかかる場合には鑑定したりしている。


「おい、お前、何をじろじろ見ているんだ!」って、とうとう絡まれたよ。

相手は、まあ、オークくらい?でかい身体の冒険者だね、大きな両手剣を担いでいる。

適当に言い訳していたら、「ウジャウジャ言ってないで、出す物出せば許してやるよ」って何だ? 恐喝、物取りでしたか・・・・

僕は、下を向いたまま、相手の顔を見ること無く、雷魔法「感電」と、「催眠」の風を流してやった。そいつが手足をビリビリ震わせながらも、眠っている。道路の真ん中で・・・そんな知らんわな、サヨウナラだ。


「なあ、君、凄いな、今の魔法だろう?」ってまた絡まれたよ・・・

今の見られていた? 解ってた? ってこと? 見れば今度は女性。しかも、何? フルフェイスの兜の人が、馬上から声をかけてきた?

出るとこが出てるし長い金髪だから、きっと女性だろう。声はくぐもっているから?だけど。


「ああ、失礼。私は、王都警備隊のジェニーという。このあたりで、強請、タカリ、恐喝をしている奴が居るという通報で見ていたのだが、君、アレは凄いな」

って一方的に喋りだしたので、

「いや、大したことはないですよ。ああいうのとは争わないのが一番なので、ただ逃げるだけですから」って訳のわからない返事をしていたが、応援の警備隊員が来て、あの大男を担いで持っていった。凄いな、あんなのをヒョイって担ぎ上げたよ・・・


驚いて見ていたら、ジェニーさんが、「たいしたもんだろう?でも、あんなことできるのはあいつくらいだからな、勘違いするなよ〜」だってさ。

馬から下りて、気さくに話しているし、悪意も感じないので、まあ話しているのだけど、さあどうしたら良い?


「どこまで行くんだ?」っていうから、「第二ダンジョン」って言えば、「今日はもう遅いし、どこかに泊まったほうがいいぞ」って。

まあ、それもそうか?別に僕一人なら、パッと転移で帰れるんだけどね。今は、何故か人の中にいるし、「そうですね」って言ってしまったのは失敗だったかな?


それなら、良い宿を紹介してやるから、一緒に王都まで行くぞ〜って横に並んで歩かれてしまったよ。どうしよう・・・?

なんだかんだ話しているうちに、もう目の前は王都の入り口だ。「じゃあ、どうも」って離れようとすると、「こっちだよ」って手を引いて別の入り口に連れていかれて、言われるままに冒険者カードを出して入門してしまったよ。

「なんだ、冒険者だったんだな?」って、さっき、話したでしょうが・・・


彼女は馬を他の警備隊員に預けて、今日はもう非番だからって、そのまま僕に付いてくる。それで、一件の宿の前で「いらっしゃいませ」だって、さ。

なんだ? 客引きもやってるのか?って言ったら、「母さん、お客さん!いい部屋で!」って、何だ? 娘なのか、ここは自分の家なのか?

まあ良いやってことで、一晩宿泊をお願いした。



そこへ、さっき、オーク野郎を担いでいった人が入ってきて、僕に袋を渡した。中は、どう見てもコインだよな。

どうやら、あのオーク野郎には懸賞金がかかっていたらしくて、逮捕の協力金だってことらしい。中を覗いたら金貨が10枚入っているよ。何もしてないですよ、って辞退しようとしたら、ジェニーさんが、「貰っておけば〜」って言うし、まあそうですねって、何故か貰ってしまったよ。どうも、調子が狂うな〜〜


夕食も一緒に食べている。どうやら、あのときの魔法に興味があるようなのだ。

ジェニーさん自身は魔法が使えなくて剣術に進んだが、昔から人が使う魔法の流れを見ることができるというのだ。だからあの時も、下を向いたままの僕から、何かがあのオーク野郎に流れていったのを感じて確信したんだと。僕が、魔法であいつを倒したって。

まあそうなんだけどね、お願いだから、秘密にしててくれってお願いしたよ。

だって、目立ちたくないんだから。「いいよ〜」って言われた。何か軽いけど、平気かな?


そこへ、料理を運んできてくれた母親から、あの兜は、亡き父の形見で、自分用に改良したものだそうだ。父親も王都警備隊所属だったそうだ。それで、母は毎日、この娘が無茶するんじゃないか、ヒヤヒヤしているって・・・


僕は、風呂から上がって部屋で、錬金をしている。何も、深い恩も、深い縁も無いけど、まあ、袖振り合うも他生の縁?ってところかな・・・


*指輪 (ヒカル作)絶対防御、不壊、感電、催眠、

 魔力自動回復、自動解説※、サイズ自動調整、

 使用者限定:ジェニー 


まあ、こんなものでもあげよう、事故や勤務中に死なないようにね。

今回は、「自動解説」を付けておいた、これは、最初に装着した者に、性能と使い方を説明してくれるものだ(脳内説明)。魔法が使えない人にもこの指輪を使えるように仕込んでみた。


翌朝、僕は急ぐからって、宿泊料銀貨1枚を支払って、さあ帰ろうとしたら、ちょうどジェニーが現れたので、「昨日はありがとう」って言って、「これ、お守りです、よかったら使ってください」って指輪を渡したよ。ポッとジュニーの頬が赤くなった?が放置して宿を出て、すぐに隠密で姿を消した。 サヨウナラ、お元気で・・・。





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