相田陸 サイドギター 23歳の場合

 大阪の某高校で、いつも文化祭の音楽担当だったりくは、軽音部けいおんぶの部長で、文化祭では、校庭に組んだ壇上でライブをすると、必ずと言っていいほど、地元の高校や地元民はもちろん、遠くからわざわざ陸のバンドを見るためにやって来る客たちで高校の敷地内が埋め尽くされていた。



「りくー! かっこいいー!」女子高生たちの声援を受けると、演奏中でも陸は手を振って応えた。



「陸のギターは最高だねー!」

「なんかこう胸にギュンて響くよね」

「だけど、東京の事務所にスカウトされたって聞いたよ」

「ほんと? それいつ?」

「卒業してからすぐに行くらしいよ」

「なんか寂しいよね」

「でも、才能があるから仕方ない。これからはテレビで観られるんじゃないか」


 高校の同級生たちは、陸の活躍を心から応援していた。それには、陸の人柄もあった。

 常にムードメーカーで、どんな相手に対しても同じ態度で接することができる人を差別しない性格だった。

 一人ぽっちで寂しそうにしている者を見つけると、真っ先に声をかけ元気を出させようとお調子者を演じるのだ。陸は、自分が悩んでいる時も、常に誰かを思いやる優しさがあった。それには陸の生い立ちも関係しているのだろう。



 陸がまだ5歳の子供の頃、両親が離婚して母親に引き取られた。母親は女手1つで朝から晩まで働き詰めで陸を高校まであげてくれた。


 父親の方は、別れてすぐに別の家庭を持ったと聞いた。

 事業を立ち上げ今では裕福な暮らしをしているらしいと風の噂では聞いているが、陸が5歳から今でまでの間、1度も会ったことはなかった。もちろん、養育費の援助すらなかったのだ。

 陸は、自分のためにそんな苦労を背負った母にいつか恩返しをしたいと思っていたのだ。



「母さん、明日から俺が東京に行っても大丈夫か?」


「何言ってんのよ。私を幾つだと思ってんの? 老人扱いしないでよ」母の悦子えつこが笑った。


「老人だとは思ってないよ。まだ40代だしね。でも、俺が居なくて寂しいんじゃないかと思ってさ。だって、ほら、俺がいると、母さんいつも笑ってるだろ」


「いなくたって大丈夫。あなたのことはいつも観ているから。それに、陸の才能が認められるのよ! 嬉しくないわけないでしょ」



「……うん。有名になってお金が入ったら真っ先に帰ってくるよ。母さんに思い切り贅沢ぜいたくさせてやるからな」



「やめてよ、私は贅沢なんて似合わないから。でも、陸が帰ってくる時は美味しい料理を作って待ってるからね」


 欲もなく贅沢を好まない奥ゆかしい母親を少しでも楽させてやりたい。

 それが陸の性格の原点になったのかもしれない。



 千葉の実家から、週末に都内のライブハウスに通ってギターの腕を磨いていた陸が、JPスター芸能事務所の浅加社長の目に留まりスカウトされたのだ。

 卒業と同時に東京に移り、デビューまでの1年間をギターの腕の更なる鍛錬たんれんと、バンドメンバーをつのるまでの準備期間となった。



 他の3人のメンバーに会ったのは、20歳を迎えた時だった。

 佐野光太さのこうたとは、時々都内のライブハウスで顔を合わせていた先輩だった。おくすることなくいつも光太に近づいていったのは、光太のギタリストとしてのテクニックを少しでも掴みたいと思っていたからだった。



 陸が光太と食事をしながら情報を交換できるまでになったとき、初めて光太が自分と同じ事務所にスカウトされていたことが分かった。


 尊敬する先輩とバンドを組んでデビューできると聞いた時の陸の喜びはひとしおだった。


 その後、似たようなノリで明るいアメリカ人、リョウタと、無口でクールだが心の中は熱い男、海原裕星かいばらゆうせいとの出会いは、陸の夢の実現に更なる現実味を帯びさせてくれるのだった。


 終




相田陸プロフィール


身長168cm 体重59kg 足のサイズ26

金髪に近い明るいブラウンヘア

神奈川県私立横川高校卒業(*架空)

好きなタイプ 明るくてお喋りな人 一緒にはしゃげる人 無邪気 涙もろい子

趣味 ギター サッカー ロック 山登り

好きな色 レッド ブルー ブラック

性格 ノリがいい 明るく元気 困ってる人を見捨てられない人情家 おっちょこちょい 落ち着きがないところがある

イメージキャラクターは八乙女光さん演じた本郷勇気です。




 次回はドラム担当のリョウタ・スペンサーのスピンオフストーリーです。

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