君の事を教えて

岩井あんず

第1話彼は一体

ある夏、1人の男子高校生が自転車にまたがり横断歩道で青になるのを待っていた、ミーンミーンミーンととめどなくセミが鳴く。道路の向こう側が揺れているように見える、少し焦げた肌の額から首へ汗が伝う。なかなか青に変わらない事に腹を立てて眉間にしわを寄せいる。ギラギラとさす太陽がまるで鉄板で肉を焼くように肌を刺激してくる。まだかまだかと自転車のペダルを揺らす。ようやく青になり自転車をこぎ始めると少しだけ風を感じるが太陽に焼かれ熱くなった体を冷ますにはまったく足らない。涼しい学校をめざし自転車のペダルを早くこぐ。学校に着き駐輪場に自転車を止めて早足で靴箱へ向かう。緑色のスリッパに履き替え教室へ向かおうとすると先生に呼び止められた。「おい原谷ちょと待ってくれ!」小走りで先生がこちらに向かってくる。「なんですか先生」と少し嫌な顔をし返事をした。だいたいこういう時はパシられるの一択だと思っている、他にあるとしたら説教かな。「いやーお前がいてくれてよかったよ〜」といかにも今からパシリますと言わんばかりの笑顔で言う。「すまんなちょっと頼まれてくれ、先生今から外へ出ないといけなくてな、あそこにある箱を図書室に運んどいてくれないか?頼む!」と両手を合わせながらお願いしてくる。だいたい生徒は断ることはほとんどできない「分かりました」断る理由もなかったので仕方なくOKをした。重い箱を持ち二階にある図書室まで運んだ、本は1冊だと軽いが何冊も集まるとこんなに重いんだなと思っい箱を置く、運び終わり3階にある教室へ向かうと自分の教室のドアが開いているのに気づいた、誰かいるみたいだった、ゆっくりドアから教室の中を覗き込むとそこには男子生徒がいた、青色のスリッパを履いている、青色は3年生なぜ2年の教室にいるのだろうと不思議に思う。男子生徒は教室の窓から外を眺めているようだった、眺める姿がとても綺麗で見とれてしまった。男にしては小柄で、綺麗な顔立ち、白い肌、少し強く握ったら折れそうなくらい細い腕、目が離せなかった、吸い込まれるような感覚だった、初めての感覚に少し戸惑った。キーンコーンカーンコーンと朝の予鈴がなると男子生徒はドアへと向かい教室を後にした。彼は一体誰だったんだろう、この教室で何をして、なにを見ていたんだろう。もうすぐ補習が始まる、彼のことが頭から離れない補習に集中できなそうだ。何故だろう知りたい君の事を。

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