第556話 詳しい話を聞きに行きます

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本編では触れられない裏話満載ですv



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「バッシュ公爵令嬢!お久し振りです!!」


ちょうど、他国の聖女様の話が出てきたところでお昼休憩の時間が終わってしまった為、「このお話の続きは明日にでも」という事になった。


そうしてカフェテリアを出た時、ベネディクト君が私達に声をかけてきたのである。……うん、最初に出会った時の無表情不愛想さはいずこへ?とばかりに輝く極上の笑顔が眩しい……。


「ヴァンドーム公爵令息、お久し振りです。試験休み中お会いして以来ですね?」


「はい!あの時は婚約者の方々と共に、我が領地へお越しくださり、まことに有難う御座いました!!」


ちょっと斜に構えたクール系美少年が一転、爽やか美少年にイメチェンした事により、一緒にいたシャーロット様方が頬を染めてきゃいきゃいはしゃいでいる。しかも先程まで話題の中心だったヴァンドーム公爵家の末っ子が目の前にいるのだ。そりゃあワクワクしますよね。


……尤も。


「そういえば、あの方見かけませんわね?」


「ああ。ヴァンドーム公爵令息の婚約者のご令嬢……」


「ウェリントン侯爵令嬢ですわよね?どうなさったのかしら?それに、あの方とご一緒だったご友人の方々・・・・・・もいらっしゃらないわよ?」


「騒がしいご令嬢だったから、いらっしゃらなくて清々しますけれど……どうやら、筆頭婚約者でいらっしゃるヴァンドーム公爵令息も、そう思っていらっしゃるようですわね?」


「そりゃあ、いくらなんでも御遊び・・・があからさまでしたもの!流石にヴァンドーム公爵様がお怒りになられたのでは……?ひょっとして、婚約破棄……」


「しっ!滅多な事を言うものではありませんわよ!?」


やはり、試験休み前まで色々とやらかしていたキーラ様の不在は、皆気になっていたようで、声を潜めながらも、好奇心丸出しな声があちらこちらから聞こえてくる。


しかも筆頭婚約者であるベネディクト君が、試験休み前とは打って変わって明るくほがらかになったのだ。真実を知らなければ、憶測が憶測を呼ぶのも当然だろう。


でも、三大公爵家の直系であるベネディクト君に直接理由を聞く猛者はいないだろうし、聞けたとして、まさかキーラ様が学院に居ない本当の理由(帝国に利用された挙句に赤子になった)なんて、とてもじゃないけど公には出来ない。


落としどころとしては、父親であるウェリントン侯爵と連座で断罪された……という事になるんだろう。実際、キーラ様は別人として生まれ変わるのだから。


「……久し振りだな、ベネディクト・ヴァンドーム。元気そうでなによりだ」


「……これはリアム殿下。この度は王家を代表しての、我が領地へのご視察、まことに有難う御座いました。父や兄達も殿下のご来駕に篤く感謝しておりました」


「いや。素晴らしいもてなしに、こちらの方こそ感謝の意を贈りたい。兄君達にはくれぐれも・・・・・よろしくと伝えておいてくれ」


「御意」


リアムと対話した途端、ベネディクト君は先程の輝く笑顔をアルカイックスマイルに変え、貴族然と対応する。


それに対し、アルカイックスマイルの顔半分に影を落としながら、表面上はにこやかに対応するリアム。……うん、それぞれの背後にキリッとした表情の若鷲とミニシャチが見える。


というかベネディクト君、普通は私よりも先にリアムに挨拶しなくてはいけなかったんじゃ……え?クライヴ兄様、あれってわざとですか?恋のライバルへの対応としてはありふれたもの?で、でもリアムってば王族ですよ!?……え?関係ない?……す、凄い世界だ!アルバ王国!!……え?「お前、オリヴァー見てりゃあ分かるだろ?」ですか。はい、確かに兄様、不敬を極めておられましたね。


「そういえば、そなたの母君はご健勝か?」


「はい。母も父も、これより先に催される夜会を、殊の外楽しみにしております」


「そうか。その時はそなたの兄達も参加するのだろう?……まあ、無駄に張り切らないよう、よく言っておいてくれ(意訳:「エレノアへの自己主張アピールで、無駄に露出の高い服を着ないように、よく言い聞かせとけよ!?」)」


「いえいえ、兄達もこの度の夜会への参加は心躍るものがあるらしく、母共々、今から入念に準備をしております。どうぞご安心くださいませ(意訳:「折角、愛する女性との夜会なのですから、気合を入れるのは当然でしょう?いくら王族だからとはいえ、水を差さないでいただきたい!」)」


「……一体、なんの気合を入れているんだ?」


「ふふ……。さあ?」


途中までは良い感じに、王族と青年貴族との会話をきめていたリアムとベネディクト君の会話が、貴族言葉による応酬になった!

背後の若鷲とミニシャチも、互いにシャーシャーと威嚇しあっている!!(ような幻覚が見える)。そ、そうか……。貴族同士の応酬は、こうやって磨かれていくんですね!?


と、その時。マテオが私にだけ見える角度で二人の方をチョンチョンと指差す。あ、口パクで「あの言い争い止めろ!」と言っているね。うん、了解!


「あ、あの、ヴァンドーム公爵令息。ご家族の皆様方に、夜会でお会いできる日を心待ちにしておりますとお伝えくださいませ」


「――ッ、は、はいっ!バッシュ公爵令嬢!!確かにお伝えいたします!!」


途端、パァッと極上の笑顔を浮かべるベネディクト君の顔面攻撃が目にブッ刺さり、「ヴッ!」とよろめいたところをセドリックがナイスなタイミングでキャッチしてくれた。


「セ、セドリック。有難う」


「ふふ……。気にしなくていいよ。婚約者として当然の事だし……ね?」


優しくそう告げた後、牽制なのか、セドリックは受け止めた私をキュッと抱き締め、頭部に優しくキスを落とした。


背後からシャーロット様方が「キャー♡」と小さく声があげた気がして、思わず頬が真っ赤になってしまう。……ん?眉根を寄せたベネディクト君の背後のミニシャチ(幻覚)がピチピチ飛び跳ねている。あれってばひょっとして、怒っている……のかな?


「ではな、ベネディクト・ヴァンドーム」


「……は。リアム殿下、そして皆様方。ごきげんよう」


ベネディクト君が、リアムに対して貴族の礼を執っている間に、私達は足早にカフェテラスを後にする。

チラリと後方に目を向けると、ベネディクト君の方に、多分一年生であろう数人の男子生徒が近寄り、声をかけているのが見えた。


クラスメイトかな?と思ったけど、彼らは皆ベネディクト君に対し一歩引いたような恭しい態度で接している。……ひょっとして、家門の側近候補の子達なのかもしれない。


今迄一匹狼っぽかったけど、脅威裏切り者達が暴かれた事により、忠臣である家門の血縁者を傍に置く事にしたんだろう。リアムにおけるマテオのように、ベネディクト君も彼等と良い関係を築く事が出来るといいな。





◇◇◇◇





「エレノア。今日はクライヴ・オルセンとセドリックと一緒に、王宮に来てくれないか?……食堂で令嬢方が言っていた『聖女』に関する事を、お前達にもちゃんと話しておきたい。勿論、その聖女の兄である第二王子と婚約したという、ハイエッタ侯爵令嬢に関してもだ」


そうリアムに言われた私達は、ただいま王家の馬車に同乗させてもらい、王宮へと向かっている最中である。


確かに、アーウィン様の元婚約者であり、オリヴァー兄様に言い寄った過去のあるハイエッタ侯爵令嬢の事も、他国の聖女様の事も凄く気になっていたから、渡りに船とばかりに了承した。……とは言っても、クライヴ兄様とセドリックは、既になんらかの情報を知っているっぽいけどね。


「ああ、エレノア。一応言っておくが、王宮に行ってもオリヴァー・クロスとは接近禁止だからな?」


王宮に行ったら、偶然を装ってオリヴァー兄様に会えるかも……?という淡い下心、既に見透かされていたようで、しっかりリアムに釘を刺されてしまった。……うう……。


「ね、ねえリアム。直接会ったり話したりしないから、せめて遠くから、こっそり一目見るだけでも……」


「駄目だ!お前、あいつの嗅覚舐めてんのか!?」


「そうだよエレノア。オリヴァー兄上なら、半径数百メートル離れていようとも、君がいる事を瞬時に察する筈だ!」


「折角、エレノア不足という辛い現状を忘れるべく、一心不乱にバリバリ仕事をこなしているんだ。余計な劇物投入は控えるに限る!」


リアム!それにセドリック!オリヴァー兄様をなにげに犬扱いしていませんか!?というかクライブ兄様、余計な劇物って私!?なにげに酷くありません!?


「さて、着いたぞ……って、あれは……?」


王宮の正門に到着した私達だったが、どうやら先着していた馬車がいたらしい。リアムがマテオに視線を向けると、心得たとばかりにマテオがザッと馬車を確認し、眉を顰めた。


「……リアム殿下。あの馬車、ハイエッタ侯爵家のもののようです」


――えっ!?あの、海の白レディーの実家の馬車!?


あまりのタイミングの良さに驚きの表情を浮かべていた私をよそに、その場の全員がマテオ同様、眉を顰めた。




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更新、お待たせしました!

着々と、人外への道を日々歩いていくオリヴァー兄様なのであります<(_ _)>

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