第553話 まさかの護衛予定
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「エレノアお嬢様!ウィルさんにお聞きしたのですが、王家主催の夜会に出られるのですよね!?」
その夜。湯浴みのお手伝いをしてくれていたミアさんが、ウサミミをめっちゃピルピルさせながら、嬉しそうに話しかけてきた。
「うん、そうなの!私、王家主催の……というか、夜会に参加するのは初めてだから、凄く楽しみ!」
……いや。正確に言えば、王家主催の夜会への参加はこれが二回目である。
まあ、参加したとは言っても、実際はドレスアップしただけで夜会に参加する事が出来ず、それを不憫に思った(のかな?)ワーズによって、
あの時はお忍びだったし、フワフワ飛びながら王宮内を彷徨っていただけだったから、夜会デビューかと言えば、絶対に違うと断言出来る。
しかもアルバ王国の貴族って基本、魔力の多い人達が多いので、精神体だった私の姿を視る事が出来る人が多かったのなんの。
その所為で、見付かっては慌てて逃げ回る事を繰り返した結果、華やかで煌びやかな夜会会場に近寄る事すら出来ず、まるで本物の幽霊のように、人気のない暗い廊下や天井、そして柱の影付近をコソコソフワフワしているしかなかったのである。……うん、あれは悲しかった。
挙句の果てに、『王宮内を泣きながら彷徨う白いドレスの少女』として、王宮七不思議の仲間入りをする羽目になってしまったのだ。リアム達は爆笑しているだけで、基本放置。あんたら……。婚約者が幽霊扱いされて嬉しいのか!?
でももしあの時、本体同様精神体の方も鼻血を噴いた状態だったとしたら、『白いドレスの少女』ではなく、『血塗れのドレスの少女』となり、ホラー感が一気に増した事だろう。精神体が鼻血噴かない仕様で本当に良かった。
「そうですよね。バッシュ公爵領でのデビュタントは自領のお披露目的なものだったですし、公的には今回の夜会がお嬢様の真のデビューという事になりますものね。ああ……。あの煌びやかな王宮で輝くお嬢様のお姿を想像するだけで胸が高鳴ります!私、美容班の方々と一緒に、お嬢様をこの国で一番美しい淑女にしてご覧にいれますわ!!」
「う、うん。期待しています」
そういえばミアさん、私がこうだからってわけではないんだろうけど、第三勢力に対して全く偏見がない。なので美容班の皆とも仲が良くって、メイク技術やドレスのコーディネートなんかをちょくちょく教えてもらっているって、ウィルが言っていたっけ。
ジョナネェの事も「お嬢様の魅力をより引き立たせるドレスを生み出す達人」って言って尊敬しているから、彼(彼女)もミアさんの事を「可愛いウサギちゃん」って言って可愛がっているんだよね。
「ミアさんも私のお付きとして、ウィルと一緒に夜会に参加しようね!」
「えっ!?い、いえっ!わ、私などがそのような……!!」
実は今回の夜会、可愛いケモミミ奥様をゲットした貴族が彼女らをパートナーとして参加するとの情報を得ているのだ(情報源=リアム)
だったら私だって、ミアさんのドレスアップ姿を見たい!という事で、今回は私のお供として一緒に夜会参加を狙っているのである。更には遠慮されるのも想定内である。
「だって、女性しか入れない場所とかあるし、だったらミアさんが一緒にいてくれたら安心じゃない?」
どうだ!この完璧な理由!忠義に篤いミアさんなら、すぐに納得して……ん?なんかミアさんが戸惑っている?
「……お嬢様、確かこの国では、女性しか入れない場所などは、基本存在しないとお聞きした事があるのですが……?」
「……え~っと……」
――ヤバい、そうだった!!
女性が極端に少ないこの世界において、王侯貴族の屋敷には、基本的にメイドや侍女がいない。
いや、アリアさんみたく恋人や他の夫NGな身分の女性のところとか、いるところにはいるらしいんだけど、普通の貴族家では、専属の執事や侍従の殆どは男性なのである。
まあ、
そんな事情もあって、男性の立ち入り厳禁な場所は存在しないって訳なんです。ええ、その気になれば、トイレだろうがお風呂だろうがどこでも連れ込めたりするのだ。
その為この国では、王宮や貴族の屋敷は勿論の事。公共施設においても『トイレ』という場所は存在せず、個室の『レストルーム』が至る所に設置されているのである。
流石に王立学院は『学びの場』だからと、公には男女別々のレストルームが設置されている。……が、それはあくまで表向きの話。『女子専用区域』と銘打つ区域には、しっかり豪華なベッドや浴室まで備わったレストルームがあったりするのだ。
しかも、一部屋一部屋が完全に個室状態となっていて、防音結界まで施されているという至れり尽くせりな仕様。私、以前その連れ込み宿……いやいや、レストルームを更衣室代わりに使っていた事があったんだけど、初めてその存在を知った時には、『産めよ増やせよ』の国是が学び舎にまで!?……と、その性に対する奔放さに恐れおののいたものだった。
「ミ、ミアさん!私、トイレに男性は付いて来てほしくないの!ミアさんなら分かるよね!?」
そう、前世の知識と羞恥心を持っている私からすれば、なにが悲しくてトイレに男性同伴で行かねばならないんだ!?となるのは当然だろう。ましてや、大好きな人達ならなおの事、そんなところに一緒になんて行きたくないっつーの!!
「そっ、それは勿論!!」
「だったら、ミアさん一緒に行ってくれるよね!?」
「はっ、はいっ!!」
よしっ!言質は取った!ウィルの方は、私のお願いは基本的にイエスマンなので、事後承諾でもいいだろう。
◇◇◇◇
「ああ、それは良いかもしれないな。ジョゼフもミアは筋が良いと言っていたし」
「そうですね。ではミアは侍女兼護衛として、エレノアに付ける事にしましょう」
「え!?護衛!?」
翌朝。朝食の席で、ミアさんとウィルを互いのパートナーとして、一緒に夜会に連れて行けるよう、クライヴ兄様とセドリックにお願いしたところ、あっさり承諾してくれた……までは良かったのだが、まさかの『護衛』発言に思わずビックリしてしまう。
「お前は『転生者』だから、たとえ相手が俺でも、異性が四六時中どこでも同伴するのを嫌がるだろう?だから、今回みたいに夜会とか不特定多数が集まる場所でお前を護衛出来るようにと、ジョゼフがミアを鍛えていたんだ」
クライヴ兄様曰く、草食系とは言っても獣人の身体能力は基本、普通の人間よりもかなり秀でているのだそうだ。
実際ミアさんもウサギ獣人だけあり、身のこなしが軽やかで足も早い。しかも忠義心は折り紙付きとの事で、いざという時私を抱えて素早く逃げる事が出来るよう、主に身体強化を中心に修行させていたんだとか。
「ミア、今では僕ぐらいだったら余裕で抱き上げて全力疾走出来るもんね?」
「はい、セドリック様!いずれはジョゼフ様やクライヴ様を余裕で担ぎ上げられるようになりたいです!」
「ああ、そうだな。今は担ぎ上げられても、まともに走る事は出来ねぇからな」
「お恥ずかしい限りです」
いやいやいやミアさん!そこ、恥ずかしがるところではないですから!!というか、この可憐なミアさんがセドリックを抱き上げて全力疾走……。そ、想像がつかない!!
「お嬢様?どうかされましたか?」
不思議そうに私を見ながら、耳をピルピルさせるミアさん。こ、こんなに可愛いのに、ゴリマッチョへの道をひた走っているなんて、誰が想像するだろう!!
はっ!そ、そうだ!!ウィルはミアさんのゴリマッチョ化についてどう思っているんだろう!?
チラリとウィルの方を見て見ると、驚愕の面持ちでミアさんを凝視している。
ヤバい……!儚げで守りたくなる風情のミアさんが、実は隠れマッスルを極めんとしているって知って、ドン引きしちゃったんじゃ……。
「……ッ!ミ、ミアさん……!!」
突然、ウィルの目から滂沱の涙がダバーッと流れ落ちた。
「す、素晴らしいです、ミアさん!!お嬢様を守る為、密かにそのような努力を……!!私……私、心の底から感激いたしました!!」
「ウィルさん……!」
「こうなったら、私も貴女の修行のお手伝いをさせて頂きます!!エレノアお嬢様のお世話だけでなく、護衛としても共に高めあってまいりましょう!!」
「はいっ!ウィルさん、宜しくお願い致します!!」
共に感激し、涙しながら手を固く取り合う二人。そんな二人を、うんうんと頷きながら、温かく見守るクライヴ兄様とセドリック。そしてジョゼフや他の召使達……。これ、傍から見たら『プロポーズが成功したカップルと、それを祝福する周囲』の図だよね?
それが実際は、「互いに拳を高めあおうぜ!」と誓い合う、実に漢らしい青春の一ページ……。なんでこうなった!?
おかしい……。ミアさんがウィルの事を憎からず思っているように、ウィルの方もそうなんじゃないかなー?じゃあ、夜会にかこつけて、ドレスアップしたミアさんとパートナーとして参加させよう!と思っただけなんだけどな?
でも、結果的にウィルのミアさんに対する好感度が爆上がりしたような気がするし……。うん、終わりよければ全てよしだね。
ところでジョゼフ「それでは、いざという時の為に、暗器を仕込めるドレスをジョナサンに依頼しましょう」って言っていたけど、そんな物騒なドレスをミアさんに着させるのだけは止めてあげてください!
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獣人王国編で、ミアさんとの邂逅時に出てきたレストルーム。実は通常仕様だったようです。
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