第487話 刺客は湯の中に!?
4巻及びコミカライズ1巻発売です!!
興味がおありの方、宜しくお願い致します(^O^)/
また、応援書店様と、シーモア様用に書き下ろしSSも書いておりますので、そちらも合わせて宜しくお願い致します!
※今回は、お色気回……?
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「これは……素晴らしいね!エレノア、君がはしゃいでいた気持ちがよく分かったよ!」
「…………」
「浴場は周囲から隠す事が基本だと思っていたが、ここはその常識を根底から覆している。全てを解放し、曝け出し、周囲の景色と同化する事により、心身だけではなく、心までをも軽くする事が出来るんだね!ああ……!まさかお風呂でこのような解放感を得る事が出来るなんて……!」
「……オリヴァーニイサマガキニイッテクダサッテ、ワタシモトテモウレシイデス」
オリヴァー兄様……。嘗てない程にテンションが爆上がりしている。
まさか、オリヴァー兄様がこんなに露天風呂(?)を気に入るとは思ってもいなかった私は、タオルだけを腰に巻き付けたオリヴァー兄様のお膝の上で、硬直したままの状態でカクカク頷いた。
……そう!タオルを腰に巻き付けたまま!!
ここ、重要だから何回も言うけど、なんでタオル一丁なんですか!?入浴着はどうした、入浴着は!!?
私が出来る抵抗はと言えば、顔をまともに見ない事。……つまりは対座にならない事だ。もし向かい合ったりでもしたら、間違いなく鼻腔内毛細血管が決壊する!よそ様の浴場を血の池地獄にしてはならない。私は耐える!!
それにしても、「何故入浴着着ないんですか!?」と叫んだ私に対し、オリヴァー兄様は「ごめん、エレノア。まさかこうして一緒に入るとは思っていなくて、持って来るのを忘れてきちゃったよ」……なんてシレッと仰っていたが、だったらどうしてセドリックは入浴着持参していたんですかね!?
その台詞を聞いた時の、クライヴ兄様とセドリックの目をひん剥いた驚愕の表情。あれが全てを物語っていると、私は思うのですが!?
……まあ、そんな事があったので、クライヴ兄様とセドリックは今現在、オリヴァー兄様に少しの暴挙も行わせないよう、ガラスの扉を隔てた向こう側(脱衣所)でガッツリ待機している。
でも!でもっ!!この体勢自体が、既に暴挙です!嬉し恥ずかしの拷問です!!兄様の鍛え抜かれた胸筋と腹筋を、入浴着越しとはいえ直に感じてしまう、私の身にもなって下さい!!
し、しかも逃げられないよう、私の腰に自分の腕をしっかり回しているし!!
……まあ、兄様がこれ以上はない程幸せそうなので、そこだけは良かったなと思うのは……惚れた弱みってやつなんだろうな。くっそう!!
「……エレノア。覚えているかい?」
そっと後方から耳元に唇を寄せ、色気満々な低音ボイスで囁かれ、ビクリと身体が跳ねる。
耳をくすぐるようにクスリと小さく笑われ、そのゾクゾクする感覚と共に、顔の熱が一気に上昇してしまう。
「な、なにを……ですか?」
「君が『君』になった、初めての入浴の時も、こうして僕と一緒だっただろう?……この世界では、男性が女性を洗ってあげるのは当たり前の行為だし、君はまだ子供だったから、僕もなんの躊躇も感慨もなく君の身体を洗ってあげたんだよね」
「そ、そういえば……そうでした……ね」
そうだった。あの時は超絶美少年だった兄様によって、全身磨き上げられるという
うん、あれは懐かしくも思い出したくない、人生初の羞恥プレイだったな!
以前のエレノアは、沢山の使用人に手取り足取り甲斐甲斐しく面倒見てもらっていたし、平気で裸晒していたらしいから、オリヴァー兄様の方も戸惑いや躊躇が一切無かったんだろう。
しかも兄様の仰る通り、それが世間一般の常識だったから、私を溺愛していたオリヴァー兄様も、それが当たり前と割り切っていて、「どれ、じゃあ僕が洗ってあげようかい」と、平気で私を犬猫を洗うがごとく、全身磨き上げて下さったのだ……。
ふふ……今から思うと有り得ないわ。自分、あの時よく憤死しなかったものだ。
という訳で、今回は頑として、髪の毛以外は洗って貰いませんでしたよ!?ええ!
兄様、物凄く不満そうだったけれど……たとえ入浴着の上からだとしてもダメ絶対!!
「あの時の事を今から思うと……。もっと堪能しておけばよかったって思うよ」
オリヴァーにいさまーーっ!!なにをしみじみ残念そうに、セクハラ発言を仰っているんですかー!!
「に、にいさ……んんっ!!」
抗議しようと、真っ赤な顔で振り向いた瞬間、水も滴る麗しいオリヴァー兄様の顔面攻撃に目をやられ、怯んだ瞬間、唇を強引に奪われてしまった。
「ん……っ」
「愛しているよ、エレノア……。このまま君を、僕だけのものにしたいくらいに……」
深く蕩けそうな口付けと、その合い間に囁かれる甘い言葉によって、身体の熱が急上昇してしまう。
嫌ではないのに、胸の奥がむずむずして、どうにもこうにもいたたまれず、身じろぐたびに、ちゃぷり……と、少しだけぬるめの青いお湯が波打つ。
周囲に壁もない、こんなにも開放感あふれる空間で婚約者とはいえ、こんな風に戯れ(?)ている自分達の姿を頭の片隅で客観的に想像してしまい、どうしようもない羞恥心が湧いてきてしまう。
でもその羞恥で顔を赤くさせ、嫌がるように身じろぐ私を見つめるオリヴァー兄様の表情は、更に甘く蕩けて……というより、なんかヤバイ。
兄様、なんか理性よりも本能が上回っちゃっているような気がする。こっ、このままでは……不味い!
なおも続く口付けの合い間に、クライヴ兄様を呼ぼうとする……が、しっかり私の行動を察しているであろうオリヴァー兄様の巧みな技巧(……)により、舌も唇も甘く痺れて使い物にならなくされてしまう。
しかも、壮絶な色気オーラも駄々洩れなうえに、半裸状態のけしからん我儘ボディと密着しているという背徳的状況により、身体もすでに腰砕け状態。このままでは兄様にどこまで流されてしまうか分からない。というか兄様!!ここ、よそ様のお宅です!!
『ど、どうしよう……!だれか……!!』
「――ッ!?」
私が心の中で『たすけてー!』と悲鳴を上げた丁度その時、オリヴァー兄様が私の唇に絡めていた自身の唇を離すと、小さく声をあげた。
「ッ!ちょっ!!な、なんだ!?」
オリヴァー兄様が戸惑ったように、私の身体を離すと手で自身の身体を払う様子を見せる。
「んん?」
なにかと思い、見てみれば、なんとそこには小さな温泉魚(?)達が、一斉にオリヴァー兄様をつついて攻撃しているではないか。
中には跳ね上がり、兄様の顔に体当たりしている魚までいる。え?ど、どうしたっていうの!?
困惑している私に気が付いたように、ひとしきりオリヴァー兄様を攻撃していた魚達が、私と兄様の間に割り込むように、ぐるりと私の周囲を囲む。そして兄様の方に顔を向けながら、一斉に口をパクパク開閉しだした。……えっと……。こ、これって兄様を威嚇している……のかな?
「……エレノア。こちらにおいで?」
オリヴァー兄様がそう言いながら、私を再び抱き寄せようとすると、魚達は再び兄様へと一斉に襲い掛かる(ツンツンつついているだけだけど)
そして、サッと私の方へと戻り、再び口をパクパクする。……うん、これやっぱり威嚇だ。
「あの……。魚さん達。私、べつに兄様に苛められているわけじゃないよ……?」
思わずナチュラルに魚達に話しかけると、魚達は今度は一斉に私に向かい、口をパクパクさせる。
……な、なんかこの子達、『大丈夫ですぜ!お嬢!!』『あっしらにお任せ下さい!!』『あの男には、指一本触れさせやしません!!』……とか言っているような気がする。
オリヴァー兄様もそう感じたのか、口元を盛大に引き攣らせている。――と、魚達のリーダーとおぼしき、一回り大きな魚が、オリヴァー兄様目掛けて突進した。
「――ッ!!」
兄様の口から小さな声が上がった。どうやら腹筋を、ちょっと齧られてしまったようだ。
「……ふ……。いい度胸だ……!」
悪魔のような壮絶な笑みを浮かべた兄様の背後から、ブワッと暗黒オーラが湧き上がった。
かと思うと、お湯の温度が一気に上がり、「長時間入っていられるね♡」な温度から「ちょっと熱いなー」な温度に変わった。
――あれ?ということは……。
途端、魚達が苦しそうにピチピチと水面から跳ね上がり、次々とプカリと湯に浮かび上がってしまう。
なんということだ!まさに地獄絵図!
「いやあああっ!!クライヴにいさまー!!」
「どうした!エレノアッ!!」
「エレノア!大丈夫!?」
思わず助けを求め、叫ぶと同時に、血相を変えたクライヴ兄様とセドリックが、ドアガラスをぶち破る勢いで浴室に雪崩れ込んで来た。ついでに何故か、天井が騒がしい。
「オリヴァー!!お前、一体エレノアになにを……」
「クライヴ兄様!!は、早くお湯の温度を下げて下さい!!魚が……魚が死んじゃう!!」
「は!?お湯の温度?」
「いいから、早くっ!!」
パニック状態になった私は、戸惑うクライヴ兄様の腕を強引に引っ張ると、湯に引きずり込む。
「どわっ!!」
バッシャーン!と、派手に水飛沫を上げ、湯の中に落っこちたクライヴ兄様も、私達の周囲に浮かんだ魚達を見るや瞬時に状況を理解し、慌てて温泉をぬるま湯にしてくれた。
幸いというか、湯の表面に浮かんだ魚達も温度が下がった途端、元気に泳ぎ始めた。……タフだわ。
その後、クライヴ兄様とセドリックに事情を説明すると、二人ともガックリと脱力した。……が。
「どーせ濡れちまったし」「オリヴァー兄上が、またやらかしたら不味いからね」と言って、何故かクライヴ兄様とセドリックも一緒に入浴する事となってしまった。……解せぬ!
しかも当然とばかりに、二人とも腰タオル一丁です!わーん!状況が悪化したー!!
って、オリヴァー兄様!この状況、ほぼあなたの所為なんですから、舌打ちしないで下さいっ!!
余談だけど魚達、私とスキンシップを図ろうとする兄様方やセドリックを懲りずに攻撃しては、茹ったり、氷漬けにされかかったり、水中花に絡めとられたりして、最終的には「ここが一番安全!」とばかりに、私にピッタリ張り付いていました。
「あの……離れてくれないかな?」と話しかけると、「あっしらをお見捨てになるおつもりで!?」とでも言うように、ウルウルとした目で見つめられ、撃沈。
ジト目を向けてくる兄様達と距離をとりつつ、お風呂から上がるまでの間、魚まみれになっていました。
そしてお礼なのか、小魚達が服の間から入り込み、私の身体をツンツンつつき、角質を取ってくれていた。おかげで今、私の肌は輝いています。
そんな中、私は気が付いてしまった……。
『確実に……増殖している!』
なんと、リアムと混浴した時に咲かせたぺんぺんが、水中花に紛れるように生息範囲を広げていたのだ。
まだ半日も経っていないというのに、なんという恐るべき繁殖力!
しかも、魚達がぺんぺんをつついて食べているのも目撃してしまったんだけど……。
ひ、ひょっとして魚達のこの行動、そしてタフさは、ぺんぺんを食べたから……とか言わないよね?ま、まさか……ね。
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魚達の台詞が江戸っ子口調なのは、エレノアの脳内言語訳の働きによるものです。
ちなみに、各々の反応。
近衛:「加勢が必要ならお声がけを!相打ち覚悟で挑む所存!」
影達:「お嬢様ー!!」
ティル:「ちょっwヤバッww」
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