第238話 え!?姫騎士って、聖女!?
――時は、殿下方との婚約した時まで遡る。
「…とまあ、そういった形で外堀を埋めていくつもりなのだよ」
「は、はぁ…」
国王陛下の語った、殿下方との婚約までの捏造ストーリーを、私は汗を流しながら聞いていた。
あ、ちなみに今現在。私は二人掛けのソファーに腰かけた、オリヴァー兄様に膝枕してもらいながら横になっているという、大変にしまらない恰好でお話を聞いています。
どうしてこうなったかといえば、私が殿下方からキスをされた結果、中々鼻血が止まらなくなってしまったからだ。
アシュル様が治療を願い出て下さったのだが、セドリックが「僕が治療します!」と言って、私の受け渡しを断固拒否。そんなこんなしている間に、連絡を受けた聖女様がすっ飛んできて下さり、急いで癒して下さったのである。
それは良いんだけど、「失われた血は戻せないから」と言って、無理しないようにと半強制的に横にならされたのである。
で、そのまま国王陛下の語る、今後についての対策を聞いていたのだ。…真面目な話の最中に、本当に申し訳ございません。
ついでに言うと聖女様、私の治療を終えた後、「あんた達って子はー!このおバカどもー!!」と、殿下方全員に雷を落としておられました。
初めてお会いした時は、楚々として儚げで…まさに『聖女』そのものといったイメージのアリア様でしたが、お互いに『元・日本人』と知れて以降、私の前では良い感じに『肝っ玉母さん』へとジョブチェンジしておられます。
…というか、何気にマリア母様とも似てきているような…?名前が似ているからかなぁ?
「だが、この話を拡散させるとして、貴族達からは「何故公妃ではないのか」と、突き上げが必ず来るに違いない。それゆえ、エレノア嬢には『姫騎士』の称号を受けて貰いたいのだ」
国王陛下のお言葉に、私は思わず目を丸くしてしまう。
「姫騎士の称号…ですか?!」
「そうだ。元々、先のシャニヴァ王国の一件で、重要な役割を果たしたエレノア嬢には、何か褒賞を…という話が出ていたのでな。今回、それを利用する」
重要な役割って…。単純に、獣人王女を私怨でボコっただけのような…。
「へぇー成程。『姫騎士』の称号をなぁ!」
グラント父様の言葉に、国王陛下が頷いた。
「ああ。巷ではすでに、エレノア嬢の二つ名が『姫騎士』となっている。王家が正式に称号を与えても、それに対して異を唱える者はいなかろう」
…それって…。恥ずかしくて題名を言いたくない、王家監修で発刊された例の書籍の所為ではないでしょうかね!?
まさかとは思いますけど、それを見越して、あの本を普及させた訳ではないですよね?!違いますよね!?
「…国王陛下、私から少し宜しいでしょうか?」
「うむ。オリヴァー・クロス。発言を許す」
「有難う御座います。…姫騎士の名を与えられたとしても、それはあくまで名誉称号に過ぎず、エレノアの身分が変わる訳ではありません。その所はどうお考えでいらっしゃるのでしょうか?」
…確かに、オリヴァー兄様の言う通りだ。
『姫騎士』とは言っても、公爵令嬢に『騎士』の称号が与えられたに過ぎず、結局のところ、王族全員を婚約者とするに足りる身分が得られた訳ではない。
「オリヴァー・クロスよ。『聖女』とは何か。そなたは知っているか?」
突然の国王陛下の問い掛けに、オリヴァー兄様が戸惑いながら答える。
「それは…。『光』の魔力を女神様から与えられた乙女…の事では?」
「いや、違う。『突出した治癒能力』『邪力を封じ込める魔力』を持つ者が『聖女』と認定される。『光』の魔力を持つ者は、まさにその両方の力に長けていたことから、代々聖女と認定されていたのだよ」
へぇー、なる程!
じゃあ、同じ『光』属性を持つアシュル様も『聖女』に…いや、男だし違うだろ。『
「…エレノア嬢。なんか愉快そうな事を考えているっぽいが、そろそろ続きを話してもいいかな?」
「え…?はっ!」
言われて気が付けば、いつの間にかその場の全員が、私に注目していた。
あっ!クライヴ兄様。なんですか、その呆れたような眼差しは!「またこいつ、アホな事考えてんな」って言いたげですね?!はい、その通りです。アホな事考えてました。まことに申し訳ありません!!
「だ、大事なお話の最中、失礼致しました…」
横になった状態のまま、真っ赤になって消え入りそうな声で謝罪する私を見て、国王陛下は何故か、ちょっとほっこり顔で頷くと、再び口を開いた。
「遥かなる昔。実際に存在していた『姫騎士』は聖女でもあった。彼女は『土』属性の中でも最高峰の希少属性である『大地の魔力』の使い手として、人間だけでなく、荒廃した土地すらも緑豊かな大地に変える事の出来る、偉大なる癒やし手であったそうだ。…エレノア嬢」
「は、はい!」
「そなたは、その『大地の魔力』の使い手である可能性がある」
――…はい?なんですと!?
国王陛下の、あまりにも衝撃的な言葉に、私の思考はまさにフリーズしてしまったのだった。
===============
貧血状態ゆえに、エレノアの心の実況中継が錯乱している様子です(^^)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます