第6話 信じるということ
人を信じるというのはどういうことだろう。
私はふとそう考えることがある。私にとって信じるというのは少し不安で怖いイメージがある。それは今までの経験から自分の脳が信じた時の予想をして導き出した感情だろう。正直、信じることについて今まで良いことがなかったイメージがあるのでその感情は合っていると思う。
幼い頃は何の躊躇もなく純粋に信じることができていた。それが幼稚園生、小学生、中学生と成長するごとに躊躇うようになった。その原因は色々ある。
小学生の頃、同級生と遊ぶ約束をした。学校にいる時にその人と遊ぶ日にち、時間、集合場所を決め、きちんとメモした。帰宅したらその約束を母親に伝えた。頻繁に遊ぶ子供ではなかったし、数日前に母親に伝えておかなければいけない家庭だったので、遊ぶ約束というのは当時の私にとってミスれないと思うくらい気を遣う行為だった。約束当日、集合場所はその同級生の家だったため約束の時間にゆとりを持って家を出た。同級生の家についてインターホンを鳴らす。玄関の前で少し待っていると同級生の母親が出てきた。私が今から遊ぶ約束をしていることを伝えると、同級生の母親は少し驚いた表情をした後、その同級生を呼び『今から習い事じゃない、時間ある?』そう言った。すると同級生は『忘れてた。』そう言い、私に『ごめん、今日遊べない。』と言われた。習い事を忘れていたのか、自分との約束を忘れていたのかどっちか気になったが、私は帰ることとなった。帰り際、同級生の母親が同級生を注意していたが、私はそんな軽い叱り方でいいのかと子供ながらに感じてしまった。その家を後にし、自分の家に帰る。道中、色々考えた。約束の日程を遊ぶ数日前に再確認しなかった自分が悪かったのか、なぜ忘れられたのか、自分と遊びたくないがための口実だったのではないのか、相手は簡単に忘れるくらいの感じで遊びというものを捉えているのか、帰ったら母親に確実に何かあったのではないかと心配させてしまうのではないか、いっそのこと心配されない嘘を言った方が良いのではないか。それと同時にいろんな感情が湧いた。悲しさ、辛さ、怒り、不安。そうして考えているうちに家に着いた。緊張しながら玄関の扉を開ける。視界に母親を捉えたと同時に私は早く帰ってきた理由をそのまま話した。話す時はなぜか泣きそうだった。ぐっと堪えながら話すと、母親は『ひどいね。』そう言ってくれた。堪えていた涙が溢れた。大袈裟かと思うかもしれないが当時の私は本当に多感でいろんなことを考えて、涙もろい。そんな小学生だった。
ある時は、同じように他の同級生の家に約束していた時間に行くと、私の知らない人と遊んでいて、『ごめん、急遽友達が来たから今日遊べなくなった。』と言われたこともあった。約束というのは相手が自分とした約束を守ってくれることを”信じる”ことだと思う。遊ぶ約束以外にもこのようなことをいろいろ経験した。そこから私は、自分が思う友達と相手が思っている友達の度合いが違うんだなということを学び、自分に自信がなくなった。同級生と遊ぶこともよりなくなり、1人で遊ぶ時間が増えた。そして信じることを簡単にしなくなった。
高校生になると、表面上の付き合いが上手くなり自分が傷つかない術をどんどん身につけた。もう、あんな経験はしたくなかった。当然、大人になっても続くような深い関係の人を増やすことはできなかった。こうして過去の出来事を思い出しながら書いている今、私の学生時代に青春はなかったのだと思い知った。
そうして大人になり、表面上の付き合いだけではいけないと思い、自分も相手も傷つかない付き合い方、信じるということの本質を考えるようになった。まだまだ途中だが、少しは変われていると思う。そして何より、相手の気持ちを考えられる人になった。
話が少し逸れてしまったが、”信じる”ということはそれくらい人との繋がりの中で、自分を形成する成分においていろいろな要素を含むものだと思う。そして本題に戻るが私の考える”信じる”は、自分があるということだと思う。相手の見えないものを含めて信じられる自分があることこそが信じるということだ思う。そしてその力を育むのは子供の時期だということを併せて知っておかなければならないと感じた。
じぶんの内側から @Pupre
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