4.女勇者は「冒険者法人(パーティー)」を作りたい。

 

女僧侶ヒトミ「つまり話を整理しますと――異世界転移者の多くは『個人事業主』

    として冒険者になりますが、一部の人たちは『被雇用者』として

    「正社員」の騎士や「派遣社員」の傭兵に就職できるのですね?」

女勇者タカコ「むむ!? と言うことは、騎士や傭兵になれば「確定申告」とも

    さよならだ♪」

男商人ユウジ「その代わりに、就労義務が発生するけどな?」

女戦士アツコ「いやぁ~私は今さら会社勤務とか窮屈だなぁ」

女勇者「うぅ、この異世界はいろいろと間違ってますよー…」



男商人「ちなみに、冒険者には『個人事業主』として事業を営む以外に、

    『法人成り』という選択肢もあるな」

女僧侶「ホウジンナリ……ですか?」

女勇者「何それ、復活の呪文?」

男商人「違うっての。要するに「会社を設立すること」だな。『法人化』

    とも言って、『個人事業主』が手続きを行うことで株式会社など

    の『法人』に成り代わることだよ。ちなみに異世界こっちでは、冒険業

    に特化した法人のことを『冒険者法人パーティ』と呼ぶ!」

女僧侶「え、パーティを組むには会社を設立する必要があるのですか?」

女勇者「もうやめて、異世界のライフはもうゼロよ……」

女戦士「なるほどね。つまり冒険者には『個人事業主ソロプレイヤー』になる場合パターンと、仲

    間たちと一緒に『法人パーティ』を結成して社長になる場合パターンがあるのか」



女僧侶「あの、ところで『法人』という単語は聞いたことあるのですが…

    …そもそも『法人』とは何でしょう?」

男商人「うむ。『法人』というのは、法律により『人』として認められた

    一定の社会的活動を営む組織体のことだよ。簡単に言えば「組織

    の擬人化」だな。例えば、どこかの王様が「魔王討伐」を冒険者

    の勇者・戦士・僧侶・賢者に依頼する場合、それぞれに依頼書クエスト

    発行するのは大変だろ? もしこの時、勇者が「勇者と仲間達」

    として『法人化』していれば、王様は「勇者と仲間達」という

    ひとりの冒険者に対して依頼書クエスト1通を発行するだけで良くなる。

    このように、組織を擬人化することで様々な手続きを簡易にする

    のが『法人』という考え方だよ」

女戦士「へぇ~『法人』ってそういう意味だったのか」

女僧侶「私たち冒険者側にも『法人成り』するメリットはあるのですか?」

男商人「社会的信用が得やすくなるので取引先や仕入先の幅が広がるし、

    節税効果も大きくなるよ。一方、会計処理などの事務負担や、従

    業員を雇用した時の法的義務・金銭的負担は重くなるね。『法人

    成り』にはメリット・デメリットの両方があるから、今度また詳

    しく教えてあげるよ」

女僧侶「ありがとうございます~」



女勇者「けどさ、あまり異世界こっちでは『法人パーティ』を見かけない気がするよ?」

男商人「そうだな。『法人成り』は条件が厳しいから『法人パーティ』の数は少な

    い傾向にあるね」

女戦士「あれ、そうなの? 日本が就職氷河期の頃には「会社に入れない

    なら会社を作れば良い」って話題ネタにした記憶があるけどね。確か

    1円あれば会社を作れたでしょ?」

女僧侶「い、1円ですか?」

女勇者「それ、小学生でも会社を作れちゃうよ……」

男商人「2006年に施行された『新会社法』のことだな。それまで日本

    は『商法』の会社関連の規定など(通称:会社法)により、会社

    設立には「資本金として有限会社は300万円、株式会社は1千

    万円」と「取締役3名、監査役1名の選任」が必要だった――が、

    経済活性化を目的とした『新会社法』で条件が緩和され、「資本

    金1円、取締役1名」でも会社を設立できるようになったんだ」

女勇者「やった、それなら誰でも簡単に『法人パーティ』を作れますね!」

男商人「いや、それはあくまで日本むこうの話だ。異世界こっちでは会社設立の条件が

    少し異なるぞ。資本金に関しては条件が設定されていないけど、

    「取締役パーティメンバーは2名以上」を選任する、さらに「代表取締役パーティリーダーは冒険

    者ランクA以上」を有する必要がある」

女戦士「ちょっと待て、冒険者ランクA以上とか条件が厳しすぎるだろ!?」

女勇者「絶望した! 魔王クラス魔物モンスターや、成体の竜種ドラゴンを倒さないと社長に

    もなれない異世界ファンタジーに絶望したー!」


女僧侶「あまり異世界こっちで『法人パーティ』を見かけないのも納得ですね~…」

女戦士「そうさねぇ、この異世界に「ランクA以上の冒険者」は百人も

    いないからなぁ」

女勇者「あぁ~あ、私も『法人パーティ』を作ってみたかったなぁ……」

男商人「そんなに落ち込むなよ。それに女勇者タカなら頑張って成長レベルアップすれば

    冒険者ランクA以上になって社長になるのも夢じゃないと思うぞ?」

女勇者「え、そうですかね?」

女戦士「そうだよ女勇者タカちゃん、頑張ってみな。それにさ……商人ユウジくんと

    『法人パーティ』を作れば、面倒くさい会計処理を全部やってもらえるよ?」

女勇者「おぉ~!?」

男商人「おいこら!?」

女勇者「私やっちゃいますよ~魔竜だろうが大魔王だろうがチャチャ~と

    倒しちゃいますよ~!」

女戦士「あはは、いいぞ~頑張れ~」

女勇者「女勇者わたしは『法人パーティ』になりたい!」

女僧侶「あれ、その台詞……」

男商人「気にするな、海賊王っぽく言いたかっただけだろ」

女僧侶「これがタイトル回収ですね?」

男商人「誰だ、女僧侶ヒトミちゃんに変なことを教えたのは!?」


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