女勇者は「個人事業主」だから確定申告しなさい！

３．クエスト受注には請負契約が必要です。

※個人事業主とは――

　株式会社などの「法人」を設立せずに、自ら事業を営む個人のこと。

　一般的には「自営業者」とも言う。事業主一人のみや、家族のみ、

　あるいは少数の従業員を雇用するなどした小規模経営が多い。

　あらかじめ「被雇用者」として所得税を源泉徴収されている会社員（サラリーマン）や

　アルバイトなどの「給与所得者」とは異なり、年間の収入・費用を

　自ら管理し、「確定申告」にて所得税額の確定と支払い作業を行う。

◇◆ ◇◆◇ ◆◇

　女勇者が、何とか『開業届』を提出してから数ヶ月後。

　（その間に起きた異世界金融犯罪や女勇者と商人の出逢いは、いずれまた…）

　ここは「ミナァート王国」中央通りにある商人（ユウジ）の店――

女勇者（タカコ）「こんにちわ～！」

女僧侶（ヒトミ）「あの、おじゃまします」

男商人（ユウジ）「おう。ふたりともいらっしゃい」

女戦士「うっす商人（ユウジ）くん、元気してた？」

男商人「あれ、お久しぶりですね女戦士（アツコ）さん。……で、その肩に担いでいる

　　　　大きな皮袋は何ですか？」

女勇者「今日は私たち一緒に「コスカ遺跡」の粘土（クレイ）スライム狩りをしてきた

　　　　んですよ！」

女僧侶「たくさん狩れたので、素材（ドロップ）品を買い取って頂けませんか？」

女戦士「いや～錬金術製粘土（アルケミカルクレイ）は重くて持ち帰るの大変だったよ。よっこらせ」

男商人「これを全部かよ……。まぁ、最近は建築ラッシュで住宅建材は需要

　　　　あるからな。住宅建材になる素材（ドロップ）品は品薄だったし、今回は全部を

　　　　買い取りますか。アイテム鑑定するから少し待ってて。買値は少し

　　　　上乗せ（オマケ）してあげるよ」

女勇者「わーい、商人（ユウジ）さんありがとう！」

女僧侶「良かったですね、今回の金策狩りは大成功です」

女戦士「まぁ～欲を言えば、経験値もほしかったけどね」

男商人「あれ、粘土（クレイ）スライムは獲得経験値も高かったような？」

女僧侶「たしかに経験値は高いのですが、粘土（クレイ）スライムには物理攻撃が全然

　　　　効きませんので……」

女戦士「だから私たちはもっぱら“囮役（おとり）”さ。攻撃面は女勇者（タカ）ちゃんの雷系魔法に

　　　　頼りっきりだったわね」

女勇者「もっとＲＰＧみたいに「経験値の分配」とか「共闘ボーナス」とか

　　　　があれば、友達との“パーティ”狩りを楽しめるのになぁ～」

女戦士「まあ、しょうがないさ。一緒に狩りをしていても、あくまで冒険者

　　　　は『個人事業主（ソロプレイヤー）』だからね」

女勇者「うまい、女戦士（アツコ）さんに座布団１枚♪」

女戦士「ごっつぁんです♪」

男商人「異世界（こっち）に景品（ハワイ）はないぞ？」

女僧侶「あの、今さらかもしれませんが……どうして私たち冒険者は『個人

　　　　事業主』なのでしょうか？」

女戦士「どうしてかって？……そう言われると、考えたことなかったな？」

女勇者「たしかに……異世界転移してきた冒険者を『個人事業主』にして

　　　　確定申告を作らせるとか、普通（オタク）の設定（ラノベ）っぽくありませんよね！？」

男商人「そこかよ。なんでも聞いた話では――異世界から突然やって来た、

　　　　戸籍も何にもない冒険者（オレたち）を保護監察して、定期的に活動報告させる

　　　　ための仕組みらしいぞ？　原則として、冒険者は『個人事業主』と

　　　　する取り決めなんだとさ」

女勇者「原則として？　と言うことは、それ以外の選択肢もあったの？」

男商人「うむ。冒険者としての実績がないと難しいけど、国営の『騎士団』

　　　　と雇用契約を結ぶ「正社員」や、私営の派遣企業『傭兵団』と雇用

　　　　契約を結び、派遣契約先の騎士団などで働く「派遣社員」がある。

　　　　ちなみに冒険業務（クエスト）仲介業者の『ギルド』と冒険業（クエスト）の請負契約を結ぶ

　　　　俺たち一般の冒険者は「個人請負労働者」ということになる」

女勇者「正社員に……」

女僧侶「派遣社員ですか……」

女戦士「あはは、国営の『騎士団』に入れば「公務員」というわけだ？」

女勇者「私の中の異世界（ファンタジー）が息してません……」

＜次回につづく…！＞