殺虫者

アリを潰してはしゃぐ彼女は

僕よりたくさん友達がいた

クラスで一番頭が良くて、彼女は笑顔の中心にいた

そんな人になりたくて

放課後一人でアリを潰した

嫌な気持ちになるだけだった


ミミズを刻んで笑った彼は

僕よりずっと愛されていた

クラスで一番足が速くて、彼は憧憬の的だった

そんな人になりたくて

グラウンドの隅、ミミズを切った

怖気が走るだけだった


僕を突き飛ばした彼女は

意地悪そうな笑顔を見せた

僕だけが知る表情だった

「謝ってるよ、許してあげて」

子供も大人も関係なく、優しい笑顔で僕に言った

作った笑顔を僕は返した


それが正しい世界なら

それに是と言う世界なら

それで回る世界なら

それを愛する世界なら

僕は人間下手くそでいい

普通の人になれなくていい

いつまでも惨めなままでいい

どこまでも愚かなままがいい

これからも馬鹿な僕でいたい

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