96 病魔鳥の炎
鳳凰国の陽光鳥サンアールフェニックスに異変があったと連絡が入り、急ぎ新型浄化システムと一緒にユウヴィーが向かうことになった。
「明日、お兄様と鳳凰国に出発するのよね。言わなくてもわかってるけれど、何かあったらぶっ殺すぞ?」
いつものサロンの個室、そこには般若のような形相をしているわけでもない普通の真剣な表情をしているエリーレイドがいた。
対面には、ユウヴィーが座っており、うなずいていた。
一触即発、という雰囲気ではなくどちらもいつも通りだった。
「大丈夫ですよ、殉愛するつもりはありません」
「ふん……絶対に生きて帰ってきなさいよ」
ユウヴィーはエリーレイドの言葉にデレたと思ったのと、可能なら誰も死なないのが一番なのにと思ったのだった。
そこで少しだけ彼女は取っ掛かりを感じていた。
(可能なら……誰も死なないのは、不可能……?)
――KYEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
外から激しい甲高い叫び声が鳴り響いたと思った瞬間、地面が大きく揺れた。浮遊感と爆発音が同時に起こった。
何が起きているのかわからず、とっさにユウヴィーは身体強化、対物理結界、対魔法結界、浄化フィールドを展開した。目の前のエリーレイドは影魔法による防御膜を展開し、すっぽりと丸い黒い球体になっていた。
大きな揺れが持続的に続き、サロンの個室は半壊した。
何かが外側に当たったのか、壁そのものが破壊されその瓦礫そのものがユウヴィーとエリーレイドにぶつかったのだった。
しかし、互いに防御態勢になっているため、致命傷に至らず、無傷だった。
ユウヴィーは外を見て、歯を食いしばりながら、エリーレイドに聞こえるかわからないが言う。
「エリーレイド様、瘴気汚染された陽光鳥サンアールフェニックスです。私はこれから……」
(これから、何? 戦うの……いや戦って勝たなければいけない。あれを止められるのはきっと私だ)
「戦って、浄化します!!」
その声が聞こえたのか、黒い球体となっていたものが解け、中からエリーレイドが何事もなく出てきた。
「私は新型浄化システムや救援活動にまわるわ、行く手間が省けたんだから倒し損ねたら絶対許さないわよ!!」
二人はうなずき、ユウヴィーは倒壊して外とつながってる所からサロンの個室だった所から出た。エリーレイドは反対側の飛散した瓦礫によって半壊した扉を影魔法で除去して出て行った。
+
突如、学園に瘴気に汚染された禍々しい陽光鳥サンアールフェニックスが空を徘徊していた。
羽ばたく度に、羽のような形をしたものが地面へと落ち、薄い青い色をした炎が留まっていた。それは次第に周りへと浸食していき、瘴気が煙となってあたりに広がっていった。
瘴気に汚染された炎が次第に広まり、地獄と化していったのだった。
――「こんなのどうやって浄化すればいいんだ!!」
――「熱い! 熱い!! 助けて!! 助けて!!」
――「なんで消えないんだ!? なんでだよ!!」
学園にいる生徒は得意とする魔法の属性で浄化を試みるものの、まったく効果がなかった。水の魔法で瘴気に汚染された炎を消化しようにも消えなかったのだった。
ユウヴィーは自身の周りだけに展開していた浄化フィールドを拡張させ、学園全体を覆うように出力を上げた。
すると消えなかった瘴気に汚染された炎は学園の生徒たちや教師の手によって鎮火していった。悲鳴なども収まっていったものの、助けを求める声は続いていた。
ユウヴィーは空を見上げると徘徊していた禍々しい陽光鳥サンアールフェニックスと目が合った。
降りてこいと思ったがあれとどう戦うのか、という疑問があった。パッと戦える場所は研究区画の実験場しかなく、誘導する手段も思いつかなかった。
――ピシッ
浄化フィールドそのものにヒビが入った音が響いた。
(うそっ!?)
その音を聞いたのはユウヴィーだけでなく、ほかの人たちにも聞こえていた。
不安と恐怖が学園一帯に広がっていった。
それを肌身で感じたユウヴィーはすぐに対処しないと被害が広がると感じていた。
見上げると禍々しい陽光鳥サンアールフェニックスのクチバシで浄化フィールドをつついていた。
(光の魔法で光を収束させた光線に浄化の力を織り交ぜ放てば……あのヒビをつついてるあいつに攻撃届くかな)
手を掲げて、魔力を練り込んだ浄化光線を放った。
眩い光が手元から発射され、禍々しい陽光鳥サンアールフェニックスに直撃した。
ユウヴィーは手応え、というのを感じなかった。
(この感じ、効いてない)
――KYEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
だが、禍々しい陽光鳥サンアールフェニックスを怒らせることには成功したのだった。
「こっちよ!! 来なさい!!」
ユウヴィーは精一杯叫び、光線を放ちながら、研究区画の実験場を目指した。浄化フィールドは綻び、維持ができなくなっていた。
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