78 悪役令嬢のエリーレイドは使い魔のマーベラスの言葉をちゃんと聞く

「マーベちゃん、今回の画策した事をおさらいするわ」


 エリーレイドが言うと、使い魔のマーベラスはごくりと喉を鳴らしながら頷いた。


「学園の正門でユウヴィーとリレヴィオンが出会うのだけれども、これは時間通りというか、リレヴィオンが原作通り待ち伏せをしているので問題なかったわ。画策する必要もなかったわね」


 ここでエリーレイドが介入していれば、ユウヴィーとリレヴィオンが違った出会いをしていたのだが、本人が知る由もない。


「あと画策しようと思っていたリレヴィオンの婚約者とユウヴィーとの接触はなぜか先に接触して、図書館に案内していたわ。ここは原作通りなのだけど、その後もリレヴィオンと出会っていたわね」


「我が主、問題なく関係者が全員そろってました」


「ユウヴィーのショタ好きがいい館jいに強制力が働いている可能性があるわね」


 ユウヴィーのショタ好きはエリーレイドの偏見であるが、当人は確信していた。


「リレヴィオンの婚約者が迷子みたいになっていたのは想定外だったけれど、ユウヴィーが案内する事によって好印象を得ていたのはよかったわ」


 使い魔のマーベラスは頷き、肯定していた。


「あとは二人を競わせるように仕向けるために、シーンドライヴ帝国に聖女の功績情報を流し、リレヴィオンにもそれが伝わったわね」


「我が主、シーンドライヴ帝国の王子はその報告を聞いて焦りをあらわにしましたね」


「ええ、目を腫らしながら研究区画から出てきたのは、口喧嘩とか何かあったに違いないわ。残念ながらどんな話をして、どんな行動をとったのか、影魔法じゃあの区画は覗けなかったけれどね。おおよそ想像はつくわ」


 エリーレイドは二人にどんな些細な事だろうと何かあれば、それが起爆剤となって二人の仲が進展すると確信していた。

 エリーレイドはリレヴィオンの浄化システムがうまくいかず、ユウヴィーにショタガキ特有の八つ当たりをしたのだろうと思っていたのだった。

 遠からず間違っていない事であるが、実際にどう解決したのかは想像できていなかった。


「我が主、婚約者に対するフォローについては?」


「その点は抜かりないわ、三人で食堂にて仲良く談話しながら過ごしていたのを何度も見かけているわ。陰りがあるような笑みをしているわけでもない。婚約者は盗られるとは思ってはいないし、手伝ってくれているお姉さんみたいな感覚のはずよ」


「我が主……はず、ですか?」


「探りを入れた時にユウヴィーのことをやたら褒めちぎっていたわ。あれは懐いているような感じだったわ」


 お茶会で探りを入れた時の事を思い出すエリーレイドだった。

 エリーレイドは各国の重鎮の令嬢、王族の婚約者と定期的にお茶会を開催している。

 その時に様々な情報を提供したり、交換しあって各個たる地位を築いている。


 やり口は前世の営業職ならではの根回しと印象操作と良い誤解を与え、人心掌握だった。この世界での貴族社会に活用する様は悪役令嬢の名に冠するに相応しい動きだった。

 

 前世の経験と知識のチートである。

 

「何かあった場合は、私に一報が来るでしょう。ちょろいわ」


 彼女には絶対の自信があった。

 自信があるものの、他者の特定の感情面については疎かった。


 使い魔のマーベラスは今までの事を思い出し、一抹の不安がよぎった。


 恋愛面の感情による、予測不可能な事態である。


「我が主、恋愛感情の面では何が起こるともわからない気がします」


 使い魔のマーベラスは進言した。

 今まで寸前の所で、巻き返されてきたからだ。


「む、マーベちゃん言うわね。確かにそうね、いままでそうだったわね」


「我が主、三人の関係性は引き続き注視し、場合によっては介入するのが良いかと愚考します」


「そ、そうね。今回はほとんど後がないし、念には念をいれましょう」


 安心はまだ出来ない、油断はしないとエリーレイドは思うのだった。

 その姿をみた使い魔のマーベラスは安心し、きっと大丈夫だろうと感じていた。


「というわけで、オネショタ展開ってわけね。絶対いけるわ! おーほっほっほっほっほ!!」


 今度こそ殉愛エンドへ行き、エリーレイドは自分が安泰だと胸を膨らませ自信に満ちていた。

 使い魔のマーベラスはその姿から、愚考した懸念も受け入れ、前向きに行動する主をさらに誇らしく思うのだった。


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