77 悪役令嬢のエリーレイドはヒロインを殉愛フラグする?
エリーレイドはユウヴィーと兄との親密度がフラグが立ちそうだったのが、特に進展なかったことに安堵していたのだった
機嫌がよい理由は他にもあった。ユウヴィーとリレヴィオンとの距離感だった。
「年上は好みじゃないのは、確かだったようね。それに年上は好みじゃないと言っていたから、きっとあいつはショタ好きよ。絶対ショタ好き!」
ショタ好きとは、広義的に年下かつ数歳離れていて、身長差があり、半ズボンが似合う男の子である。
「我が主、この攻略本によれば――」
上機嫌な主に使い魔のマーベラスは今日は吸われないだろうと思いながら今回の攻略対象者の事を喋る。
浄化システムはこの在学中には試作段階にしかならず、それが発端となって帝国が王国に対して様々な条件を入れて、ヒロインを引き抜こうとする。そして、引き抜かれた後に完成する。しかし、ユウヴィーとリレヴィオンという生体ユニットを組み込んだ魔道具じゃないと完全に機能しないとわかり、身を投じて、という流れであった。
「ふふふ、いい仲にしておけば問題ない。試作段階が完成したら、あとはショタガキが自分の国に戻って、ヒロインと婚約するわね。これでユウヴィーとリレヴィオンは殉愛だわ! おーほっほっほっほっほ!!」
エリーレイドは高笑いをしながら上機嫌だった。
「我が主、この攻略本によればそうなった場合は……」
「私のエンディングルートは、各国や様々な地域でヒロインの偉業を生涯布教し続ける。そして生涯独身を貫き、自身の所業を伝え、罵倒されながらも続ける。でしょ?」
「はい……」
「ふんっ! その点は抜かりはないわ! すでに頭下げまくって根回しゴマすりしてるから、石くらい投げられても影魔法で防御する程度よ。さすがに弓矢とかボウガンとかはヤバイけれど……原作にはそんな描写はないから問題ないわ」
「いえ、そういうことではなく……」
「じゃあ何よ?」
「影の聖女となっているので……そうはならないかと」
「あ」
エリーレイドは自身の風評がどうなっているのか、思い出すのだった。それが悪評でなくなり、悪役令嬢としての役割から大分逸脱していることを思い出す。
原作のシナリオではない展開であり、このまま進んだ場合は自分はどうなるのか考える。
「ば、罵倒はされないっていうだけじゃない?」
「我が主、今と変わらない普段通りかと」
「え、私にとってハッピーエンドじゃない!?」
エリーレイドはさらに上機嫌になり、ガッツポーズをするのだった。
公爵令嬢よりも前世の素が表立っており、気品さは皆無だった。なお、がに股。
エリーレイドは、今度こそユウヴィーとリレヴィオンがくっつくと思っていた。
「マーベちゃん、シーンドライヴ帝国との外交も下準備はしているし、浄化システムに必要なキーアイテムも事前にサンシェード公爵家の傘下の商会が調達済みよね?」
「我が主、準備は滞りなく」
「あの二人が浄化システムの製作に精を出しているのは、思った以上にすんなりと二人の関係が進んだのはよくわからないけれど……」
エリーレイドは兄であるレイバレットが事前に研究区画へ行くことを勧めていた事を知らない。
レイバレットが各攻略者の橋渡し役かつお助けキャラの位置づけであったが、彼女の中ではすでにユウヴィーが年上は好みではないという言質から安心していた。
「我が主、この攻略本によると在学中からとありますが、シーンドライヴ帝国の王子はどのタイミングで自国へ戻り、ヒロインと婚約に持っていくのでしょうか?」
書き記した攻略本には、あまり情報が記載されていなかった。書かれていたのはエンディングについてであり、詳細はほとんど書かれていない。
「……」
「我が主?」
「記憶にないのよ。私はショタ好きじゃなかったから、一通りエンディングまでクリアしたけれど、詳細は覚えてないのよ。だから、記憶に残ってないよ」
エリーレイドは年下が好きではなかった。そのため、前世の記憶を思い出し書き記した攻略本にも前世という曖昧な記憶から引き出すにも、記憶に残っていない攻略対象者は要所部分しか、覚えていなかったのだった。
先ほどまで浮かれていたエリーレイドは、少し不安げに考えていた。
浄化システムに必要なキーアイテムを調達できているものの、確信を持てていなかったのもあった。可能性がありそうなアイテムは一応取り揃えている。
しかし、エリーレイドは専門的かつ技術的な事に対し、詳しくなかった。
「マーベちゃん、何が起きようとも私が対応してみせるわ。それにちゃんと準備もしてきたのだから、さすがに変なルートには進まないでしょうしね」
使い魔のマーベラスは不安げにエリーレイドを見上げていた。
「わかったわ、おさらいしましょう。それで懸念点があれば、追加で動きましょう」
エリーレイド自身も胸にくすぶる不安を払拭したいのだった。
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