第29話 マリーゴールド
「水流さん、糸原先生は何者なんですか?」
朝、糸原から連絡があった。リンクをタッチすると隠しカメラの中継映像が流れる。水流と夜岡はその画面を見る。
『私は香里奈さんが書いたとされるノートを手がかりに、事件を解決するため皆さんのクラスの担任になりました。ちなみに香里奈さんは生きています』
映像では、クラス全体に向かって糸原が話している。 水流の予想通り、青木と悠里は香里奈の虐待や売春を知っていた。
「糸原の言っていることは9割合っている。詳しくいえば【香里奈の居場所は私にも分かりません】以外は合っている」
糸原の探偵力は、水流も認めている。糸原の前職について調べてみたが、教育系の大学を卒業してからの記録がなかった。
「香里奈さんは虐待と売春をされていた。その事実を石井さんと青木くんが知ってしまう。青木くんは香里奈さんを救う計画を立てて石崎家を訪問。でも青木くんが香里奈の部屋を見た時には既にいなかった」
「うん。合っている。ちなみに売春をしていたのは、直接香里奈とは関わりのない大人たち。校長や金森、前指導主任はその金銭のやり取りに関わっている」
「なんで石井さんは警察や、鈴木先生、糸原先生に相談しなかったんですかね。石井は誰かに脅されていた訳ではないですよね」
水流は「あ、そうか」と驚きの声を上げる。その声に夜岡も驚く。
「それだ。3人目が分かった」
水流は映像に移るその人をじっと見つめた。夜岡は水流の目線が向いているその人を見る。
「どういうことですか」
水流が見つける映像の先には、
「3人目は石井悠里?」
涙を流す女の子が立っていた。
・・・・
「僕も糸原も3人目が石井悠里だということの見当はついていた。だけど、確証が無かった」
夜岡からは、石井が加害者側だということは微塵も感じられない。画面上で流すその涙が嘘だというのだろうか。
「でもなんで石井さんが加害者側につかなければならないんですか?」
「僕も糸原もそれが分からない。あくまで僕の推測なんだけど、石井は香里奈より劣っているものがあった。それが原因なのかもしれない」
それを聞いた夜岡は画面の石井に問いかける。
それは友達よりも大切なものなのだろうか。
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