　クエスト監査官（かんさかん）ペトルゥは猫である。

　猫ではあるが、人間の言語（げんご）を習得（しゅうとく）している。

　なまじ喋（しゃべ）れるが故（ゆえ）に主人にムチャ振りされ、難易度（なんいど）の高い仕事を押し付けられることも...

「世界一かわいい僕のペトルゥにゃん、今日も元気してる？」

「嫌な予感してる......主（あるじ）が我輩（わがはい）に猫なで声を使うって事は、厄介（やっかい）な案件（あんけん）に違いないぞ」

「頼むよペトルゥ！簡単な仕事だ。初心者ワーカーの試験クエストに同行するだけ」

「はぁ......まぁ、それなら見てるだけだし、すぐに終わるけど」

　初級ワーカー昇進試験は、モンスターを一体倒すだけの簡単なクエストだ。

「そうそう、場所もパンドラの森だし、駆け出しにはベテランが同行するから問題無し」

「ふむ、パンドラの森なら危険なモンスターもいない...ネコ缶で手を打とう」

「決まりだ！優秀な猫がいて、僕は幸せ者だよ」

　ペトルゥはまだ知らない、この試験に初心者同士のパーティーが挑戦することを。

　何度も討伐（とうばつ）に失敗し、トドメに悪魔まで出現することを。

　これはまだ、ペトルゥが小説家と声優のコンビに出会う前のお話。

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