機械戦闘部隊

@miz-

砂漠の相棒

 風が強い日は10m先の敵を視認することすら難しい。ただこいつの頭部が赤く光っていないうちは、半径100m以内に脅威がないことは保証される。頭部に敵を検知できるセンサーをつけた相棒が、今の私の生命線である。完全に人型というわけではないため、頭部と言っていいのかわからないが、3本の腕のような造りをした器官より上のほうに出ている金属塊にそれが内蔵されている。関節などの駆動部には歯車の様な部品がむき出しになり、砂を巻き込んではジャリジャリと音を鳴らしている。どのような仕組みかはわからないが、砂を巻き込んでも問題なく動作しているようだ。防塵設計というより耐塵設計、とでもいうのだろうか。その金属と砂がこすれあう独特な音が、こいつ自身の言葉に思え、一人砂漠の真ん中でいる私の心の支えになっていた。


「なぁ、お前はこの旅がどうなると思う」


 返ってくるはずのない返事を脳内で補完する。こいつの存在が、私の精神をかろうじて維持させていることを自覚する。


「残酷だな、お前はーーー」




 私の記憶は、端の見えない砂漠で、こいつの”ジャリジャリ”を聞いたところから始まる。ただ、なぜだか、自分はもっと前から存在していたという確信も同時に持っていた。私の旅の目的は、かつてあったはずの自分の記憶と、相棒の正体を知ること。

 ーーというより、それを目的とする以外に生きがいがない。砂漠に産み落とされた無力な人間が何をできるというのだろうか。このまま砂漠の暑さに焼かれて死んでやろうかと思うものの、こいつのおかげでそこまで鬱屈になりきれない状態が続いている。




 その時は突然にくる。相棒の頭部が赤く光り、敵を探知した方向に体を向ける。私もそちら側に向いて、やたらと近未来的なレーザー銃の銃先越しに敵を探す。しばらく経つと、砂埃の中から蜃気楼で歪んだ機械兵の影が浮かび上がってきた。相棒も、標的を目掛けて腕のような部位を突き出し、人間とは逆の方向に関節部分を曲げ、その曲げた部分から飛び出す銃先を光らせた。


 ーーー決着はいつもあっけなく着いてしまう。銃先から機械兵まで約30mほど。鈍い音と共に、閃光が地面を一直線になぞった。途端、砂埃は敵の焦げた煙と混じり、黒く、虚しく濁った。

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