あの人に伝えたい~初恋の君~
花宮風月
第1章 9月1日
忘れられない、夢
夏休みの半ばに、暫くあっていなかった人の夢を見た。
それは、私が九州に住んでいた時の友達だった。
「あの人は今何しているのかな…」
何事もなかったように時は過ぎ、明日からまた学校に行くという日になっても、あの日見た夢のことが忘れられなかった。毎日のように考えていた。
何か行動を起こしたくても、住所も連絡先も知らない。別の友達にメールで訊こうかとも思ったが止めた。理由を訊かれたら面倒くさいからだ。
気が付いた時にはもう朝だった。何時の間にか寝ていたらしい。仕方ないから学校に行く。胸の痛みと憂鬱な思いを抱えながら。
***
小学3年生の夏休みに九州に引越した。小学5年生の冬休みには生まれてからずっと暮らしていた関東に戻ると言われていた。小学校はどちらも2年間同じクラスだった為、小学校3,4年は同じクラスだった。最初は生活に慣れていなくて苦労していたので、2年間同じクラスで助かった。
あの人とは3,4年の時に同じクラスだった。席替えはくじで行っていたが、あの人とは10回中8回は同じ班だった。その内の4回と、別の班の時に1回席が隣になった。同じ班の時に校外学習が2年とも当たって、仲良くなるには十分な環境だった。
比較的楽しい日々を送っていた。だから、戻りたくなったのだろうか。二度と戻れないあの日々に。
小学5年生の時に当然だけどクラス替えがあった。他の子には一緒のクラスになりたいねと言っていた。口だけは。正直、あの人と同じ教室でまた授業が受けられればそれ以外はどうでもよかった。
願いは叶わなかった。頭では理解していても心は運命に抗いたがっていた。体は上手く動かなかった。ぎこちない動作になっているとは言われたが、初日で緊張していると思われたようだ。そこまで心配はされなかった。
***
「おはよう。久々だね。」
「おはよう。結局夏休み中に1回も会わなかったね。」
慌てて現実に戻る。そうだ、私は中学校にいるのだ。近くの席の人に話し掛けられているのだ。時計を見るともう少しで先生が来ると思われる時間だ。提出物の確認でもしよう。今日は数学と理科と音楽の宿題の提出日だ。
あの人のことを考えないように、やるべきことをするだけで精一杯になりそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます