第6話 南冥のカッサンドラー(3/3)

「……起きて……護郎ちゃん……起きるのよ……」


 闇の中に沈んでいた護郎の意識は、聞き覚えのある声を聞いて急速に覚醒へと導かれた。彼が目を開けると、強烈な太陽光が視神経を焼いた。


 俺は、いったい、どうなったんだっけ。彼はそれまでのことを思い出そうとした。そうだ、俺は、仲間と一緒に森を移動している時に、敵のパトロール部隊と遭遇して……俺が残って敵を食い止めようとしたんだ! それで、目の前で手榴弾が爆発して、意識を失った……


 どろりと、彼の額に何やら生温かいものが流れた。手で触れると、それはべったりとした真っ赤な血液だった。


「護郎ちゃん、しっかりして。早くここから離れましょう」


 再度、声がした。彼を心の底からほっとさせる、聞き覚えのある穏やかな女性の声だった。ハッと打たれたように彼が横を見ると、そこにはイヨが立っていた。


「護郎ちゃん、そろそろ敵がやってくるわ。ここから移動しましょう」


 不思議なことに、イヨは、あの夜神社で会った時とまったく変わらない姿をしていた。身に纏っている白い小袖と緋袴には汚れ一つなく、彼女自身も傷一つ負っていない。濡烏の黒髪も、入浴直後のように美しい艶やかさを保っている。


 思わず、彼は声を上げた。その声は奇妙に掠れていた。


「イヨ姉さん、生きていたんですか……良かった。怪我はありませんか……?」


 イヨは微笑んだ。そっと護郎の傍に歩み寄ると、袂から白い手ぬぐいを取り出して、彼の頭部に仮包帯を施し始めた。


「ありがとう護郎ちゃん。私なら大丈夫よ。それより、ここから早く移動しましょう。もう十五分もしたら、敵が十人やってくるわ。仲間を殺されて、すごく殺気立っている敵が」


 なぜそれが分かるのか、とは護郎は問わなかった。イヨが言うのならば、それはその通りなのだろうと、彼はその時素直に感じた。


「それならすぐに行きましょう。でも、どこへ……」


 考える彼に、イヨは即座に答えた。


「まずは護郎ちゃんの傷を癒さなければならないわ。ここから二時間ほど北東に歩いたところに、兵隊さんたちが残した物資貯蔵庫があるの。地面の下に隠されているから、まだ敵にも見つかっていないはずよ。そこに行って、とりあえず空腹を満たしましょう。さあ、付いてきて……」


 二人は密林の中を歩き始めた。護郎は足を引き摺りつつ、苦労して歩みを進めているのに対し、イヨは滑るように先へ先へと歩いていく。彼女が履いている真っ白な足袋と草履が、護郎の目についた。それらは泥にも、草の汁にも汚れていない。


 森の中は、死臭に満ちていた。砲弾の破片に切り裂かれ、内臓を露出させた死体。頭骨が砕かれ、零れ出た脳に真っ黒に蠅が集っている死体。見た目には眠っているようだが、顔を近づけるとびっしりと蛆が死肉を食い荒らしている死体。骨、肉片、血で汚れた樹木、兵器と装備の残骸の数々。


 死臭を嗅いだせいか、護郎は軽い頭痛を覚えた。


 物資貯蔵庫はイヨの予言の通りそこにあった。二人は黙々と食事をした。


 貪るように食べる護郎に比べ、イヨの食べ方は至極ゆったりとしたものだった。小さな乾パンを一つだけ、時間をかけて食べた後、イヨは遠い目をしながら語った。


「こうして一緒にご飯を食べていると、昔のことを思い出すね。村のお正月、みんな神社に初詣に来てくれて、私は御神酒おみきとお餅を振舞って、護郎ちゃんは私が出す端からお餅を食べちゃって……喉に詰まらせかけたから、必死に私が背中を叩いてあげたら、護郎ちゃんは怒ったよね。力が強すぎるって……」


 護郎は、ここに来るまでに、気になっていたことを尋ねることにした。


「イヨ姉さん、どうして俺を見つけ出すことができたんだ。いやそれよりも、どうやって今まで生き抜いてくることができたんだ。敵はもう、そこらじゅうにいるのに……まさかイヨ姉さん、あなたは……」


 その時、護郎の脳裏にある考えが去来していた。まさか、イヨ姉さんはもう既に死んでいて、これは彼女の幽霊なのでは? それならば服が汚れていないことにも、滑るような歩き方にも納得が行く……


 だがイヨは、そのような護郎の考えを見抜いていたようだった。彼女は食事の手を休めると、護郎の頭に手を伸ばし、優しく撫でた。


「ふふ、護郎ちゃん。これが幽霊の手かしら? 私の手って冷たいけど、幽霊ほどひんやりとはしていないはずよ。それに、幽霊が食事をするかしら? ほら、私は今こうやって、護郎ちゃんの前で乾パンを食べているわ。だから、安心してね……」


 イヨの言葉は、充分な説明になっていない。それでも護郎は、強いて納得することにした。なんにせよ、今この場にイヨ姉さんがいてくれるのなら、これほど心強いことはない。


「これからどうしようか」


 腹が満ちた後にやって来たのは、不安だった。このまま山中を当てどもなく彷徨い続けていたら、いずれ敵に見つかってしまうだろう。一人ですら逃避行を続けるのが難しいのに、ましてやただの女性であるイヨを連れたままでは……血で汚れた彼の顔が曇った。


 すると、イヨは彼を慰めるように、穏やかな口調で言った。


「護郎ちゃん、不安に思うことはないわ。あなたはきっと生きて帰れる。それは確かよ。ここでもう少し休んだら、また移動しましょう。今度はここから南に一キロ離れたところに、小さな洞窟があるの。二日前に敵が掃討したばかりだから、しばらくは敵が来ないはずよ。そこで護郎ちゃんの体力が回復するまで、じっとしていましょう……」


 その言葉を聞いて護郎は勇気づけられる気がした。そうだ、この人はただの女性ではない。予言能力を持つ、特別な女性だ。この人と一緒なら、きっと最後まで敵に見つかることなく逃げ続けることができるはずだ。


 三時間ほど、二人はそこで休んだ。頭痛は止まなかったが、いつしか護郎は、イヨに寄り添うようにして眠っていた。イヨは、血の滲んだ包帯が巻かれた頭を癒すように、いつまでも飽きることなく撫でていた。



☆☆☆



 どれだけ時間が経ったのか、護郎には見当も付かなかった。二週間か、それとも一カ月か。密林に満ちていた死体の肉が虫に食い尽くされ、あるいは風雨に洗い流されて白骨化し、伸びゆく植物に半分取り込まれる程には、長い時間が経ったのは明らかだった。


 密林は凶暴で、獰猛だった。密林は自身を砲火と戦闘で傷つけた者たちを飲み込み、消化し、自身の新たな一部とした。


 仲間の兵士たちの姿は、一人として見かけなかった。敵のパトロールも、そのうち姿を見せなくなった。時折遠くの方から響いてきた射撃音と爆発音も、いつしか止んでいた。森には鳥たちが戻り、歌声を響かせるようになっていた。


 イヨはその間、予言によって護郎を助け続けた。彼女の予知は悉く的中した。目指す場所には必ず食料があり、薬があり、休息する場所があった。


 その間、護郎は何度も、森を出て敵に投降しようかと考えた。自分一人なら死んでも良い。だが、イヨはどうしても助けたい。いくらイヨの力によって助けられているとはいえ、このままずっと密林を彷徨うわけにもいかない。軍人としての名誉について考えなくもなかったが、彼にとってはイヨのほうがより重要だった。


 しかし、彼がそのことを口に出そうとするたびに、イヨが先回りをするかのように言うのだった。


「護郎ちゃん、今はまだダメよ。今密林から出たら、護郎ちゃんは殺されてしまう。もう少し待って。もう少ししたら、きっと護郎ちゃんにとって最善の未来の光景が見えるはずだから……」


 日に日に、護郎の頭痛は激しさを増していた。拾った医薬品を使うと、それは少し和らいだが、完全に消え去ることはなかった。


 あの時爆発した手榴弾の破片が、頭の中に入っているのかもしれない。護郎はそう思った。


 その日も二人は、山の中腹にある洞窟に、身を潜めていた。


「イヨ姉さんが今日まで生き残ってこれた理由が分かったよ。これだけすごい力なら、この地獄を生き抜くのも不思議じゃない。もしイヨ姉さんが男だったら、帝国の超能力者部隊に入れたかもしれないね」


 薄暗い洞窟の中、周囲に白骨が散らばっているその狭い空間で、護郎は軽口を飛ばした。それに対して、イヨはいつも通りの静かな声音と表情で答えた。


「いいえ、違うわ。生き残ったのは『私であって、私ではないもの』なの。いうなれば、カッサンドラーの力だけが残ったのよ。呪いに打ち勝って、私の言葉を信じてくれる人のために、私の力はまだこの世に残っている……護郎ちゃんのために、私は力を残したのよ。今、その力は、護郎ちゃんの頭の中に宿っている……」


 意味深長なイヨの言葉を理解しようとしたその瞬間、突然、護郎の頭に錐が揉みこまれるような激痛が走った。呻き悶える彼に、イヨは鎮痛剤を飲ませ、痛みが落ち着いたのを見計らってから言った。


「護郎ちゃん、ごめんね。苦しいよね。もう、あなたに残された時間は少ないみたい。このまま頭痛が続くと、あなたは死んでしまうわ。でも、助かる方法があるの。さっき、やっと私が得ることができた予言。聞いてくれる?」


 激痛によってわき出た涙で滲んだ目で、護郎はイヨを見つめた。


「イヨ姉さんの言うことなら、どんなことでも従うよ」


 イヨは、彼を見つめつつ、常にないことにきっぱりとした口調で言った。


「ガラパンの街に行って、あるものを探してちょうだい。それを見つけた時、あなたはきっと助かるわ」

「でも、ガラパンの街はもう敵が占領している。行ったら確実に捕虜になる。そんなことは、軍人として……」


 本当はそうする他ないと分かっているのに、護郎の口は抗弁をしようとした。するとその時、イヨは突然彼を抱きしめた。


「護郎ちゃん。私、護郎ちゃんにはこの先もずっと元気に生きていて欲しいの。また内地に帰って、私の神社でお正月にお餅を食べて、村の人たちと笑い合って楽しく暮らしてもらいたいの。だから、お願い。ガラパンの街に行って。それを見つけるまで、私が予言で助けてあげるから……」


 イヨの体は、奇妙なまでに重量感がなかった。それにも拘わらず、護郎は人生で初めて覚える温もりを感じていた。


 自然と、彼の口は動いていた。


「分かりました。イヨ姉さんの言うとおりにします。俺は、イヨ姉さんが好きだから」


 イヨは、にっこりと笑った。


「ありがとう、護郎ちゃん。私も、護郎ちゃんが好き」


 まるでそうするのが当たり前であるかのように、二人は唇を重ね合わせた。イヨの唇は湿っていて、温かみがあったが、どこか空虚な味がした。護郎は、その理由をおぼろげながらに理解していた。


 この初めての口づけは、きっと、死の味がしているのだろう。



☆☆☆



 その夜、二人は出発した。密林を抜け出したのは、次の日の夜中だった。ガラパンの街までの道は敵の工兵部隊によって舗装されており、数十分おきに敵兵を乗せた小型四輪車が通り過ぎていた。二人は敵の目を盗みつつ、道を急いだ。


 夜明けまであと一時間ほどを残した時分、二人はついに焼け野原と化したガラパンの街に入った。廃墟と化し生活基盤とインフラを喪失したこの街に用はないのか、敵の姿は見えなかった。


「私の神社、あの素須辺すすぺ香取神社へ行って。その階段の下に、探し求めているものがあるわ」


 イヨの言葉の通りに、護郎は歩いていった。今や頭痛は頻繁に訪れるようになっていて、立っているのでさえやっとという有様だった。目は霞み、隣にいるはずのイヨの姿すらはっきりと見ることができない。彼は、覚束ない足取りで、微かに残る記憶を頼りに、燃え尽きた街を進んでいった。


 街には、死体が溢れていた。どれも例外なく、真っ黒に炭化しているか、白骨化していた。護郎は幾度となく骨を踏んだ。踏まれた骨は枯れ枝が折れるような音を立てた。死者が泣いているようだと、彼は感じた。


 朦朧とする護郎の意識の中に、イヨの声が飛び込んできた。


「ここよ、護郎ちゃん」


 ついに、二人はその場所に辿り着いた。そこには、二人分の死体があった。いずれも白骨化しており、一人は大きく、もう一人は小さかった。小さな死体は大きな死体におぶさるように重なっていた。


 護郎の頭痛が、一層酷くなった。頭が割れそうなほどに、いや既に割れているのではないかと思われるほどに、その痛みは激烈だった。それでもなお彼は、意識を失わなかった。


 イヨ姉さんの言うとおりにしなければならない。姉さんの予言を信じることができるのは、俺だけなのだから。強力な義務感だけが彼の意識を保たせていた。


「そう、この死体。この大きな方の死体が、右手に握っているものを手に取って」


 隣にいるはずのイヨの声が、なぜか彼の頭の中で響いた。激痛に苛まれながらも、彼は身を屈めて、死体の右手を調べた。


 確かに、死体は何かを握っている。決して離すまいとするかのように、死してもなお、死体はそれを力強く握り締めていた。


 一本一本、彼は骨と化している指を解きほぐした。そして、手の中から出て来たものを、その目で見た。


 それは、絹でできた袋だった。金糸で細かな刺繍が施された、紫に染められた絹の袋。


「これは……これは……」


 途端に、護郎は全てを悟った。彼の目から止めどもなく涙が溢れ出てきた。ふと、死体の頭部に彼の視線が移った。落ち窪んだ眼窩と目が合った。


 されこうべの口が動いたように、彼は感じた。同時に、頭の中に声が響いてきた。


「ありがとう、護郎ちゃん。そう、この死体は私。あの朝、敵機が来た時、私は護郎ちゃんに言われた通り、山の防空壕へ逃げようとしたの。急いで神社を出て、階段を降りたら、下に親子がいたわ。お父さんと、小さな男の子。目の前で、男の子は転んで、足を挫いてしまった。お父さんは男の子を助けようとしたわ。その時、敵機が空から降りてきて……お父さんは子どもを見捨てて、逃げ出した。でも、ちょっと走ったところで敵機に撃たれてしまった」


 いつしか、骸骨は肉を纏っていた。そこには、素裸になったイヨの姿があった。豊かな胸の膨らみの間に小さな死体を抱きかかえつつ、彼女は話し続ける。


「私は、男の子を助けようとしたわ。でもその時、ある予知が頭をよぎったの。この子を助けたら私は死ぬって。一瞬、迷ったわ。そしたら、男の子が私を見たの。とても怖がっていたわ。私には、男の子が護郎ちゃんに見えた。足柄の神社で私に甘えていた頃の、小さな護郎ちゃんに見えた……だから、その時だけ、私は私の予言を信じないことにしたの。男の子をおんぶして、私は走り出した。次の瞬間、背中に何か熱いものが差し込まれたような感触があって……頭の上を飛行機の影が通り過ぎて行った時には、私は地面に倒れていた」


 イヨの体が、だんだん薄れていく。護郎は、瞬きもせずにそれを見つめ続けていた。


「ここまで来れば、もう大丈夫。敵は、あなたを殺したりはしないわ。護郎ちゃんがただ密林を出て投降しようとしたら敵に面白半分に殺される未来しか、これまで私には見えなかった。この予知をするのに、あなたの頭脳と精神の力を借りたの。頭痛がしていたのはそのせいよ……」


 護郎は、急速に自分の意識が薄れていくのを感じた。何も見えず、何も感じず、ただイヨの声のみ聞こえてくる。


「最後にお願いがあるの。その袋を、故郷に持って帰って。父さんはきっと、ススペ島にはもう満足しているだろうから……護郎ちゃんと一緒に帰れるなら、父さんもきっと安心すると思うわ。私のことは気にしないで。もう私は、悩みも苦しみもない、平穏な世界にいるから……」


 護郎の意識は、そこで途絶えた。その時、ちょうど夜が明けた。遠い海上に姿を現した太陽は、優しく護郎を照らし出していた。



☆☆☆



 帝国が無条件降伏をしてから、二ヶ月が経った。護郎は祖国に向かう輸送船の甲板の上で、一人静かに風に吹かれていた。


 首からは小さな袋を提げている。紫の絹の袋。イヨの父の遺骨が入った、イヨのお守りだった。


 イヨの予言のとおり、敵は彼を殺さなかった。死体の傍で、声も上げずにただ泣いているだけの男を見つけた敵の兵士は、咄嗟に向けた銃を下ろすと、彼の肩に手を置いて、煙草を一本差し出した。それは守備隊が玉砕してからちょうど四か月が経った日の朝だった。


 収容されると、彼は軍医の診察を受けた。彼の頭には、手榴弾の破片が刺さっており、先端が脳の一部にまで達していた。普通ならば即死していてもおかしくない。軍医は、彼の強靭な生命力に驚嘆していた。


 護郎にはもう一つ、首から提げているものがあった。敵の補給物品を詰める木箱を改造して作った、小さな箱がさがっている。その中には、骨が入っている。


 イヨの骨だった。


 捕らえられた際の異常な様子とは裏腹に、収容所での護郎の態度は従順そのものといえた。彼は作業を通じて敵兵と交流を深め、ついにある一つの願いを聞いてもらうことができた。


 ガラパンの街に行って、イヨの骨を回収したい。


 戦争が終わるまではその願いが聞き届けられることはなかったが、帝国が降伏したその次の日に、彼は外出を許可された。彼は街に行くと、イヨの死体があった場所まで行った。あの時から更に時間が経ったせいで、死体は風化してしまったのか、ほとんど残っていなかったが、辛うじて右手の骨だけが残っていた。お守りを握り締めていた、あの右手が。まるで、彼が来るのを待っていたかのように、右手はまだそこにあった。


 護郎は木箱を撫でながら思った。イヨ姉さんはこうして、父親の骨と一緒に祖国に帰ることができる。彼女は自分の遺骨を回収してくれとは一言も言わなかった。最後まで、俺が助かることだけを考えてくれていた。


 密林を彷徨っていた時に、いつも一緒にいてくれたイヨ姉さん。あれは結局、イヨ姉さんの幽霊だったのだろうか。それとも、損傷した脳が生み出した幻覚だったのだろうか。あるいは……いや、そのようなことはどうでも良いのかもしれない。護郎がイヨによって守られたのは、間違いのない事実なのだから。


 きっと、イヨ姉さんの魂が、俺を守ってくれたのだろう。


 彼は船尾の方へ視線をやった。すでにススペ島は水平線の向こうへと姿を消している。


「もう一度、あの島へ行こう。あの島へ行って、また骨を拾おう」


 そう呟くと、護郎は階段を下って、船内へと姿を消した。


(「南冥のカッサンドラー」終)

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