第94話三田屋敷道場で 華音VSエレーナ

翌朝、ビュッフェスタイルの朝食の後、エレーナは希望通り、華音とレスリング勝負をすることになった。(華音は、最初抵抗した。しかし、エレーナの涙目で、うん、と応じるしかなかった)


雄嶺は見る気もないので、そのまま仕事に出かけた。

三田屋敷の「道場」には、華音とエレーナが入り、シルビア、春香、雨宮瞳、母慶子、久保田紀子、が入り、見守ることになった。


審判役は、岩崎晃弘(母慶子の兄、華音の叔父で三田家に仕えている)

その「はじめ!」の声で、レスリング勝負が始まった。


華音は、やはり「本気が出せない」ので、最初は戸惑い顔。


「蹴りも突きも使えない・・・か・・・」

「ステップでかわす?」

「おそらく、エレーナはタックルから、抑え込み・・・」

「しかも、あの分厚い胸を使う・・・あれは苦しい」


華音は、しばらくは、ステップでエレーナのタックルをかわし続けた。


一方、エレーナも戸惑い、あせっている。

「あの・・・ステップが読めない」

「・・・ったく・・・カスリもしない」

「もう・・・気に入らない」

「私から逃げるってこと?」

「それなら・・・あの手を使う・・・」

「あの可愛い顔を押しつぶしてあげる・・・」


その様子を見ている女子たちは、呆れ顔やら、いろいろ。


シルビア

「やはり、華音は逃げ足だけは、速い、子供の頃から」

春香

「おなごには、適当につかまってあげんとな・・・無粋やな、あいつ」

瞳は、ハラハラしている。

「華音君、エレーナのタックルを読み切っている」

「エレーナの息が上がって来た・・・エレーナが先にギブアップかな」

「でも、エレーナは私も好き、何とか花を持たせた方がいいよ、華音君・・・」


母慶子は、頭を抱えている。

「ボクシングのステップまで使っている」

「あれでは、エレーナが可哀想だ」

「まったく、華音は気が利かない」


久保田紀子は、クスクスと笑っている。

「大丈夫、エレーナは、あれで華音のミスを誘っているの」

「息が上がったようなフリをしているだけ」

「華音は、いつか、引っかかる」


その久保田紀子の「分析」が的中した。

息を弾ませて、エレーナが膝に手を置き、華音も笑顔で、足を止めた、その時だった。


「うわ!」(華音の声)


「人間凶器」とも言われた、華音の強さを知る人たちにとって、信じられないことが起こった。


エレーナの超高速タックルが華音を仰向けに倒した。

そして、華音が一番恐れた、エレーナの豊胸が、華音の顔面に覆いかぶさった。


「一本!」

審判岩崎晃弘の声が道場に響いている。

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