第2話 大尉



空はどす黒く、地面には無数の水滴が叩きつける。大雨の日、その日に大きな知らせがあった。

ある軍の上官三人が殺された事だ。そのある軍とは、国際社会及び国際平和を守る為に国際組織によって組織された軍であった。中国よりも、ロシアよりも、アメリカよりも強大な軍。その軍の上官三人が殺されたことは国際社会に激震を与えた。

更にその日は、国際軍先鋭部隊が解散しない事が国際軍会議によって可決された日の翌日でもある。その可決を後押しした三人だけ殺されたのである。これには裏があるに違いない。

国際軍に潜む諜報員(スパイ)。

上官三人を殺した暗殺者。

この二つが今後の国際軍を揺らがす原因であるかもしれない。


翌日。

自宅でのんびりしていると、ある一通の電話が来た。ソファに横たわった姿勢を起こし、携帯電話を手に取り耳にかざした。


「こちらは《イーグル》。暗号化はしてるか?」


明らかに音声変換器を使った声をしている。


「ああ。常時オンにしてる」

「良し。今日はその自宅から出ないようにしてくれ」

「何故だ?」


イーグルは俺の疑問にため息を漏らした。


「はぁ。確かにお前の腕は買っているさ。だがな、相手の情報はほぼない状態にある。どんな手を使ってくるか分からないぞ」

「どんな手を使わないからこそ、同じ場所に留まると良くないだろ」

「わかっている。…なら、武器はあるか?」


俺は棚の中から銃を取り出した。


「ある」

「なら良い」


フルカスタムのグロック18Cと壁に掛けてある刀を持ち机に置いた。


「あとは…またいつか直接会って話そう。グロック大尉(・・)」


イーグルは通話をきった。

グロック大尉。そうそれが俺の名前である。ただのグロックだ。それ以上でも、それ以下でも無い。

しかし、大尉で呼ばれたのは何ヶ月ぶりだろうな。

先の任務で怪我をするまでは、呼ばれていた。怪我は大したことは無いが、流石に戦いすぎだと言われ仕方なく休養を受け入れた。

いつも無理をし過ぎて怪我をしてしまうが、俺は何とも思っていない。人一倍の力を持っているのなら、弱き者を守るのは自分の責務だと感じてるからだ。生まれながらにして、親がいなかった俺を拾ってくれたある人物から教えられた事だ。

ま、そんな事をいま考える事でもないな。そろそろ食べ物など買いに行きたいから、装備を整えるか。

俺は机に置いてあるグロック18Cをホルスターの中に入れ、マガジンも装備して、服を着替えた。

刀は………要らないと思うから、置いておくか。

そして、全てが整った。その時だった。

誰かの足音が聞こえ振り返った瞬間に何か丸い黒い物が窓を突き破って投げ込まれた。よく見ると、グレネードだ。


「なっ!」


俺は素早く、バスルームに飛び入りドアを閉め急いで伏せた。

爆発音と閃光が二、三回と連続で起こり静けさだけが残った。

暫く動かなかったが、銃声がした。多分部屋に入る為にショットガンを使ってドアを壊したな。

そろそろこっちに来るな。俺は立ち上がり銃を構えた。


「そっちの部屋も調べろ」


そう聞こえた。そして、ドアノブが回転しドアが開き相手の顔が見えた瞬間に銃のトリガーを弾く。まずは両足を撃ち、頭を銃で叩き気絶させる。

まずは一人次はお前だ。


「チッ」


舌打ちが聞こえてきた。舌を打つ暇があるならトリガーを引いた方が良かったぞ。

俺は銃をエクステンディット・ポジションに持っていき相手の頭と首に一発ずつ撃ち込んだ。二人目はアッサリだったな。

部屋を見渡しても人はそれ以上居なかった。にしても、二人だけで俺を殺そうとしていたのか?二人とも黒色のフェイスマスクをしていた。装備もなかなかいい物を持っていた。

どこの野郎かは知らないが、一人生きているからそいつに吐かせてもらう。

そのあとまた人が入ってきた。今度は三人かな。

俺は台所に気配を抑えながら行き、棚の中なかから包丁を取り出した。

そして一人が近づいてきた所を襲って包丁で首を掻っ切り、それに気づいて銃口を向けてきたもう一人の頭に包丁を投げ込み、見事に刺さり倒れる。

最後の一人は背後から近づき至近距離で頭を撃ち抜いた。

その後、俺は机に置いてある刀を持って外に出る。周りを一望し敵が居ないかを確認して、自分の車に乗り込んだ。そしてイーグルに電話をしようとした所、全身黒の服を着た二人組の人がこっちに歩いてきた。

やばいと思い、エンジンを掛けてその場を離れようとしたがちょっと判断が遅かったようだ。

二人組の内、一人が足を車のバンパーに当て押した。案の定車は勢いよく後ろに後退し壁に激突する。

あんなに堂々と歩いてくる時点で確信していた。あいつらは普通の人では無いと……。あいつらは能力者だと。

俺は潔く、素早く車から降り二人組に話しかけた。


「俺に用か?」

「………」


無言か。


「車を乱暴に扱って困るね」

「……」


あくまでも俺を殺す為に来たと、そういう風に感じた。

ならば仕方ない。やってやろうじゃねぇか。


「死んでも、後悔するなよ?」


俺は最後の警告を言い放ち、刀を構えた。

二人同時に来た。一人は銃、一人はナイフを持っている。あれは特殊なナイフだな。

刃の部分が赤くなっているし、持ち手の部分に謎のトリガーがある。そこの観点から見るに熱切断型ナイフだな。


「それ、熱切断型ナイフだろ?」


俺は攻撃を避けながらその男に聞いた。


「………」


反応なしか。まぁいい。どうせ後で色々と尋問するからな。

その後数分に渡って闘った。しかしあれを闘いと呼ぶには些か違う。あれは一方的な蹂躙でしか無かったのだ。

能力者だから少し手こずったな。やはり、休み過ぎたのかもしれない。いや、確実にそうだ。


俺は二人組の一人の胸ぐらを掴み、被ってあった仮面を剥ぎ取り質問した。


「誰がお前らを雇った?」

「誰も俺らを雇ってなぇな」

「なら誰がお前らを命令した?」


俺の質問に、ソイツは鼻で笑った。


「教えるかよ…」


そこはしっかり訓練されているな。ソイツは更に言った。


「勘違いするなよ。俺たちは所詮捨て駒だ……」


次の瞬間ソイツは頭を撃ち抜かれた。

銃弾が飛んできた方向を見ると建物の屋根にスナイパーがいた。

その狙撃手もう一人の方も撃つと次はこっちに照準を向けたのが分かった。

俺は車を盾にして隠れ、銃声が数回した後に身体を出し、狙撃手がいる方に銃弾を撃ち込んだが、逃げられてしまった。


「クソッ!」


止めようとしたが、間に合わなかった。

これで七人中六人が死んだ。でも、あと一人いる。そいつから色々と聞き出すしか無いな。

それよりイーグルに報告をしなければ。

俺は携帯をポケットの中から出し、イーグルに電話した。


「なんだ?まだ、何か要求があるのか?」

「要求では無い、報告だ。どこの組織の奴らが知らないが、襲ってきやがった」


イーグルは何も返答せず、少し沈黙が続いた。


「は?お前の居場所は分からないはず…」

「大した怪我は無いし、ほかに怪しい人物も見当たらない」

「すぐに国際軍基地に来い!」


そんなに慌てなくてもいいだろ。アイツらそんなに強く無いし。


「分かった」


俺は返事したが、アイツらは一体何者なんだ?狙撃手で味方も排除するほどの徹底ぶり。

しかも、あの狙撃手かなり腕が立つ奴だな。照準を的確に合わせるまでの時間が短く、落ち着いていた。




二日後

グロック大尉は早朝すぐにイーグルに呼び出された。

呼び出されたのは、大きな机が左右に並べられた作戦会議室であった。グロックはイーグルの座っている椅子の向かい側に座る。

そしてイーグルはファイルをグロックに渡し話を始めた。


「今回お前を襲った七人の内一人が国際軍上官暗殺事件にも関与している事が分かった」


それを聞きながら、グロックはファイル開き顔写真を見た。その人物は特殊なナイフを持ち、先日グロックが話した人だった。

イーグルの話は続いた。


「そして、先日の件で生き残った奴を尋問したが、口が硬くてなかなか聞き出せなかった。だから少し特殊な方法で聞き出した。情報がそのファイルの次のページにある」


グロックはファイルのページを捲ると、そこには大きく《PROJECT V》と書かれていた。


「口を割ったお陰で、奴を命令した組織名が浮上した。そしてその名前をもとに、資料を探してみるとヒットしたのがその資料。しかし、その資料はかなり前にある組織の本部にあった資料そのものをコピーしたものだ」


するとグロックはファイルを机の上に置き背もたれにもたれかかり、イーグルに質問した。


「つまり、今回の俺の件と上官の件はこのプロジェクトVという組織が関与しているのか?」


グロックの質問に対して、イーグルは首を横に振った。


「それは違うな。組織名では無い、そのプロジェクトVは計画名だ。その計画を行なっている組織が黒幕と考えた方がいい」

「しかし、何故プロジェクトVという名前が出てきたんだ?」

「それについてもまだ分からない」


グロック大尉は再びファイルに書いてある《PROJECT V》という文字を見た。





———————


これで終わりです。一様自分の概念的には読み切りと思ってます。文字数的にも少ないですが、長編ではないので許して下さいください。続きを描く気があったら長編になりますが、気分次第です。

それと、何か改善点やアドバイスがあったら感想に書いて下さい。読みますので。


最後に…読んでくれてありがとうございます!

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PROJECT V 竜胆モミジ @KatyusyaKB2

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