少女たちのティータイム ~ヤンキーちゃんと眼鏡ちゃんとマッドちゃん~
団子おもち
第1話「ヤンキー少女と眼鏡少女」
東北地方、M県S市にあるお嬢様学校『聖ダーミアン女子高等学校』。
そこに通う高校1年生、
黒髪のショートヘアー。眼鏡をかけ、大人しく、素直で真面目で、心の優しい性格の少女である。
趣味は読書。好きな食べ物は、お気に入りの喫茶店のいちごパフェと紅茶。
両親とも仲が良く、正月とお盆には祖父と祖母の家に行って顔を出す、どこにでも居る普通の少女……なの、だが……。
彼女はある日、突然、普通じゃなくなった……。
* * *
すべての始まりは、風月が聖ダーミアン女子高等学校に入学してから3日目の昼休み。
憧れのお嬢様学校に入学することが出来た風月は、ルンルン気分で廊下を歩く。
入学すれば、良い大学に入れ、就職にも有利。将来は安泰。安心した老後が過ごせるとまで言われている、この学校。
もはや、入学しただけでも人生勝ち組である。
そんな学校に入学できたのが嬉しかったのか、彼女は思わず鼻歌まで歌ってしまうほど浮かれていた。
すると、風月の喉が渇く。
確か、校舎の外にある休憩スペースにはジュースの自動販売機があったはず……そう思い、風月は歩みを進めるのであった。
後に、彼女は思う……。
「……人生には、『分岐点』ってありますよね?
私は、自分の人生の分岐点はこの聖ダーミアン女子高等学校に入学できるか、出来ないかが人生の分岐点だと思っていたんです……。
……しかし、違いました……。
私の人生の分岐点は、『休憩スペースに行くか、行かないか』が人生の分岐点だったのです……」
* * *
校舎の外にある休憩スペース。
そこには、ジュースやアイスの自動販売機が何台も設置され、ベンチもある憩いの場。
空は雲一つなく、爽やかに晴れていた。
風月は大きく息を吸い、「さぁ、ここでいちご牛乳を買いましょうー」と思った瞬間。
ドガッ!ズガガガーン!!!
物凄い衝撃音が、風月の耳に入り込む。
「なっ、なに!なんなの!?」
まるで力士と力士が土俵の上で、激しくぶつかりあっているかのように激しい音だ。
突然の衝撃音に驚く風月。
そして、休憩スペースに辿り着くと……そこでは、信じられない光景が広がっていた。
「ふざけんな!コラ!!機械のくせに、あたいに喧嘩を売ってんのか、ボケコラオラァ!!」
叫びながら、自動販売機に何度も何度もショルダータックルをする青いスカジャンのヤンキーが居た。
自販機にショルダータックル……あまりにもショッキングな光景に、風月は愕然。思わず、某ファーストフード店の某白いお髭のおじさんのようなポーズをしてしまう。
ドガッ!ドガッ!!と音を立てて、何度も何度も自販機にショルダータックルをするヤンキー少女。
その髪は金色に染まっており、長い髪の毛を後ろで束ね、ポニーテールにしている。
そして、なによりも目立つ青いスカジャンには『金色の龍の絵』が描かれている。
どう考えても、この学校の制服ではないし、指定のジャージでもない。
スカートは踝が隠れるぐらいに長いロングスカートで、剣道部か、弓道部の袴と見間違えるほどに長い。
この少女……どこからどう見ても、ヤンキーだ。
風月は衝撃を受けた。
な、なんで、このお嬢様学校に80年代から90年代初期のヤンキーが居るの!?
こんなの絶対にありえない!
風月がそう思っていると……。
「ああん!?」
風月の気配を背中で感じ取ったのか、ヤンキー少女はショルダータックルを止め、振り返る。
ヤッキー少女と風月の目が合った。
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