第3話 ギルド
「何か身分を証明するものはお持ち?」
「いいえ、持ってないです。」
「だったら町内へ入る際に身分証明書がない方は銀貨を1枚納めないと入れないんだ。」
「え、銀貨なんて持ってないです。」
すると薄毛の門番は困ったなぁと呟いたあとにやりと笑って
「だったら体で納めて」
「なに馬鹿なこと言ってんのよッ!」
「あてっ!」
なに?この世界はエロおやじしかいないのか?
(え?なんだって?)
うるさい神様は黙ってろ。
(ひいっ!)
「嬢ちゃんごめんね。この馬鹿野郎が。あとできつく言っておくわ。」
薄毛の門番の頭をひっぱたいて出てきたのが若めの女性の門番の方だった。
「でも決まりでお金がないと入ることができないの。」
困った。私お金なんて持ってないよ。
(左ポケット!)
え?
神様に左ポケットを見るように言われたので軽く漁ってみると、出てきました銀貨。
神様のドヤ顔が目に浮かびます。
「あ、銀貨見つけました。これで大丈夫ですか?」
「あら、よかった。身分証明書がないと不便だろうから町に入ったらギルドへ行くことをお勧めするわ。多少のお金がかかるけど身分証明書が発行できるから。」
「はい。ありがとうございます。」
何とか入ることができた。
(神様、お金ありがとうございます。)
(うん。一応少しだけどお金を送っておいたから好きに使ってくれ。)
確認したところ、金、銀、銅貨がそれぞれ100枚ほど入っていた。
よく聞く話だと金貨が10万円で小金貨が1万で銀、銅がそれぞれ1000円、100円のレートだと思うけど、神様は少しって言ってたので多分ちょっと小説の世界とは違うのかな?
とりあえず身分証明書がないと始まらないのでギルドへ向かうことにした。
「ここかな?」
門の入り口から少し歩いた町の中心近くにギルドはあった。
西洋風の大きな建物で、入りやすいように扉常に解放されているようだ。
私みたいな陰キャは扉が閉まっているとお店に入りにくいので結構こういう気遣いはうれしい。
「すみません、身分証明書が欲しいのですが。」
「はい、ギルドカードですね?」
どうやらギルドで発行されているギルドカードが身分証明書になるようだ。
「では、水晶に手を置いてください。」
「はい。わかりました。」
私は言われたとおりに手を置いた。
どうやらこの水晶が優れモノで、名前や年齢、称号やスキルにステータスがわかるそうだ。
ん?ステータスがわかる?
……。
やばい、私のステータスばれるのでは。そう思い顔をあげて受付嬢の表情をうかがう。
あ、遅かったようだ。
担当してくれた受付嬢は私のステータスをみて顔を真っ青にしている。
「ちょ、ちょっとこちらへ!」
そういうと私はギルドの奥まで案内された。
「ほう、君が。」
多分目の前にいるのはギルド長だろう。ギルド長は私のことを嘗め回すようにじろじろ見ている。
正直ちょっと気持ち悪いがどこから来たのかもわからない少女がとんでもないステータスを持って現れたのだからそりゃびっくりするだろう。
ギルド長の後ろには一人の男性が立っていて、どうやら腕の利く真偽判定官らしい。
嘘はつけないということだ。
「あなたは何者ですか?」
「チナリです。」
「ちなり?それはなんかの職業ですか?」
「いえ、名前ですが。」
「いや、はぁ……。」
ギルド長はなぜか頭を抱えてしまった。普通に何者かと聞かれたので名前を答えただけなのだが。
「わかった。質問を変えよう。君はどこから来たのです?」
「東のほうから来ました。」
「ほう、東のどこですか。」
「日本です。」
「二ホン?」
するとギルド長は真偽判定官のほうを見る。
どうやら真偽判定は真だったようだ。
そりゃ嘘ついてないもの。偽だったら嘘つき真偽判定官になってしまう。
「ええい!敬語は話しずらい!ちょっと遠慮なくいくぞ!さあチナリよ。ここがどこだかわかるか?」
「ギルドです。」
「いや、そうだけど。私が聞きたいのはそういうことじゃなく。はぁ、いや。いい。」
何か呆れられたような表情で見られたのだが……。なかなか失礼じゃないか?こいつ。
「いいかチナリ。ここはヘリティア王国のウッズヘルキンス伯爵領。このウッズヘルキンス伯爵領はこの大陸で最も東に位置する領地なのだ。だがあんたはさらに東から来たと。それも地図に載っていない二ホンという国から。とりあえずギルドカードは発行する。しかしステータスもおかしいのだ。私は相当腕の利く人間だと自負している。その私のステータスの100倍、いや1000倍をも上回っている。申し訳ないがギルド本部まであんたの話を上げさせてもらう。いいな?」
えぇ、ギルド本部?それ私危険だから処刑されるとかそういう話じゃないの?
「いいな?」
「はい!!」
そうしてギルド長から直々に渡されたギルドカードにはなんかよくわからない数値と称号『神の御使い』が書いてあった。
神の御使いって……。話しにくそうにしてたのはそういうことだったのか……。
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