第14話 異性?
◆レブン視点
「だから、剣を振るときは重心を、こう意識すれば、剣にふりまわされずに簡単に振れる。やってみろ」
「ああ、こう、か、と、うわっ?!」ドサッ
「痛てて、尻餅ついた!?」
「違う。こうして、こうだ!」、ビシュッ
「早すぎて分かんねぇよ!?こうして、こうだってって、もっとゆっくり教えろ!」
「何故分からない?」
「分かるか?!」
今日はランス君の稽古の日。朝からハルさんとランス君が、裏庭で剣の素振りをしている。何故か二人とも上半身、裸だ。
「まーたく男共ときたら、セックっじゃない、アピールに忙しいんだから!」
「マ、マイリちゃん!?」
マイリちゃん、相変わらずイスにふんぞり返って、七歳児ぽくない喋り方をしているよ。
はぁ最近、毎日来るようになったランス、マイリ兄妹。そして勝手に護衛と称して住み込んだハルさんは、もっと静かな隠とん生活を予定していたボクにとって、まったく予定外な状況だ。身の回りがいつの間にか、騒がしいものになっちゃった。まあ、暗い一人生活よりは、いいのかもしれないけど。
クスッ
ああ、おもわず笑いが漏れる。こんな生活は久しぶりだな。ずっと研究、研究で部屋にとじ込もっていたから、これだけ身近で長く人と接するのは、あの時以来かな。
森の中に広がる美しく花畑。
黒目、長い黒髪の、民族衣裳を着た美しい小さな少女が、銀髪の可愛い少年に振り向く。
『レブン、レブン、大好き。ずっと一緒にいたい』
『ボクもだ。アトュ。ずっと、ずっと一緒だよ、アトュ』
ザァーッ
突然、花びらが辺り一面に舞い、場面が変わり、とある部屋でベッドに伏せる少女。その枕元にいる小さかったボク。
『どうか、……レブ。いつかきっと、あなたの夢に……立派な薬師に、なって』
『嫌だ、嫌だ、ずっと一緒だって言った。ボクはずっと君と一緒だって、うわああん』
……アトュ………今なら君を……
「レブーちゃん?」
「ふぇ、うわあああ!?」
ドサッ、ドタッ
気がつくと、鼻先にマイリちゃんの顔があった。ビックリして、床にお尻をついちゃったよ!いたた。は?ボクを覗き込むマイリちゃん、な、何かな!?
「じーっ!」
「マ、マイリちゃん、な、何かな?」
「レブお姉さん、今、何考えてたか、当ててあげる」
「はい?何を考えてたかって?」
「ズバリ、昔の男の事!」
「ぶほっ、昔の、男って!?」
「あたしの眼は誤魔化せない。お姉さんの目は、昔の恋人を忘れられない顔!」
ビシッて、指を射すマイリちゃん。ボク、なんで責められているの!?
「はいぃ?!マ、マイリちゃん、昔の恋人って何を??」
「済まん、レブさん。ちょっと聞き捨てならない話しを聞いたのだが」
「聞き捨てならない話しを聞いたのだが!」
「ぎゃっ、い、いつの間に!?」
突然、耳元に聞こえるハルさんとランス君の声。床にお尻をついている自分に合わせるように、真後ろに正座して座る二人。
なんで?
「その、レブさん。好きな男性がいるのだろうか?」
「恋人の男がいたのか、レブさん!!」
ズザッ、ズザッ
ひえぇ?!
膝を床に擦りながら迫ってくる二人!?
めちゃくちゃ心配そうな顔で何でって、え?ランス君、泣いてるの?はあ?恋人の……おとこぉ!???
いやいや、ボクの恋愛対象は至ってノーマルです。
「ふ、二人とも、何を勘違いしているのか知らないが、ボクの恋愛対象は女性だからね、断じで男じゃないです、はい」
え?え?え?、二人が真っ青な顔になってるんだけど?はい?マイリちゃんが後退りした!???ボク、変な事、言ったかな?
「レブお姉さん、そっちの人だったの?」
「はい?マイリちゃん、そっちって?」
「そっち、女の子同士で愛し合う事……」
え、それって、エレノア様とキャロラインみたいな話しって事?いやいやいや、ない、ない、ない、あんな事は無いから!ああ、マイリちゃんが何か、変な人を見る目に?!
「いや皆、勘違いしないでよ。ボクの恋愛対象は間違いなく、
「レブお姉さん、本当!?」
「レブさん、良かった!」
「レブさん、俺、どうしようかと思って!」
ふう、何とか誤解は解けたようだ。マイリちゃん、ハルさん、ランス君とも安堵しているよ。まったく、なんでこんな誤解を……?
ん?異性?
待てよ?今のボクは女性になっちゃってるんだった。
おまけに今は、マイリちゃんが無理やり着せた、白のワンピースを着ていて、多分だけど、傍目には何処から見ても、女性に見えているよね?
この状態で女性が好きって言ったら、……っ、あああ!ボク、エレノア様達と同じに見えちゃうじゃないか!?
うわああ、不味い、ボクは変な人だわ!
し、仕方がない。不本意だけど、次からは『女性が好き』は言わないようにしよう。そうしよう。
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