第4話 兄妹達の話
ランス視点
俺はランス。
ベナティア村に住む十歳だ。家族は母ちゃんと妹がいる。猟師だった父ちゃんは、妹が生まれた時、
俺達の村の主な産業は農業で、ウチの畑ではトウキビをメインに植えていた。けれど今年は天候不順の長雨が続き、トウキビが殆んど育たなかった。このままでは食べる物もなく、家族三人とも餓死してしまう。それで母ちゃんが村長さんから借金をして、見返りに村長さんの畑で働く事になった。毎日、遅くまで働いて帰ってくるんだけど、凄く疲れて帰ってくる。
そしてある日、母ちゃんが高熱で倒れてしまった。町の薬師から薬を買う、お金も無い。でも俺は死んだ父ちゃんから、魔森の奥に、熱冷ましの薬草が生えている事を聞いて知っていた。だから、直ぐに魔森に探しに向かったんだ。
そしたら妹のマイリが、俺の後に付いてきてしまった。仕方なく、二人で薬草を探す事になる。
「兄ちゃん、もう疲れて歩けないよ。ちょっと休んでいこう」
「はあ、さっき休んだばかりじゃないか。だから付いて来るなって言ったのに……」
「グルルルルッ」
「お兄ちゃん!?」
「マ、マイリ。下がれ?!」
そして、こんな浅い森には滅多に居ない筈の獰猛な魔獣、
「マイリ、逃げろ!!」
「お兄ちゃん!?」
俺は妹を逃がす為、奴の注意を引き付けた。だが、奴の動きは想像以上に早かった。
「ガオオオッ」
ガブッ
「う?!うわあああああ!」
「お、お兄ちゃん?!いやああああ!!」
その瞬間、俺の左足に激しい痛みが走ると、俺の左足が宙を舞った。俺は奴に左足を食いちぎられ、もはや絶体絶命だった。
俺は薄れいく意識の中で、妹の安寧を願った。
バシュンッ
「グオ?!ギャオオオオーーーーーー!!」
ドコッドコッドコッドコッ……………
「ああ、兄ちゃん、兄ちゃん、兄ちゃん!」
ああ、なんでだ?逃がした筈の妹が駆けよってくる。でも、俺は駄目みたいだ。
なんでそう思うのかだって?
それは目の前に、信じられないくらい綺麗な女神様がいたからだ。
そう、
そうか、俺、もう死ぬんだな。だから女神様が、お迎えに来られたんだ。
俺の、最後の願望を、見せに来てくれた。ああ、男のロマンだ。もう、思い残す事は何も無い…………俺の……ボイン…………。
◆◆◆
ん、ここは何処だ?
知らない天井だ。
俺、確か
「ああ?!お兄ちゃん、お兄ちゃん!目が覚めたんだ、良かったぁ!」
「マ、マイリ、な、んで?」
俺が目を覚ますと、マイリに抱きつかれた。
おかしい。
俺は左足を喰いちぎられたのに、足の感覚もある。一体、どうゆう事だろう?
カタンッ、カチャカチャ
誰かが食器を揺らして持ってくる?
妹だけじゃなかった!?
『気が付いた?良かった。起きれるかい?起きれるなら、この薬を飲むといいよ。だいぶ体力を消耗してるから、栄養剤の一種さ』
突然、奥からローブに包まれた人が現れて、俺に水と紙の包みを渡してきた。けど、声が綺麗な高い声、女性だって判る声だ。
「あ、有り難う御座います。あの、貴女が助けてくれたんですか?」
「お兄ちゃん、そうだよ!このお姉さんが、神様の薬で、お兄ちゃんを助けてくれたんだよ」
俺の問いに答えたのは、何故か妹だった。俺、この人に話してんだけど?
『マイリちゃん、お姉さんじゃないでしょ!お兄さんです。間違わないでね?』
「はい、お姉さん」
『はあ、もう、いいです……』
なんだろう。明らかに女性なのに、お兄さんって言ってたけど、そういう趣味なんだろうか?でも、この人が俺の命の恩人には違いないようだ。
けど、やっぱり変だ。
さっき確認したけど、なんで左足があるんだ???
「あの、俺、左足を
「ああ、お兄ちゃん。それはね、お姉さんが自分の腕にナイフをもご!?モゴモゴ……」
「?」
なんだ?ローブの女性が慌てて妹の口を塞いでるんだけど、自分の腕に、何だ?
『アハハハハ、君は襲われたショックで頭が
「もが、もが、もっがーーーーーっ!」
何だろう。
このローブの女性、めちゃくちゃ焦ってないか?けど……
「あ、あの、妹が息が出来ないみたいで、その、苦しんでますから、手を離していただけると」
『ありゃ、こりゃ、ごめんなさい!?』
ドサッ「ぶはぁ、死ぬかと思ったぁ」
あ、慌てて妹から手を離してくれた。だけど妹は、尻餅をついて座り込んだ。
『妹ちゃん、約束したよね?忘れてないよね?』
「は、はぁい」
ローブの女性が妹を覗き込んで、なんか言い聞かせてる?
『ふう、とにかく意識が戻って良かったよ。薬を飲んだら、もう帰ってくれ。二度とこんな森の奥にくるんじゃないよ』
「あ、あの、母ちゃんが病気で、その、薬草を取らないとならなくて……」
『妹ちゃんから聞いてる、そんな薬草より、もっと病気に効くポーションをあげるよ』
「は、はい、ポ、ポーション?!」
ポーションだって!?ポーションって、貴族しか買えない値段の万能薬じゃないか??
『だから、ここでの話しは他言無用、それと二度とここには来ない事。それがポーションをあげる条件だよ、守れるかい?』
「は、はい。ポーションを頂けるなら、ま、守ります」
『じゃあ、はい。ポーションだよ。お母さんには強すぎるかも知れないから、コップに水を入れて一滴、垂らしたものを飲ませてみて。また、足らなかったら追加すればいいよ』
ローブの女性が出した物、小さな小瓶に赤い?なんか赤い液体が入っている。ポーションなんか見た事がないから、色なんて知らないけど、これがポーションの色なんだ!?
『あ、ポーションは、お母さんが回復して残っていたら、地面に撒いて捨てる事。これもポーションを渡す条件だよ、いい?』
「はい、有り難う御座います。おね……お兄さん」
「ありがとう、ボインのお姉さん!」
『お兄さんだよ、妹ちゃん……』
こうして、ポーションを貰った俺達兄妹は、ローブの女性?の小屋を後にしたのだった。
そしてこの事が後々、大変な事になるなんて、この時の俺達には、思いもよらなかったんだ。
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