孤独の香り

ももいくれあ

第1話

幸せだ。と彼女は叫んだ。

心の中の彼女が叫んだ。

彼女のまわりの全てのコトが、

みずみずしく潤っていく。

決して掴むことは出来ないけれど、

なみなみと注ぎだされていく。

その場所から少しでも動けば、

ズブズブと果てしなくはまっていく。

そんな彼女の幸せだった。

甘くて、中が酸っぱくて、

その一番真ん中は、

すごく固くて、

すごく苦い。

だ液腺がジュージューいうほどの

難しい味だった。

時々落ちる雨を感じながら、

したたるソフトクリームをかきこんでいた。

いつものチョコミントが無かったのか。

わたがしの粗目のような

 舌ざわりのうず巻きは、

  湿ったコーンがよく似合っていた。

背中いっぱいの幸せを抱えて、

 抱えすぎて、つんのめった。

左足の中指と右ひじの骨は砕けた。

リハビリが必要なんです。

彼女の心はマリコに告げた。

でもマリコは知っていた。

観覧車のてっぺんが一番辛い瞬間なんだと。

平たんな空と海の間に、

孤独の臭いをかぎつけた。

来年の春であの人は、

そろそろ大人になるんだね。

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