第6話 四度目の電話
あの女は俺の携帯番号をどうやって調べたんだろう。
だけど、興信所なんかを使えばすぐわかるのかもしれない。そうじゃなくても、同じ大学の卒業生が俺の会社にもいるし、そういう伝手で調べたのかもしれない。会社で張り込んでいれば、家くらいすぐばれる。
俺は仕事が手につかなくなってしまった。俺に奥さんがいればよかったんだけど。実際は一人暮らしだ。一戸建てだし、電気をつければ、中にいるのがわかってしまう。相手が女でもやはり怖かった。俺は電気を消して、エアコンも使わずにじっとしていた。
すると、次の日の夜も、真理佳から電話が掛かって来た。無視すると家まで来るかもしれないから、取り敢えず出ることにした。ストーカーには迷惑だとはっきり伝えた方が効果的だと何かで読んだことがある。はっきり断ろう。
「はい」
「先輩。こんばんは。昨日はすみませんでした。謝りたくて」
「いいよ、別に。今、奥さんが一緒にいるから。ごめんね」
「いいんですよ。奥さんが一緒でも。別にやましいところはないので・・・」
「俺、既婚者だし、電話するのやめてもらえないかな」
少し間があった。ショックを受けているんだろうか?
「既婚者じゃないですよね。独身って聞きました。だから、電話してるんです」
「君、どうやって調べたの?」
「インターネットです。名前を打ち込んだら出てきました」
「あ・・・」
俺は会社のホームページに出たことがあった。それで勤務先がバレて、家がバレて、独身だってことがバレて、携帯番号が?そんなわけない。
「俺のこと、どこまで知ってる?」
「ある程度は」
「もうやめてくれない。君、怖いよ」
「じゃあ、もらってもらえません?私の処女を」
「それはちょっと・・・やっぱり俺も彼女いるしさ」
「いないですよね」
「何でそう思うの?」
「Twitterで『彼女いない』、『誰か彼女恵んでください』って、しょっちゅうツイートしてますよね」
「え?何で知ってるの?」
俺は赤面した。セフレもいるし、本気で書いてるわけじゃない。
「私、めっちゃ勘がするどいんで。わかったんです」
何故だろう・・・。俺のアカウントなんてゴミみたいなものなのに。
「もう、やめろよ。俺なんかに執着したって意味ないから」
「意味ありんすですよ。私、今すごく充実してるんです。毎日、先輩が何時に起きて、何を食べて、1日何回トイレに行くとか・・・、誰と電話してるとか、何見てオナニーしてて、週何回するかとか。めっちゃ、楽しい。先輩ウォッチングで一日中過ごせます!もう、オタクで!あはは。決めたんです。これからは、私、先輩の追っかけするって」
「意味わかんないよ」
どこで見てるんだろう。俺は不思議だったし、怖かった。
パソコンをハッキングしてるんだろうか。
家には監視カメラが付いてるんだろうか。
俺は仕事のパソコン以外は見るのをやめた。それに、携帯も盗聴されている可能性があるから使わなくなった。
トイレに何回行ってるかってのは、何でわかるんだろう。隣に住んでるとか、家の周りに立ってトイレを流す音を聞いてるんだろうか。オナニーの回数はどうやって調べるんだろうか。うちのゴミを漁ってるとか・・・。よし、これからはトイレでして、証拠は流してしまおう。そうだ、声が漏れないように気をつけないと。
トイレも盗撮されてたら・・・俺はどうしたらいいんだろうか。
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