俺様は金しかない。だがしかし、金で全ては買える

ウメとモモ

ダンジョン探索準備編

第1話 俺様は金しかない

~ブロンズSIDE~





俺様の名前はブロンズ。アメリカ産まれの日本育ちだ。


親は世界有数の大金持ちで小さい頃から甘やかされて育ってきた末っ子だ。

小さい頃から欲しいとねだった物は何でも買ってもらえて怒られた事も1度もない。


上には兄と姉が二人ずついるが俺様以外の家族はアメリカに住んでいて日本に1人で住んでいる。


1人で住んでいるというのも語弊はあるな。俺様の家は1人で住んでるにも関わらずタワマンの最上階のとても広い家なんだが、住み込みで1人雇っているメイドがいたんだった。



そのメイドは俺と同い年の、今年で16歳になり名前は撫子。



コイツはスタンピードの影響で家族を無くし家も友達も何もかも無くした子供だった。そんな子供をたまたま見つけた俺は10才の誕生日に親に「欲しい!」とねだり雇うという形式で小さい頃から俺の世話をさせている。

世話もさせているが俺の【ストレス発散】としてもおおいに役立っているオモチャでもある。



今日は高校の入学式当日だが朝からこの撫子というメイドは俺の事を何も分かっていない。



「ふうー………DDCの株はこれからだな。このぐらいで朝は辞めとくか。」



俺様は朝早く起きて投資やお金を稼ぐためにパソコンにかじりついてるがそろそろ登校する時間だと思い朝食を食べるためにキッチンへと向かったが…




俺様

「………おい!なんだこの朝食は!!」



テーブルの上には大人数で食べる量の料理がある。



メイド

「はい?ブロンズ様が朝はおにぎりが良いというので準備しましたが?」


俺様

「バカか!こんな物を朝から食えるか!朝はパンに決まってるだろうが!!


そしてなんだこの肉の山は!!お前は阿呆か!?」


メイド

「え?いや、昨日ブロンズ様が【100種類のおにぎり】を準備しろと命令されたんですよ?

それに【沢山の肉料理も】と言われたので準備したんですが………」



そんな事を昨晩言った覚えはあるがそんなのは俺様には知ったことではない。


俺様

「黙れ!俺様がいらないと言ったらもういらん!


今日は入学式だからもう出るが、この料理を何とかしておけ!捨てるなんて勿体ない真似はするなよ?」



そう撫子に言い残すと俺様はキッチンに陳列されている簡単に食事を済ませることの出来るゼリータイプの袋を1つ取り直ぐに飲み干した。



俺様

「ごくごく………ああ、後な?学校では俺様に一切話し掛けるな!お前みたいな奴と知り合いだと思われたら困ってしまうからな??


ははは!」



朝から人をオモチャにして遊ぶのは楽しいなあ?あの女は孤児が集まる施設から引き上げたメイドだが、俺様のメイドになってからはこうやってオモチャにして遊んでいる。



辞めたくても往く宛の無い撫子はこうやって俺のオモチャとして日々を過ごしているんだ。


持っている者と持っていない者ではここまで差が出てしまうなんて可哀想だよなあ?




俺様には昔から金持ちだから他人から施しを受けるなんて事は1度もないから分からないがどんな気持ちか今度聞いてみるか?やはり辞めておこう。俺様が惨めな気持ちになってしまうからな?



あんなに食料があれば誰もが驚くだろうなあ?良い気味だ。




俺様は良い気分で鼻唄交じりで学校へと向かうのだった。


本当であればまだ時間はあるが、俺様の家は世界有数の金持ちで俺様も入学する高校に首席で合格している。なので新入生代表の挨拶をしなくてはならないので早目に家を出たのだった。




少し早目に出過ぎた気はするがまぁ良いだろう。高校生活も楽しみだ。




中学校では俺様の兵隊はあまり出来なかったがこれから通う【ダンジョン探索者専門高等学校】では強い奴等がいるだろうからな?



金の力で俺様に跪かせてやるぞ!!ははは!






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~撫子SIDE~



私は撫子。世界有数のお金持ちのご子息様に雇われているメイドです。



小さい頃に私の住んでる場所はダンジョンから溢れ出たモンスターの襲撃に襲われてしまい



家も


家族も



友達も



私以外の全てが飲み込まれてしまいました。



私が助かったのは所持している【スキル】がとても強力な物で私だけが助かることが出来ました。


そのスキルは【女神の守り】



私だけが何もかも被害を受けない最強の防御力を誇るスキルです。



本当なら私もあの時死にたかった。



でも私のパパとママが



「撫子!お前は俺達の分まで生きてくれ!」



「撫子ちゃん?1人になっても負けちゃダメよ?ママもパパも天国で見守ってるからね?」



イヤだ。いかないで。置いてくならアタシも連れてって。



本心から思ってたのに私は死ぬのが怖くてスキルを発動してしまいました。



全てが終わった時には私の周りは何もなくなってしまいました。



文字通り【何も無い】のです。


その理由は被害が大きくなる前に国が爆弾を落として殲滅したのです。



万を超えるモンスターが一瞬でその爆弾で塵になってしまいました。


そしてモンスター以外にも町の建物も全て塵に変わってしまいました。



思い出のあった公園も



家族で行ったレストランも



通ってる小学校も



全て塵になったのです。





その後は国から派遣された兵隊さんが私を保護してくれました。


本当であれば私は国に保護され兵士として【洗脳】される筈でした。


それは私の持つスキルが強すぎるから。


それも持っているスキルは1つじゃなくて複数のスキルを持ってたのです。



【女神の守り】


【戦神の矛】


【癒しの祈り】


【隠れ簑】


【収納空間】


【悟り】



この6つのスキルを持つ私は昔から神童と言われ将来は英雄になると言われてました。



パパが最後私のスキルを【隠れ簑】の能力で他の人からバレないようにしておけと言われたのも今なら理解できます。



この世界は【汚い人】が多すぎるのです。



誰かを蹴落としてのしあがろうとする者。



簡単に嘘をついて騙そうとする者。


笑顔で接していても心の中では酷いことを思い平然としている者。


そしてこの国の役人達は自分達の利益しか考えていません。



それが分かってしまうのは私の持つスキルの【悟り】のおかげです。


このスキルは相手の思ってることが分かる能力で小さい頃の私はスキルも思うように使えず、ずっと人の心が読めてしまいました。



心が読めてしまう私は人の醜さ、汚さ、イヤらしさを感じ友達も1人もいません。



中にはイイ人もいましたし、お世話になった施設の方達は皆さんがとても素敵な心の持ち主でした。



ですがそんな施設の方達にも悩みはありました。



それは【お金】です。施設を維持するためのお金が無かったのです。


理由は国が孤児を育てる施設があるならその孤児を【兵士】にするために育てた方が良いと結論付けたのです。なので孤児の受け入れる施設は国から至急されるお金が1円も貰えなくなり、私がいた施設以外は【全て無くなって】しまったのです


世界にダンジョンが出来て100年。国が兵力増強したいというのは分かります。


モンスター達がダンジョンから溢れて消えてしまった町も1つや2つじゃありません。



ですが孤児の中には私のようにスキルを持ってる訳でもなく、戦うのも嫌いな子だっているのです。




そんな子達を無理やり兵士にするこの国に幻滅してしまうのは当然の事だと思います。



小さい頃の私は必死に考えました。どうやって施設を守れば良いのかを。



その時私は今の雇い主様であるブロンズ様と出会ったのです。



それは神の思し召しだったと思います。




見るからにお金持ちそうな子供でした。



強そうな大人達に守られ周りを【見下した様に見える笑顔】を作って歩くブロンズ様。



「なんだこの小汚ない奴等は!!ははは!!


こんな乞食同然の奴等が日本にいるなんて笑えるなあ!!!コレで飯でも食えよ貧乏人共!!」



ゆっくりと歩きながら人を見下した物言いで【平等に拾えるように】お金をばら蒔くブロンズ様。



「おい!なんでこの場所には俺様が遊べるような公園が無いんだ!!即刻作れ!!

………ああ?この辺りは汚い子供が多いなあ?俺様がいない時は特別に遊んでも良いぞお?

はははー!!」



「んー………本が読みたくなってきた。おい!ココに図書館を作れ!!時々読みに来るから急いで作るんだ!!」



ワガママを言って【公園】や【図書館】を作らせるブロンズ様。




そんなブロンズ様にお願いしたのです。



「お願い!助けて!!」




見ず知らずの子供です。ブロンズ様の近くの大人達は私を警戒して前に立ちはだかりますが



ブロンズ様

「良い!お前らどけろ!


………なんだお前は?随分とガリガリだなあ?」



ブロンズ様はその大人達を退けて私の目の前まで来てくださいました。



ブロンズ様が周りには私のような汚ならしくみすぼらしい子供をバカにしたような、見下したような顔をしてるように見えたでしょう。


でも本当は違うのです。ブロンズ様は只の1度も【誰も見下した事】が無いのです。


不思議ですよね。言葉では罵っているのに本心では微塵も思ってない。ブロンズ様は自分の心も騙してるんでしょう。



この時私は【悟り】の能力がどれ程素晴らしいと思ったか分かりません。




ブロンズ様はどれだけ酷い言い方をしてても心の中では【心配】と【他者の幸せを願う】気持ちしかありませんでした。



なぜ人を見下そうとしてるのか。


自分の心も騙してそう思おうとしてるのか。



それはブロンズ様の生い立ちに関係があるのかも知れません。



ブロンズ様は御当主様と愛人の間に出来た子だったのです。


そしてブロンズ様を産んだお母様はブロンズ様を産んで直ぐに亡くなってしまってます。


御当主様より多額のお金を貰ってるブロンズ様ですが産まれてからずっと1人ぼっちだったのです。



ブロンズ様を守る大人達もお金で雇われたボディーガードでしかありません。



そんなブロンズ様ですが自分がどれ程幸せな環境で生きてるのかを知っています。



何人分かの年収を月単位で送られてくるのです。それは普通に考えれば幸せなことです。





ですが





どれ程幸せなのか知っているブロンズ様ですが











【どれ程不幸】なのかは分かっていないのです。






なので私は願いました。




「施設の皆を助けて!」



ブロンズ様

「具体的な話が見えんな。詳しく説明しろ。」




強くありたいのでしょう。



周りと自分は違うと思い、弱さを認めるのが、寂しいという気持ちが嫌だったのでしょう。



産まれてから誰にも弱みを見せたこと無いブロンズ様。



アメリカ人と日本人のハーフなので同い年の子達も小さい頃から一歩引いて接していました。



友達も家族もいません。頼れる大人も。



ブロンズ様は【お金】しかないのです。




なので私は決めたんです。




ブロンズ様

「………ふむ。お前の大事な場所を守るのは俺様には容易いがそれで?お前は俺に何をしてくれるんだ?」



この時ブロンズ様は無償でも良いと思ってくれてました。というかこの時の私に何も期待などしていません。ただ言ってみただけです。


………ふむ。と考えてたのは私に何をして貰おうか考えてたのではありません。


私にどうやって【感謝されずに助けるか】を考えていたのです。




それから私は少し黙ってるとブロンズ様は自分を騙した人を小馬鹿にしたような笑い声を上げました。



ブロンズ様

「ははは!何も出来ないんだろう!?まぁ良い!!お前の勇気に免じてこんか…『…ます。』


…なに?もう一度言ってみろ?」



私をバカにして見下した物言いをして悔しい思いをさせようとしたブロンズ様ですがそうはいきません。



「私が一生貴方の生活を面倒見ます!!」



貴方のような素晴らしい人を【不幸】のままなんかに絶対させません。


【1人ぼっち】だって思わせません。



この時ブロンズ様はメイドとして雇って欲しいんだ。という解釈をしましたが強ち間違ってはいないのでそのままブロンズ様のメイドとして働いてます。







「………こんな量のおにぎりや肉料理を準備させたのも施設の子の為なんだから本当に素敵な方よね?」




今日は高校の入学式と同時に小学校や中学校の入学式でもある。




『捨てるなんて勿体ない真似はするなよ?』





あの時ブロンズ様は



【施設の子供達もお祝いの日だからそんな時位は美味しい物を食べさせてやってくれ。】




と思ってました。



私がいた施設はブロンズ様のおかげで食べる物も遊ぶ物も勉強だってキチンと出来てます。


ガリガリだと言った小さかった頃は


ブロンズ様

「ガリガリな女を苛めても面白くないからなあ?沢山食べて俺のオモチャになれよお?ははは!!」



今までブロンズ様に酷い仕打ちをされた記憶など無いんですけどね?逆に苛めて欲しいです。






前に感謝を伝えた時は



ブロンズ様

「ああ!俺様は約束は破らん!お前との契約だから仕方なくしてるだけだ!」



なんて言うから笑ってしまいました。



「収納。………私も遅刻しないように学校にいかなくちゃ!」



学校では話し掛けるなと言われましたがあれは私の事を思って言ってくれてるので嫌な気持ちは微塵もありません。



今では悟りの能力のオンとオフは切り替えられますがブロンズ様と一緒の時は1度もオフにしたことはないのです。



なんてたってブロンズ様の心の声は私の癒しなのですから。



今後も一生お側にいますね。




ブロンズ様?






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