死にたがり不幸自慢のパパゲーノ

あきすけ。

第1話

自傷した左手首携えて、医者からもらった薬をODしないよう我慢しながらラムネのように齧って、夜のベランダから月を眺めてた。


今日こそ死のう。


何度思ったことだろう。結局、実行できないまま今日まで生きているんだけれども。枠が息苦しいけれど、枠にハマっていないと落ち着かない。


ヒンヤリしたベランダからの冷えは、世の中の冷たさみたいだ。じんわりじんわり冷やしてくる。世間一般的に言えば、私はオカシくて、出来損ないで、欠陥品に分類されるらしい。


ピロリン、と携帯が鳴る。いつものチャットメンバーがどうやら集まってきたようだ。



―花緑青(はなろくしょう) さんが入室しました


花緑青:こんばんは


「花緑青さんが今日1番か」

すぐに入室して、返事を打つ。


―イヌサフラン さんが入室しました


イヌサフラン:花緑青さん、こんばんは

花緑青:イヌサフランさん、こんばんは。今日はこちらは雨が降っておりますよ。静かでとても過ごしやすいです。

イヌサフラン:花緑青さんが穏やかな日になれるなら、よかったです


―子猫 さんが入室しました


子猫:みなさんこんばんはー!こっちは月が出てますよ。蒸し暑いですね。

イヌサフラン:子猫さん、こんばんは。こっちも月見えますよ。暑いですね

花緑青:子猫さん、こんばんは。やはり場所によっても違いますねぇ。



花緑青さん、多分男性で自分より年上。子猫さん、多分女性で同じ年くらい。私、HNイヌサフラン。女性。

みんなを詳しくは知らない。それでもこの場所は心地よかった。


花緑青:今日はもう誰もいらっしゃらないですかね。


花緑青さんの言葉に時計を見れば、0時。他にも2人固定メンバーはいるのだが、いつも0時までくらいにはくるので、そう問いかけたのだろう。


イヌサフラン:あー、もう0時ですか

子猫:3人だけって久々だね。朝まで話せたら嬉しいな。

イヌサフラン:もちろんですよ

花緑青:喜んで。



こうして朝までみんなと話すのが、私の日課だった。

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