よくある逃走劇

ケタ陀羅

第1話 序章

いつから、何から逃げている

酸欠で記憶障害でも起こしているのか

息を切らしながら回らない頭で考える

なんだか視界が悪くて聴くことに集中すれば、デタラメでも足の動きだけは止めてはいけないとすぐにわかった


「走れ!速く!」

「なんで私がこんな目に」

「俺に任せて先に行け!」


死亡フラグみたいなことばかり言って、大丈夫か?

なんて、俺も案外余裕じゃないか

やはり自分一人ではないという安心感は大きい


人間というのは不思議なもので、行列を見ると並びたくなるものだ

他人に流されるなんて

と普段なら嘲笑しているところだが、そいつのおかげで生き延びているのだ

ひとまず今は感謝しておこう

数十人程の声と足音を聞きながら思う

多いな

これだけの人数がいればしばらくは大丈夫なんじゃないか?

自分がどこにいるのかもわからないが、余裕が出てきた


だがしかし、追手の姿ぐらい知りたいものだ

なにか情報はないものだろうか

おい、待ってくれよ

こんな時だが学生時代のような気軽さで、目の前の男の肩を叩いた


赤が跳ねてまた視界を狭めた

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