暴令嬢(あばれいじょう)戦士 レイジョーシスターズ
藤ともみ
暴令嬢戦士 レイジョールージュ登場!!
第1話(1) 運命の出会い!?生徒会に近づいて天下を取れ!
『清く正しく美しく。常に品位を保ち、慎ましく淑やかに』
この言葉を校是とする聖マリアンナ学園は、名家の子女が集う全寮制の名門女子校である。
そして私、黄崎アリサはこの聖マリアンナ学園の新入生だ。
しかし、私の家は名家というわけではない。入学試験でトップの成績を出して合格したことで、特待生として入学することになったのだ。やっぱり私って天才ね!
名家のお嬢様たちの中でやっていくのは大変だろうって母は心配したけど、先生も周りの生徒もお上品で穏やかそうだし、心配することは無さそうだ。
聖マリアンナ学園に入学した私の次の夢は、生徒会所属のお姉様と出会って、姉妹関係になり、富と権力を手に入れること!
学園の生徒会、通称『フルール・ド・リス』の上級生と姉妹関係が結べれば、ゆくゆくは自分も生徒会入りし、政府を牛耳る力を手にすることができるのだ。
こんなにかわいくて、頭もいい私のこと、入学式で新入生代表の挨拶もやったし、上級生の間で噂になっていてもおかしくないハズ。『フルール・ド・リス』の誰かが声をかけてくれないかな~……なんて考えながら歩いていたら、不意に曲がり角から現れた生徒とぶつかってしまった。
「痛っ! ごめんなさい、大丈夫ですか!?」
私が慌てて謝ると相手の生徒がビクッと体を震わせた。
「こちらこそ申し訳ありません……!」
そして流れるように地面に手と頭をついた。
「土下座!? ちょっとやめてくださいよ、私だって悪いんですから……!」
産まれてはじめて土下座されたけど、正直めちゃくちゃ困る。何とか顔をあげてもらった。
相手の生徒は、前髪が伸びすぎて表情が見えづらく、腰まで伸びた黒髪が幽霊みたいでこっちまで陰気になりそう……。
「誠に申し訳ございませんでした……」
「声小さっ!?」
マリアンナの生徒とは思えないおどおどした態度に、なんだかちょっとイライラしてきた。
タイを見ると2年生の紺色……ということは先輩!? なんで1年生相手にこんなにビクビクしてるのよ。
「何をしているのです、サンドル」
突如、凛と響いた声に、私も土下座先輩も驚いて振り返った。
その人は滑らかな褐色の肌をもち、艶やかな長い黒髪をひとつの三つ編みにまとめた、眼鏡をかけた美しい人だった。タイを見るに、2年生のようだ。
しかしそれよりも、胸元に光るものを見つけて、私はハッとした。フルール・ド・リスの形をした、銀色のバッジが輝いている。この人、生徒会の人なんだ……!
「早く下がりなさい。私の視界に入らないように」
「は、はい。」
土下座先輩は逃げるようにその場を去ってしまった。眼鏡の先輩の方は呆れたようにため息をつくと、私の方にくるりと振り返って、にっこりと微笑んだ。
「大丈夫ですか? 紅色のタイ……あなた、1年生ですね」
「いえ、私は大丈夫です。あの、さっきの先輩は……」
「ああ、今のは気にしないほうが良くてよ。あの人、サンドルですもの」
サンドルって何だろ。名前だとは思えない。
でも正直、土下座先輩のことはどうでもよかった。この推定生徒会メンバーの先輩とお近づきになりたい。
「あら、タイが曲がっていましてよ、失礼」
フルール・ド・リスのその人は、長い指を私のタイに伸ばし、タイを直してくださった。桜色の爪は綺麗に切りそろえられている。漆黒の髪からは、ふわり、といい匂いがする。
「では、私はこれで」
「あの、もしよろしければお名前とクラスを教えていただけませんか! あとでお礼に伺います!」
「……お礼は不要ですが、私は2年B組の、黒百合
この人が生徒会副会長の、黒百合円香さん……!
噂には聞いていた。黒百合様は、生徒会長、
入学式の日、
もちろん式に参加していたのだけど、私たち1年生の列からは遥かに遠いバルコニーにいたので、豆粒ほどにしか見えなかったのだ。いつか私もあそこに登ってやるんだと、新入生代表挨拶でやる気が出たのを思い出す。
黒百合様は優美な笑みと仄かな甘い香りを残して、去っていった。私はその後ろ姿が見えなくなるまでその場を動けなかった。
見つけた、私のお姉様……!! 私のキャリア形成の第一歩だわ!!
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