あなたとつながるメリーさん

歌川ピロシキ

あたし、メリーさん

 始まりは不審なLINEメッセージだった。


 見知らぬアカウントから「こんにちは」と満面の笑みを浮かべた美少女のイラストのスタンプ。

 間髪入れずにメッセージが送られてくる。


「☆.。.:*・°あたしメリーさん.:*・°☆

⚘♡゚・。いま札幌にいるの⚘♡゚・。」


 なんだこりゃ。絶対誰かのイタズラだろう。

 というか、なぜ札幌?


 無視してスマホを投げ出すと、またメッセージの着信音。


「happy_merry_mary〇〇〇〇〇

フォローよろしく☆」


 ご丁寧にQRコードまで送られてきている。インスタしているメリーさんって何なんだよ。

 絶対に誰かが俺を都市伝説にかこつけておちょくってやがる。


 無性にムカついて、ついインスタを開いてしまってからはたと気付いた。

 これ、よくある詐欺メッセージだったらどうしよう? リンク先に何か仕込まれててアカウント乗っ取られた、なんて話は珍しくもないのに。


 幸いなことにこの自称メリーさんとやらはそんな手の込んだことをするタイプではなかったらしく、時計台をバックにポーズをキメたギャルらしき写真が表示された。

 マスクで顔が半分隠れているが、大きな瞳とサラサラの栗色の髪が印象的な、とても可愛らしい子だ。


「札幌だよ☆チーズケーキ美味しすぎ.˚⊹ ⁺‧( *´꒳`*)‧⁺ ⊹˚.

#女子旅 #札幌 #さっぽろ #時計台 #一人旅 #北海道 」


 他にも特に商品のアピールや出会い系サイトへの導線らしきものもないし、何がしたいのかわからない。

 俺は訳が分からないながらも、つい反射的に「いいね」を押して画面を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る