神様コンプリート

花色 木綿

プロローグ

はじまり、はじまり。

 視界いっぱいにターコイズブルーが広がり、颯爽とした風がわたしの頬を優しくなでる。

 すごい、すごーいっ!!

 だってわたし、今、空を飛んでるんだよね……って、感動してる場合じゃなかった! 自分の体なのに、うまくコントロールできないんだもん。これじゃあ“飛んでいる”じゃなくて、“飛ばされている”だよ。

 どうしよう……! なんて思っている間にも、また強く吹いた風のせいで体が流されちゃう。あの人に追い付くどころか遠ざかる一方だ。

 だけど。

水引みずひき——っ!」

「あっ、あおいくんっ……!」

 葵くんが、わたしに向かって手を伸ばしてくれる。わたしも葵くんに自分のそれを差し出し——、葵くんは、がしりとわたしの左手をつかみ取った。

「水引、しっかりしろよ! オレは神様が見えないんだぞ」

 お前が案内してくれないと、と葵くんはあきれた調子で続ける。葵くんの頭の中は、やっぱり神様のことでいっぱいだ。

 けれど葵くんの言う通りだ。わたしは軽く頭を振ると前を見すえ——、わたしたちの前を飛んでいる神様を追いかける。

 絶対に捕まえなくちゃ。葵くんのため、皇神社のため、それから——……、そう、わたし自身のためにもね。

「水引、早く追いかけるぞ!」

「うん、行こう!」

 わたしは葵くんに神様が飛んでいる方向を伝えると、彼の手に引かれる形で飛び出した。

 そう、全ての始まりは、あの日。遡ること半月ほど前のことだ——……。

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