【短編】チカと私とユーマ君
イモタロー
チカと私とユーマ君
「ねえ。例のユーマ君とはどうなった?」
「ひととおり楽しんだから別れる」
「はやっ。1ヶ月じゃん」
「やっぱ彼氏の方がいいってわかったし」
「彼氏いるのに他の男に手を出すとかインランだよね」
「うっせ」
親友のチカが私をジロッとにらんだ。二股かけるのはインランでしょ。
「他の男が気になったのに付き合い続ける方がワタシ的には不誠実だし」
「わかんないなー。いつもそれ言ってるけど」
「わかんなくてもいい。彼氏に黙っててくれれば」
「言わないよ。バレんなよ?」
「一生バレないし。尽くしてるもん」
ホントにバレなさそうなとこがチカのスゴいとこだ。
「ユーマ君のどこがダメだったの?」
「ゴム持ってない時にヤろうとした。真剣に想ってくれてない」
「それはヤダね」
「持ち歩けよ。ホントに好きだったのに裏切られた。あと学校でナメさせるし」
「ナメたの?」
「ちょっとナメた。イカなかったけど」
「シコリすぎだね」
「童貞すぎ。私が好きならイケよ」
童貞ユーマ君はヤラせてももらえず、イカせてももらえずに、彼氏持ちの女に告られてフラれるのか。かわいそ。
「彼氏が学校別でよかったね」
「よくないよ。ここ落ちるとかバカすぎ」
「それで頭いいユーマ君に寄り道しちゃったか」
「うん。ユーマ、勉強教えてくれたしね。また教えてくれないかな」
「ムリでしょ」
「ムリか。私もあんたもバカだし。他の男見つけるか」
親友のクズ発言にちょっと引いた。
◆
放課後、自転車で家に向かっていると歩きのユーマ君がいた。スルーしようとしたが話しかけられた。
「佐藤さん」
「ユーマ君じゃん。家この辺だっけ」
「すぐそこだけど。佐藤さんってチカさんと仲良かったよね」
「親友だよ。チカとはうまくいってる?」
「いや、無視されてて」
ユーマ君は落ち込んでいた。ちょっと話を聞いてみるか。おもしろそうだし。
「ユーマ君ち行こうか」
「は?」
「いいから!」
◆
正直、私はユーマ君に同情していた。
告られて付き合ったのに女は彼氏と別れるつもりがない。じゃあエロいことをさせてもらえるかといえば中途半端なとこで寸止め。それでいきなり無視されるとか普通はキレるよ。
でもユーマ君はいい人だった。
「学校では元々話しかけれないし、連絡もブロックされてるし。無視されてるけど、俺たち終わった感じだよね?」
「たぶん」
ユーマ君は黙り込む。ずっと沈黙が続く。今やっと彼の恋が終わっているのだろう。
チカめ。さすがにちゃんとフッてあげなよ。クズすぎるだろ。
「一言ほしかったなぁ」
「まだ好き?」
「うん。ちゃんと付き合いたかった」
めっちゃつらそう。興奮してきた。
ちなみに私は軽いのでヤラせてあげるつもりで家にきた。クズな親友の尻ぬぐいも大切だよね。
ユーマ君の手を握って微笑みかける。しっかりと目を見つめる。間が大事だ。失恋したばかりの童貞を食うのは初めてなので、いろいろと妄想がはかどる。
彼の手を私の胸に当てさせた。ギュッと押し付けてみる。ゴクリと生唾を飲むのが聞こえた。
「つらいよね。彼氏いるから付き合えないけど、なぐさめてあげたいな」
「いや、大丈夫」
あれ?
「佐藤さんはスゴい可愛いし、一生後悔すると思うんだけど、大丈夫」
「マジ?」
「うん」
「まだ胸さわってるけど」
「ごめん」
5秒くらい揉んでからユーマ君の手は離れていった。童貞かよ。
「マジで一生後悔する自信あるけど、大丈夫だから」
「すでに後悔してんじゃん」
「佐藤さんの彼氏かわいそうじゃん。チカさんの彼氏にもそう思えって話だけど」
チカはいいよ。クズだし。
「一生後悔するんだ」
「うん」
ユーマ君とは、きっともう関わらないだろう。チカとともに縁は切れたのだ。
最後にもう一度サービスしてあげよう。と彼の手を胸にもう一度持ってこようとしたが、ピクリとも動かない。
童貞のくせになまいきだ。
膝の上のユーマ君の右手に私は顔を近付けた。人差し指をナメてあげる。上目遣いでしっかりと目を見つめる。間が大事だ。
股間を目の前にして囁いた。
「一生後悔してね」
「うん」
「あと、私たちを後悔させるくらいスゴい人になってね」
「うん」
ヨダレがにおったらイヤだからユーマ君の人差し指を両手でぬぐいまくってから立ち上がる。
「帰る」
「うん。今日はありがとう」
「じゃあね」
◆
一生後悔するって。告白みたいじゃん。
自転車で家に向かいながら嘆く。
「彼氏ほしい」
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