言葉って奥深い。

音雪香林(旧名:雪の香り。)

第10話 言葉の持つ力、可能性は無限大。

こんにちは。

雪の香り。です。


タイトルを見て『どこにでもいる普通の作家志望の女の日記』を読んでいる方は「第38話 読書体験は『作者』と『読者』の二人三脚」(https://kakuyomu.jp/works/16817139558538568900/episodes/16817330660741083501)で言ってたことと真逆じゃねーか!

と思うかもしれません。


たしかに私は言葉の伝達能力の「正確性」には限界があると申しました。

作者がどんなに詳細に、ゆたかに表現していても「体験を完璧に共有するのは無理」だとも言いました。


その言葉をひるがえすつもりもありません。

ですが「わかった気」になるなというのは「実際の出来事、人物」を描いた「ノンフィクション」やそれに近い話の場合です。


むしろ「架空の世界、架空の人物」を描いたフィクションは、どんどん感情移入して「わかった気」になった方が面白いと思います。


たとえば物語の中で、家族団らんの食事シーンがあったとします。

読んでいてとても幸せそうで料理もおいしそうです。


その「幸せそう」「おいしそう」という印象は、もちろん「作者の描写力」がすぐれているのでしょうが、それだけでなく「読者の『家族といると幸せ』という体験、記憶」や「料理を食べておいしかった感覚」が文章の情報をさらに「拡大」しているのだと私は思います。


でも幸せを実感したことがなくても、おいしいを体験したことがない方でも「想像」ができる。実体験や記憶があり「拡大」されている読者ほど豊かではないけれど「幸せな気分」を味わったり「おいしいんだろうな」と思うことはできる。


架空の世界、人物の紡ぐ「物語」は「想像」だけでいいんです。その「想像」から「正解」にたどり着かなくてもいいんです。むしろ「正解」なんてないんです。

その人が「そう感じる」のならそれでいいのです。


言葉にはそれを受け取る人によって「変わってくる」のです。

個人個人で人生経験も感受性も違うから。

だから「同じ言葉を聞いていても、または読んでいても、違う受け取り方をする」のです。


だから世の中にたくさん「誤解」や「すれ違い」が発生するのだと思います(少なくとも私はそう理解しています)。


でも、だからこそ架空の世界や人物を扱った「フィクション」は言葉の持つ力が最大限に生かされ「恋をしたことがなくても恋を経験、実感できる」し「友達がいなくても友情にあつくなれる」という「想像の翼を広げ、なんでも疑似体験できる」すばらしい物語になりえるのです。


まあこの言葉の「余白」ともいうべきものを文章を読んでいるうちに自分で埋めるというのは、良い部分と悪い部分があるのですが。


たとえば「苺」を例に出して「農家の大変さ」を語っているのに、「苺」という単語が文中に多用されているからと勝手に「苺はおいしい」という発信者がぜんぜん意図していないメッセージまで余計に受け取ったりする方もいたりします。


勝手に誤解して勝手にわかった気になっているわけですが、こういった読者がいたとしても言葉は「発した瞬間から受け取った方のもの」であり、たとえ発信者が「そうじゃないんだよな(わかりやすい例として使っただけで「苺そのもの」についてはみじんも語ってないのにな)」と思ったとしても、受け取った方が「そう」思ったのならもうその方にとっては「そういうもの」なのです。


文章を発信した側は「あなたはそう受けとったんですね」と受け入れるしかありません。

ちゃんと「わかってもらおう」とするのは疲れるし、なにより「完璧に理解してもらう」のは言葉の性質上無理ですから、そういう方とは「別の星で生きていきましょう」とそっと離れるのが得策です。


言葉とは人間の生み出した道具ですから、人間が不完全な以上不完全なものですが「不完全だからこそ可能性が膨大にある」のだと私は勝手に思っています。


言葉に「正確な伝達能力」があったら、かえって「想像の翼」はもがれ、個人個人で違う体験ができる物語も「みんな同じ」になってしまいます。


たとえばさっき「恋をしたことがなくても恋を経験、実感できる」と書きましたが、不完全な言葉だからこそ「自分だけの恋人」になりえるのに、正確な伝達能力がある言葉の場合「みんなと共通の恋人」になってしまいます。


そんなのつまらないでしょう。


そもそも言葉が不完全だからこそ、ひとことで説明できないからこそ、ストーリーで実感させる「物語」も生まれたのでしょうし。


だから、言葉は「限界がある」と同時に「可能性も無限大にある」というとても魅力的なものなのです。


と、少なくとも私は「個人的に」こう思っています。


以上です。

ここまで読んで下さった方ありがとうございます。

あなたに幸運が訪れますように。




おわり

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