Ch. 07 ストリングスアレンジ

 前回ストリングスの話が出たので、ストリングスアレンジについても触れておきましょうか。

 ストリングスアレンジって専門知識が必要な分野で、素人アレンジャーには非常にハードルが高いです。

 実際プロの現場でも、ストリングスアレンジは専門家に依頼してたりしますしね。


 ただし、あくまでポップスやロックのジャンル限定でやる分には素人にもそれっぽくできなくはないと思います。

 こうしたジャンルではクラシックほど禁則がないと言えますから。


 とは言え、それなりに魅力的なストリングスアレンジを作るには、最低限気をつけた方が良い事柄もいくつかあります。


 ストリングスアレンジの基本的なパターンがいくつかあります。


 ひとつ目はユニゾン。

 前に触れたと思いますが、ポップスではコントラバスを除いた1stバイオリン、2ndバイオリン、ビオラ、チェロの4種類で構成されるのが一般的です。

 それぞれの本数の組み合わせでまた音の厚みや音色に違いが出ますが、ここでは取り敢えず触れずに話を進めます


 この4つのパートが同時に同じフレーズを弾くのがユニゾン。

 通常はそれぞれの音域に分けてオクターブ違いでユニゾンさせますが、バイオリンの各パート同士やビオラとチェロは同じ音域でユニゾンさせることもあり、ケースバイケースです。

 そこは狙う音色によって決めるといいかと思います。言い換えると、欲しい周波数帯によって使い分けるということになるでしょうか。

 ユニゾンはどちらかというと白玉よりオブリガード(メインメロディに対するカウンターメロディと言ったらいいでしょうか)とか、動きのあるフレーズに使うのが効果的かと思います。


 ストリングスアレンジのもう一つのパターンは、対位法的な動かし方です。

 クラシック音楽の本格的な対位法は非常に細かなルールがあるので素人には真似できませんが、ポップス(広くロックも含む)で用いる場合には、概ね心がけておくと効果的に聞こえる音の動かし方があります。


 極めてざっくりしたやり方ですが、各パートのフレーズができるだけ同じ動きにならないように動かすことです。

 例を挙げると、バイオリンのフレーズが音程的に上昇して行くフレーズを奏でるなら、チェロは下降するフレーズを、ビオラはあまり動かない等々。

 もう少し複雑にすると、下降→上昇→上昇のパートと、上昇→平坦→下降のパート、平坦→下降→平坦のパートの組み合わせとか。


 こうやって組み合わせて行くと、かなりのバリエーションの可能性があるわけですが、美しく響く流れを作るのがセンスの見せどころですね。


 ただし人の耳はトップノートの動きを捉えやすいので印象も強く受ける傾向があります。

 なのでトップノートの動きがメロディとの兼ね合いで魅力的になるようなフレージングやボイシングを心がけると、魅力的なフレーズになりやすいかと思います。

 後述する外声を主眼に置いた鳴らし方にも近い考え方ですが。


 それと、できるだけ穏やかな音程変化で音をつなげることとかね。

 特に白玉の場合とか、コードチェンジするときに共通の音程はオクターブで飛んだりしないように、そのままの音程を保って持続させるように心がけます。

 他の音程変化もできるだけ大きく飛ばないように心がけます。


 これってキーボード弾きの人だったら自然と身につけているボイシングなんですけどね。(って自然とっていうのは言い過ぎか。トレーニングして身につけますね)


 またコードの構成音だけでフレーズを作るのではなく、場合によってはフレーズの中にテンションノートを織り交ぜるのも、楽曲の表情を豊かに彩るでしょう。

 その場合、アボイドノート(回避すべき音程)には気をつけましょう。


 詳しく説明してると、とてもじゃないですがここで説明しきれないし、多分わたしじゃ理解できるような説明ができないので省きます。

 ものすごくざっくり言うと、短9度のインターバルを避けましょうねっていう話なのですが、意味が分かりませんよね。


 該当のアボイドノートを半音下げてみたり上げてみたりすると、きれいに響くかもしれませんよって言うお話なのですが。


 まあそれくらいのアレンジができるようになったら、きっと自分で調べて学習することができるでしょう。


 んで、この対位法っぽい音の動かし方とユニゾンの併せ技といった使い方もできますよ。


 対位法っぽい動き方のフレーズは流麗な感じになりやすいですし、ユニゾンは力強いので、ここぞと言う出しどころでガツンとユニゾンで聴かせるとか、部分部分で変えてみるのもひとつ。


 あるいは、1stと2ndバイオリンの組み合わせと、ビオラとチェロの組み合わせをそれぞれユニゾンさせて、2つのオブリガードを対位法っぽく動かして歌わせるのもいいでしょう。

 これは2つのやり方を組み合わせた応用編ですね。


 こういった応用方法はいろいろあります。

 ベースとトップノートを外声と言いますが、外声の響き方に主眼を置いたアレンジだとか、ポップスでは使う機会は限られると思いますがメロディと伴奏、言ってみればピアノの右手と左手みたいなアレンジだとか、実に多彩なパターンを生み出せますね。


 クラシックや劇伴の音楽におけるストリングスアレンジになると、もっといろんなパターンもありますが、より専門的な知識が必要になってくるので、そう言うのは素人ミュージシャンであるわたしの範疇を超えてますので、今回含めません。今回っていうか今後も。


 なかなか素人音楽家の身では、ストリングスアレンジってハードルが高くて手が出ない、もしくはやっても聴いてて全然魅力的じゃないってなことになりがちです。


 上述の点を試しながら研鑽を積んでいくと、段々と良くなって行くんじゃないかなーって思いますよ。


 ついでに言うと、ホーンアレンジに関しても概ね同じ考え方で良いのじゃないかなと思います。


 これらの楽器は、基本打ち込みになると思うのですが、大切なのはある程度それぞれの楽器の演奏方法やフレーズの特徴について知っておくことかなと思います。


 ジャンルや楽器によって典型的なフレーズがありますが、大抵の場合はその楽器ならではの奏法と共に成り立っていますよ。


 この辺りは勉強するのもいいですが、いい音楽をたくさん聴いて、どんな場面でそんな奏法のどんなフレーズで、どんな楽器編成で演奏されるのか、心の中にストックしておくことが一番大事かなと思います。


 その辺の蓄えがないと、いかにも打ち込みですという垢抜けないサウンドになりがちです。

 もちろん、あえてそれをやるのがかっこいいケースもありますよ。

 でも大抵は分かってて、あえてやってるってのがかっこいいんですね。


 あ、それとストリングスもホーンも、音の立ち上がりや減衰のスピードをプレイヤーが意図的に変化させることができますよね。

 奏法に含まれるのですが、実際の演奏ではこの要素も意外に細かく変化しています。

 打ち込みの場合もそこは意識した方が、より良い演奏になりますから、音楽を聴くときにはそういうところもよく注意して聴きましょう。


 そうやって音楽を聴くと、名プレイヤーの名プレイヤーたる所以が分かるようになります。

 音楽的ってどういうことなのか、耳が培われて聴き分けられるようになっていきますよ。


 音楽作りにはいい耳が大事です。

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