第132話 AMパイロット:カティア

-3日後

@巨人の穴蔵 梱包センター


 あれから梱包センターに籠り、3日が過ぎようとしていた。流石に、そろそろ太陽が恋しくなってきた。相変わらず、出口の扉の向こうからは、岩グモ達が這い回る音が聞こえてくるが、それも今日までだ。

 この3日で、俺はAM-5 アルビオンとその武装の修理・メンテ済ませた。後はこれで、岩グモ達をなぎ倒して、この施設を出ればいいだけだ。


 だが、カティアに基本的な操縦方法を教えても、どうにも飲み込みが悪い。お互いに、AMをマニュアルで操縦した事が無いのだ、無理もない。……まあ、カティアの頭が弱いというのもあるだろうが。

 やはり実際に操縦桿を握り、慣れてもらうしか無いのだろう……。あとは、改造したヘカトンケイル次第か。


「じゃあ、さっそく乗ってみるか」

「待ってました! 何だかワクワクするわね!」

「よし、じゃあこれに着替えてくれ」

「……えっ、何コレ?」


 俺はカティアに、AM用のパイロットスーツ(女性用)を手渡した。これは、ここ梱包センターの中で見つけた物だ。

 AMはその戦術上、急発進や急停止、激しい機動などで、操縦者の身体に大きな加速度が全方向に掛かる。その為、特殊なパイロットスーツを用いる事で、パイロットの身体を状況に応じて締め付けて、脳への血流を維持する必要があるのだ。

 もし、パイロットスーツ無しで高機動戦をしようものなら、数秒で気を失ってしまうだろう。


「……なんか、テロンテロンしてて気持ち悪いんだけど?」

「まあそう言うな。それ、一応パイロットが脱出した時の事を考えて、防弾仕様になってるから、着てて損は無いぞ?」

「えっ、本当に!?」

「あと、ある程度の体温コントロール機能とか、筋力サポート機能も付いてる筈だぞ」

「き、着替えて来る!」

「あっ、下着は脱げよ? そういう物だからな」

「分かった!」


 カティアはスーツを抱えると、近くのコンテナの裏へと消えていった。


「そうだ、ミシェルにも渡しとくわ」

「えっ、ありがとうございます! でも、僕はAMには乗らないんじゃ……?」

「いや、今後戦闘になる時に着ておけば、ある程度は身を守ってくれる筈だ。生地も薄手だし、上から服でも着ておけば、そこまで目立たないだろうしさ」


 パイロットスーツは、俺が普段着ている強化服の元になった代物だ。そこいらの小火器の攻撃なら、余裕で防ぐ事ができる。

 ミシェルには、これまで防具の類を与えてなかったので、丁度いいだろう。これから鉄火場が待っている可能性もあるのだ。


「ちょっと、何よコレッ!?」

「なんだ、どうしたカティア!?」

「これ、凄いピッチピチなんだけど、本当にサイズ合ってるの!?」


 パイロットスーツに着替えたカティアが、声を荒げて俺に詰め寄ってきた。


「いや、合ってるぞ? それはそういう物なんだよ」

「うぅ、身体の線が気になる……」


 確かに、女性用のパイロットスーツは身体のラインが浮き出てしまう。正直言って、中々にエロい。デザイナーのセンスに脱帽する。

 カティアを見ていると、不本意だがムラムラしてくる……。最近、発散させてなかったのがマズかったかもしれない。


「ちょ、ちょっと! じろじろ見ないで!」

「ああ、悪い……」

「……やっぱり脱ぐ!」

「まあまあ、コックピットの中なら誰も見ないだろ。それにどうだ、何か感じないか?」

「えっ? ……そういえば、身体が軽いような。いや、気のせいじゃない! 何これ凄い!」


 カティアはその場で飛び跳ねたり、動き回り、スーツによる筋力サポート機能の恩恵を確かめた。


「ふふふ……これなら、ジュディ相手でも楽勝だわ!」

「そうか? ちなみに、ちゃんと鍛えておかないと、その機能はあまり効果がでないからな」

「えっ、そうなの!?」

「それに、ジュディはロゼッタにしごかれてるからな……。ちょっと筋力が上がった程度じゃ、相手にならないと思うぞ?」

「う、確かに……」

「ああ、それからトイレとか大丈夫か? しばらく行けなくなるぞ?」

「……行ってくる」


 カティアはいそいそと、トイレに向かって行った。施設機能が生きていたお陰で、そこら辺に垂れ流さなくて済むのは助かった。


「ミシェルも……ってどうした、そんな顔して?」

「ヴィクターさん……今カティアさんの事、いやらしい目で見てました……。まさか、僕に渡したのもそういう目的があるんじゃ?」

「いや、そんな事はない! 大体、お前の裸は何度も拝んでるだろうが! 今更そんな事気にするのか?」

「……確かにそうでしたね。ごめんなさい、せっかくの厚意なのに」

「いや、分かればいいんだ。せっかくだから役立ててくれよ」

「……ヴィクターさんのバカ」

「何で!?」


 扉一枚隔てて、自分達を捕食しようとする生物がいるにも関わらず、自分ではどうする事も出来ない環境が、ミシェルの普段の思考を奪っていたのだろう。

 少しは自分も一人の女として見て欲しいミシェルと、流石に性欲が溜まっても未成年は避けようとするヴィクターであった……。



   *

   *

   *



 カティアが帰ってきて、整備したAM-5 アルビオンの前にやってきた。流石に推進剤等は劣化していたので、スラスターで飛ぶ事はできないが、この機能は正直今は必要無い。

 というのも、モルデミール軍の機体がこの機能を使っている形跡が無いのだ。ハンガーにも推進剤のタンクは無かったし、充填作業をしている所も見た事が無い。


 思えば、操縦桿によるマニュアル操縦では、そこまで高度な動きは難しい。それに、推進剤の精製方法も忘れ去られ、スラスターの存在意味も知らないのかもしれない。

 とにかく現状は、歩けて武器が使えればいいのだ。


「よし、準備はできたか?」

「もちろん! そういえば、これどこから乗るの?」

「背中にハッチがある。ちょっと待ってろ」


 多くの兵器は正面での撃ち合いを考慮して、機体の前面を強化する傾向がある。AMもその例に漏れず、コックピットには背中や胴体からアクセスする物が多い。

 よく、映画やアニメでは胸から出入りするロボット兵器を見るが、あれだと被弾した時にハッチが歪んで出られなくなったり、正面の防御力が低下してしまうのではないだろうか?


 カティアと、AM用の整備ラックのキャットウォークを伝って、アルビオンの背中側へと回る。


「よし。カティア、腕時計を見てみろ。この機体のパイロットをお前で登録しておいた」

「……AM-5……これかしら?」

「それだ。ハッチ開放ってところを選んでみろ」


──カシャン……プシュー!


 カティアが腕時計を操作すると、背中のハッチが開いた。カティアは興奮しているのか、その光景を見てソワソワしだした。


「す、凄い! ねぇ、もう乗っていいの!?」

「ああ、狭いから気を付けろよ」

「よっと……えっ、本当に狭いわね……。んん?」


──ウィィィン……ガシャン!

 

 カティアが乗り込むと、ハッチが自動で閉められる。カティアと話す為に電脳通信を開き、コックピットとの通信を試みる。


「よし、ちゃんと乗り込めたみたいだな」

『ねぇ、出してッ! 怖い、狭い、暗いッ!!』

「うおっ! うるせぇな、ジュディじゃあるまいし……。落ち着け、しばらくしたら起動するから!」

『……あっ、明るくなった。これ、外の様子? 凄い凄いッ!』

「よし、ちゃんと起動したみたいだな」


 カティアが中で暴れたせいで、外部スピーカーがオンになってしまったようだ。カティアの悲鳴が、梱包センター内にこだまする。


 カティアが騒ぐ通り、AMのコックピットはかなり狭い。電脳による意識操縦の時なら、AMのセンサーの情報がダイレクトにパイロットの脳に伝わるので、そこまで不快に感じないが、電脳化してない者には少々窮屈かもしれない。

 もしジュディが中に入ったら、数秒で発狂してしまうだろう。


『……で、これからどうしたらいいの?』

「脇に飛び出てるものがあるだろ? 操縦はそれで行うんだが……って、オイッ!」


──ガシャァンッ!!


『あわわ……これ、どうすればいいの!?』

「と……とりあえず、操縦桿から手を離せ!」


 操縦の説明をしようとしたら、急に機体が動き出し、整備ラックを離れて歩き出してしまった。


「いい加減にしろッ! 触るのは、ちゃんと話を聞いてからにしろやッ!」

『ご、ごめんなさい!』



 * * *



-数十分後

@梱包センター 出入り口前


「よし皆、準備はできたな?」

「はい!」

『だ、大丈夫よ!』

「今回はカティアが主役だ。頼んだぞ?」

『……が、頑張るッ!』


 あれから、カティアに機体を操縦させつつ、基本操作を身につけさせた。そして、整備したAM用のガトリングガンを装備させ、出入り口のドア前に陣取らせた。

 作戦は単純だ。ドアの開放と共に侵入して来るであろう岩グモ達を、30mmの機関砲弾の雨で殲滅する。ガトリングガンには榴弾を装填しておいたので、制圧にはもってこいだ。


《よし、梱包センターのドアを開けてくれ!》

《了解》


 この施設の管理AIに、梱包センターのドアを開けさせる。すると、開いたドアの隙間から、次々と岩グモ達が中へと入ってきた。


──ガシャンッ、ゴゴゴゴゴ……。

──ガサガサガサガサ……!


「うっ……!」

「うお、気持ち悪ッ! カティア、やれッ!」

『いくわよッ!!』


──ウィィィヴヴヴヴヴヴッ!


 カティアの駆るアルビオンが、入り口へ向けてガトリングガンを発射する。4本の銃身から、30mmの榴弾が大量に投射され、岩グモ達を次々と吹き飛ばしていく。

 辺りには、岩グモの脚や鋏、内臓などが飛び散り、異臭を放つ。その様子を、近くのコンテナの陰から見守りつつ、ドアが完全に開くのを待つ。


 ドアが開くにつれて、岩グモ達の量も増えていくが、今のところ何とか抑え込めている。やはり、チャッピーのガトリングガンとは火力が違う。

 だが、懸念する事もある……。


「カティア、残弾は!?」

《の、残り35%だって!》

「クソ、足りるか?」

「ど、どうしますかヴィクターさん!?」

「最悪、もう一度ドアを閉めるか……」


 ガトリングガンは圧倒的な発射速度を誇るが、その分弾薬の消費が激しい。このままでは弾が尽きるのが先か、敵を殲滅するのが先か……。

 だが俺の心配をよそに、数を減らした岩グモ達は、次第に後退したかと思うと、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。まあ、蜘蛛というよりはウデムシなのだが……。


「おっ、上手くいったか? カティア、射撃やめろ!」


──カラカラカラカラ……ジュゥゥゥゥ!


 ガトリングガンの銃身は赤熱しており、周りの空気が歪んでいる。コイツの活躍で、道が開けた。さっさとこんな所からはおさらばしよう……。



 * * *



-数分後

@巨人の穴蔵 選定の間前


「あ、ちょっと待っててくれ!」

『何、疲れたの?』

「代わりましょうか、ヴィクターさん?」

「いや、違う。ちょっとここで待っててくれ。」


 選定の間こと、この施設の制御室の前で足を止める。そこでAMに乗ったカティアと、チャッピーに乗ったミシェルを止めると、俺は一人、選定の間に入った。


《……おや? どうされました、ヴィクター総司令官?》

「お前、俺達と来る気は無いか?」

《何ですって?》

「これ以上、AMや腕時計の登録をされると、ちょっと困った事になるんでな」

《そうですか……。ですが、私はこの施設の管理AI。最後まで所長の命令を遂行していきたいと思います》

「……梱包センターに、ここの所長の日記が残されてた。最後に、お前をよろしく頼むって書いてあってな」

《所長が!? そうでしたか……》

「お前、暴走してるんだろ? こんな所にいて、寂しくないのか?」

《……》

「それに、お前には新しい主人を用意してるんだ」

《新しい主人……ですか?》

「ああ。ミシェル……俺といた金髪の子、覚えてるか? あの子の事を守ってやって欲しいんだ」

《守る……この私がですか?》

「ああ、相応しい身体も用意してある」

《私は、何も出来なかった……。所長が老衰で亡くなる時も、ただ見ている事しか出来なかった……》

「人間、いつかは死ぬもんだ。それに、次は身体があるんだ。後悔してるなら、次で挽回してみたらどうだ?」

《……》

「俺達と来る気があるなら、システムの電源を落として、AIデバイスをアンロックしてくれ」


 しばしの沈黙の後、コンピューターの一部が開かれ、AIデバイスが露出される。その後、一斉に施設の電源が落ちて、来た時と同じように真っ暗になる。


 説得は成功したようだ。最悪AIの説得に失敗したら、これ以上選定の儀が出来ないように、この部屋ごと破壊する必要があった。

 だが、説得に成功したおかげで、無駄に遺物を破壊しなくて済んだ。施設用のマザーコンピューターなどは、後で回収する機会があれば、有効活用する事もできるだろう。

 俺は、AIデバイスを取り出すと、カティア達の元へと戻る。


『ちょっと、急に暗くなったんだけど!?』

「カティア、モニターを暗視モードに切り替えてみろ。さっきより視界は狭くなるが、よく見える筈だ」

『えっと……あっ、できた!』

「行けるか?」

『大丈夫!』


 その後、俺達はチャッピーのライトを頼りに、巨人の穴蔵の外へと出た。外は昼間のようで、3日ぶりの太陽はとても眩しかった。



 * * *



-夕方

@親衛隊事務室


 親衛隊事務室には、重い空気が漂っていた。

 カティアを送り出し、今日で3日が経つが、未だに彼女は帰っていない。このままだと、カティアは死亡したことになる。


 カティアを送り出した張本人であるジーナは、カティアに過度な期待をしており、まだ帰ってくる筈だと信じている様子であるが、ソワソワと落ち着かない雰囲気だった。

 一方のティナとエルメアは、カティアの事を諦めていた。だが、ティナは変な人間が居なくなって清々しており、エルメアは罪悪感を感じている様子だった。


「何よエルメア、辛気臭い顔して。あっ、いつもそんな顔だったわね。キャハハ!」

「ティナさん……。本当に良かったんでしょうか?」

「……はぁ?」

「カティアさん……確かに、いきなり射撃で高得点取ったり、体力試験も余裕で突破したり、怪しい人でした。けど、悪い人じゃありませんでした!」

「はっ、今更死んだ人間の事気にしてるワケ? これだから陰キャは、ウジウジして困るのよ」

「うぅ……」

「それに、アンタが今更どうこう言ったって、アンタは送り出した側には違いないワケじゃない?」

「そ、それはッ!」

「おい、騒がしいぞお前達!」

「ごめんなさい、お姉様♪」

「ええい、カティアの奴……もったいぶらず、早く帰ってこないのか!」

(お姉様……純粋で夢見がちなのはいいけど、たまには現実見てほしいわね)

(カティアさん……)


 日が落ちて、夕陽で空が赤く染まる中、突如基地全体に警報が流れた。


──ウーッ! ウーッ!


「な、何事だッ!?」

『北方より、所属不明の鉄巨人が接近中! 繰り返すッ! 北方より、所属不明の鉄巨人が接近中! 総員、第二種戦闘配置! 繰り返す、総員第二種戦闘配置ッ!』

「北方よりって……そんなまさかッ!?」

「も、もしかして!」


 ここから北の方角には、山しか無い。強いて言うなら、巨人の穴蔵があるくらいである。つまり、これは敵襲ではなく、選定の儀を終えた者が凱旋したという事である。

 思い当たる人物は一人しかいない。ティナは、信じられず唖然とした表情を……エルメアは泣きそうな、どこか安堵したような表情を浮かべている。


 そして、基地全体に警戒態勢が発令されると共に、再び基地内に放送が流れる。


『親衛隊に通達! 親衛隊員は至急、ハンガーに集合せよ! 繰り返す! 親衛隊員は至急、ハンガーに集合せよ!』

「よっしゃああッ! 皆、カティアが帰ったぞ! 急げッ!」

「あっ、待ってお姉様!」


 ジーナは喜びを爆発させると、廊下を歩いていた他の兵士を突き飛ばしながら、ハンガーへと走っていった。



 * * *



-数十分後

@モルデミール北部 郊外


 親衛隊員全員がハンガーに集合した後、全機が接近中の不明機に向けて、スクランブルする事になった。選定の儀を終えた機体である事はほぼ確実だろうが、万一の事態が起こるとも限らない。

 

《ジーナ、確か新人を選定の儀に送り出したとか言ってたな?》

《はい、ロウ少佐。恐らく、彼女が帰ったのです!》

《……信じられんな》


 ジーナとギャレットの通信を聞いて、他の親衛隊員達も騒がしくなる。


《あの、ジーナの嬢ちゃんが送り出したって娘か!?》

《まさか……。この前も、選定の儀に行った連中が全滅したって聞いたぞ?》

《しかも、今回は新米の兵士数名しか付けて貰えなかったんだろ? 生きて帰れる筈が無い!》

《じゃあ、近づいてる機体は誰が乗ってんだよ!?》


 親衛隊は街を離れると、小隊毎に隊列を組んで目的の不明機を待つ事にした。全機、万一に備えて完全武装状態である。

 しばらく待つと、目視で確認できる程まで不明機は接近してきた。


《少佐、ここは私が……》

《いや、呼びかけは俺がやる。ジーナは黙ってろ》

《で、ですが!》

《二度は言わないぞ?》

《……了解しました》



 * * *



-同時刻

@モルデミール郊外


 俺達がモルデミールへと帰還すると、目の前に中隊規模のAM部隊が展開していた。

 モルデミール軍では、AMのレーダーに表示される機体番号やIFF、外観の塗装などで所属を判断しているらしい。今、カティアのAMは、崩壊前の塗装が剥げた状態な上、機体番号がモルデミール軍に登録されていない。つまり、不明機という事になる。


 察するに、スクランブル発進してきたのだろう。そろそろ、向こうからこちらに接触してきても良さそうだが……。


《そこの鉄巨人、名前と所属は?》


 ……来た。男の声が、オープン回線を通じてこちらに伝えられてくる。


《カティア、さっき説明した通りだ。返事してやれ》

《分かった!》


 カティアはコックピット内で、モニターを操作して、通信をオープンに切り替えた。


《おい、名前と所属を答えろ! 聞こえないのか?》

《あ、あ〜……親衛隊所属のカティアよ》

《……マジか。お前、ジーナのとこに入った新入りで間違いないか?》

《ジーナ? ええ、多分私で間違いないわよ》

《一緒に行った奴はどうした?》

《ヴィクターの事? ちゃんとついて来てるわよ》

《生きてるのか!? 岩グモは出なかったのか?》

《うげ……気持ち悪いから、思い出させないでくれる?》

《って事は出たんだな。そりゃそうか……》

《ねぇ、さっきから一体なんなの? ってか、おっさん誰?》

《俺か? 俺はギャレット・ロウ少佐だ》

《げっ……少佐って事は、偉い奴だ。すいませんでした!》

《……おい、俺の事知らないのか?》

《知らないです》

《マジか、俺は親衛隊の隊長……お前の上官だぞ? ジーナは何を教えてたんだ?》

《えっ、隊長なの? 隊長は女性蔑視のクソ野郎って、ジーナが言ってたから、もっと乱暴な奴だと思ってた》

《……ほ、ほう》

《カティアァァァ! お前は何を言ってるんだ!》

《あ、ジーナ! 帰ったわよ》

《ジーナ、黙ってろと言っただろ! はぁ……とりあえず、全機基地に帰還だ! 話はそれからだな》


 会話を電脳で拾っていた為、俺でも聞き取れたが、何だこりゃ? カティアの奴……隊長と初対面らしい。親衛隊の人事とか、教育はどうなってるんだ?

 ってか、そんな状態で、どうやってスパイするんだよ!? 後でカティアに、そこの所をきっちり問いただすとしよう……。

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