第16話 体感!! NZ怪紀行②

 NZニュージーランドの南島で二番目に大きい都市ダニーデンに住んでいた時の体験。


 坂が多かったが、とても住みやすい街で、約半年間滞在していた。


 そこで時々、ちょっと変わった人を見かけることがあった。


 歩きながら、誰に向かってでもなく大声で『Stupid! Damn it!(莫迦野郎! こん畜生!)』と叫ぶKiwiキーウィの中年男性である。


 最初は恐かったが、道でれ違う時は普通に『Hello』と挨拶をしてくれて、襲いかかってくるような気配もなかったので、そのうち罵声ばせいが聞こえても気にしなくなった。


 住んでいたフラット(シェアハウスのようなもの)のオーナーAさんにその話をしたら、『何か鬱憤うっぷんがあるのかしらねぇ? いつもイライラしていたら病気になっちゃうよね』と言っていた。


 Aさんは五十代後半の日本人女性で、オタゴ大学の免疫めんえき学科で研究員として働いている。なので、赤の他人であっても、そういった心配をしてしまうのだ。


 あのStupidおじさん、こんなストレスフリーな国でイライラしているようでは、もし日本の都市部に住んだら、一日も持たずにストレス死するのではなかろうか? 日本に行く予定はないだろうけど。


 ある日、Aさんとスーパーへ買い出しに行った帰り道のこと。


 米や果物や牛乳等の重量物を二人で手分けして持ち、坂を上ってフラットへ向かっていると、前方にStupidおじさんが歩いていた。今のところ静かだ。


 珍しく落ち着いてるなぁと感心していると、背後から『ちょっとごめんよ』と若い男性の声が聞こえた。


 重量物を持って坂道を上っている私達は歩くのが遅いので、『すみません』と言って避け、後ろの男性を先に行かせることにした。


 ―――あれれ?


 Aさんと私は首をかしげた。声がしたはずなのに、後ろからは誰も来ないのだ。


 空耳ではなかったと思う。Aさんにも聞こえたのだから。


 それから間もなくして、前を歩いていたStupidおじさんが何かにつまずいたようだった。


 転びそうになったが持ちこたえると、次は横へよろけた。


 「Stupid! Damn it!」 


 また叫んでいる。でも、何か様子が変だ。まあ、いつも変なのだが、なぜか不自然にバランスを崩しているのである。


 HAHAHA、という小さく短い笑い声の後、Stupidおじさんのバランスが戻った。


 「Stupid! Damn it!」


 Stupidおじさんが前方に向かってまた叫ぶ。


 いつも罵声を飛ばしているのは、正体不明のアレ、、から頻繁ひんぱんに嫌がらせを受けているせい? 姿が見えなかったけど。


 科学者のAさんも、この不可解な現象にはさすがに驚いていた。


 大小含めれば、およそ百メートル置きに教会があるにもかかわらず、ああいう良からぬ何かがうろついているようだ。


 幸い、Aさんも私も謎の透明人間アレにちょっかいを出されたことは一度もなかった。


 

 ●お米はオーストラリア産を食べておりました。日本米のように程良い粘り気があり美味しかったです(⌒∇⌒)b

 



 




 


 

 




 

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