第2話 

生前の世界


周りは真っ黒の無の空間だ。

シミやキズ何一つない闇を感じさせる黒。

そこに俺は、一つの魂として存在してこれから人間の胎内へと入ろうとしていた。

謂わば、これからお母さんになる人だ。


だが、入り込もうとしたのと同時に何かにぶつかってしまう。

その拍子に視界はクリアになっていき、ぶつかったのは別の魂だと確認出来た。

それと同時に、俺は釘付けになっていた。

魂から覗いた"彼女の表情"に屈託のない可愛らしい笑顔。


実際には一秒にも満たずに、クリアになってた視界は元に戻ってしまい、体内へともうと共にすぐに吸い込まれてしまった。





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俺は目覚めた。



久しぶりに生前の頃の夢を見た。

ゆっくり体を起こし寝ぼけ眼で布団から降り欠伸をしながら、カーテンを開けて日差しを浴びる。



鮮明に覚えている。

あの頃の記憶は、今でも俺の中では根強く残っている。

会いたい気持ちはあるが、捜す上での肝心な手掛かりが顔ぐらいだ。

その手掛かりだけをもとに中学校を卒業するまでは、必死にに捜してはいたが今となっては踏ん切りをつけ捜すのはやめた。


同学年だけでも、何十万人といて全てを見て回るには流石に厳しいと感じたのだ。

中学まではその為に恋愛を避けてはいたが俺も男だ普通に恋愛がしたい。



今日から高校生になる石神陸いしがみりくは、これから待ち受けている事に楽しみで胸がいっぱいだった。

学校は徒歩10分辺りで着くので寝坊しない限り遅れる事はないだろう。

鞄を持ち、中学まではボサボサで長かった髪をオールバックにして整えていく。

家から出る前に、仏壇の前に腰をおろしリンを鳴らす。

それからゆっくり手を合わせて


「母さん、父さん を産んでくれてありがとな!!!」



少しの間リンの音を感じながら余韻に浸り、家から出た。


外に出たのはいいが、妙に視線を感じるのはいったいなんでなのだろうか。

特に女性からの視線が強い。

すれ違う度に振り向かれたり、遠くからも感じる。

考えても何も分からない以上、緊張のしすぎで勘違してるのだと結論付けた。

そのまま高揚した気分のまま学校へと目指していたが、


ここで目撃してしまう。







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